さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
何か秘めおく      われの外        帰らざる        わが守る        
妹も          別れ住む        み手の線        
 
 
 

00150
何か秘めおく 如く鍵しめ 部屋を出づ 散り透きて明るき 朝の道なり
ナニカヒメオク ゴトクカギシメ ヘヤヲイヅ チリスキテアカルキ アサノミチナリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.59
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (1)


00151
われの外 開くる人なき 部屋の鍵 をりふしバックの 底にて鳴れり
ワレノホカ アクルヒトナキ ヘヤノカギ ヲリフシバックノ ソコニテナレリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.59
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (2)


00152
帰らざる 幾月ドアの 合鍵の 一つを今も君は 持ちゐるらむか
カエラザル イクツキドアノ アイカギノ ヒトツヲイマモキミハ モチイルラムカ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.60
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (3)


00153
わが守る 偶像を毀つ如く 若きらは 夫の動靜を 探りくれたり
ワガマモル グウゾウヲコボツゴトク ワカキラハ ツマノドウセイヲ サグリクレタリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.60


00154
妹も 寂しからむ古風な 女の型を 抜けられぬ姉よと 蔑みにつつ
イモウトモ サビシカラムコフウナ オンナノカタヲ ヌケラレヌアネヨト サゲスミニツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.60


00155
別れ住む 間さへ苛まれ ゐる身よ 落葉に埋もれて しまひたくなる
ワカレスム マサヘセマレ ヰルミヨ オチバニウモレテ シマヒタクナル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.61
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (4)


00156
み手の線 美しとのみ見ゐし 月光像 いま仰ぎなば 涙あふれむ
ミテノセン ウツクシトノミミヰシ ゲッコウゾウ イマアオギナバ ナミダアフレム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.61
【初出】 『形成』 1955.9 経緯 (14)