さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
靑年演劇        期末の仕事に      校正刷りの       わが編輯の       
母を探して       農閑期狙ふ       淺草文化に       機械力を        
文化は育たぬと     農業も         とり繕ひつつ      
 
 
 

00139
靑年演劇 グループ公演の 取材終へ 歸り來て冷えし 飯を嚙みしむ
セイネンエンゲキ グループコウエンノ シュザイオヘ カエリキテヒエシ イヒヲカミシム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.55
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (7)


00140
期末の仕事に たれも疲れて ゆく日々に 言葉やさしき われと思へり
キマツノシゴトニ タレモツカレテ ユクヒビニ コトバヤサシキ ワレトオモヘリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.55
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (8)


00141
校正刷りの 屆くを待ちて 夜となりぬ 手傳はむと言ふ少女と 煉炭に寄る
コウセイズリノ トドクヲマチテ ヨトナリヌ テツダハムトイフショウジョト レンタイニヨル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (9)


00142
わが編輯の 緻密を人の ほめしとぞ 仕事にうちこむ外 なき身と知らず
ワガヘンシュウノ チミツヲヒトノ ホメシトゾ シゴトニウチコムホカ ナキミトシラズ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.6 風聞 (1)


00143
母を探して 事務所に來し友の 幼な子を 坐らせてセータの ほつれ縫ひやる
ハハヲサガシテ ジムショニコシトモノ オサナゴヲ スワラセテセータノ ホツレヌイヤル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.6 風聞 (10)


00144
農閑期狙ふ 講座の日も迫り 人寄せに 寫さむ幻燈の スライドを選る
ノウカンキネラフ コウザノヒモセマリ ヒトヨセニ ウツサムゲントウノ スライドヲエル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (1)


00145
淺草文化に なづみ易き土地の 條件を 歎く若き農夫の 聲胸を打つ
アサクサブンカニ ナヅミヤスキトチノ ジョウケンヲ ナゲクワカキノウフノ コエムネヲウツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (4)


00146
機械力を 藉りて耕す までもなき 狹き農土と 言ふ聲も聞く
キカイリョクヲ カリテタガヤス マデモナク セマキノウドト イフコエモキク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57


00147
文化は育たぬと 言はれ來し地區に コーラスの 會生れしを 告ぐる乙女あり
ブンカハソダタヌト イハレコシチクニ コーラスノ カイウマレシヲ ツグルオトメアリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (5)


00148
農業も 年に一度の 賭博ぞと 言ふ聞けば恃み がたくなりゆく
ノウギョウモ ネンニイチドノ トバクトゾ イフキケバタノミ ガタクナリユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58


00149
とり繕ひつつ 報告書書く 夜の事務所 集り惡き 會を終へ來て
トリツクロイツツ ホウコクショカク ヨノジムショ アツマリワルキ カイヲオヘキテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58
【初出】 『形成』 1954.1 周辺 (9)