さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
よるべなく       何に亂れて       葉の色に        わが中の        
冬枯れの        今一つの        おのづからなる     
 
 
 

00111
よるべなく 旅ゆくこころ 灣口に かかりて船は 汽笛を鳴らす
ヨルベナク タビユクココロ ワンコウニ カカリテフネハ キテキヲナラス

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.44
【初出】 『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (17)


00112
何に亂れて ゐたる心ぞ 沖遠き いさり火もいつか 消えて跡なし
ナニニミダレテ ヰタルココロゾ オキトオキ イサリビモイツカ キエテアトナシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.44
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (7)


00113
葉の色に まがふひそかな 花を持つ 木ありしきりに 樹脂を匂はす
ハノイロニ マガフヒソカナ ハナヲモツ キアリシキリニ ジュシヲニオハス

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.45
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (8)


00114
わが中の 循環に終らむ 思慕と思ふ 遠き山なみ 見つつぞ歩む
ワガナカノ ジュンカンニオワラム シボトオモフ トオキヤマナミ ミツツゾアユム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.45
【初出】 『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (18)


00115
冬枯れの 草山に來て 何憶ふ 今はたれより 遠きかの人
フユガレノ クサヤマニキテ ナニオモフ イマハタレヨリ トオキカノヒト

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.45
【初出】 『形成』 1955.5 春寒 (10)


00116
今一つの 超克を希ふ わがこころ 夜の靄の底に 海は轟く
イマヒトツノ チョウコクヲネガフ ワガココロ ヨノモヤノソコニ ウミハトドロク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.46
【初出】 『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (19)


00117
おのづからなる 乖離を今は 希ふ身に 何をいざなふ 遠き潮の音
オノズカラナル カイリヲイマハ ネガウミニ ナニヲイザナフ トオキシオノネ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.46
【初出】 『短歌研究』 1955.4 まなうらの像 (20)