さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
かたはらに       抽象的な        たはやすき       渇きゆく        
ながくわれを      われを伴ひて      水びたしの       醉へば亂れて      
神々も         風落ちて        
 
 
 

00101
かたはらに おく幻の 椅子一つ あくがれて待つ 夜もなし今は
カタハラニ オクマボロシノ イスヒトツ アクガレテマツ ヨモナシイマハ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.40
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (2)


00102
抽象的な 人間と人に 言はれしこと また思ふ夕餉の サラダまぜてゐて
チュウショウテキナ ニンゲントヒトニ イハレシコト マタオモフユウゲノ サラダマゼテヰテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.40
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (8)


00103
たはやすき 未來ならず今の 平衡の 永き持續を 恃まむとする
タハヤスキ ミライナラズイマノ ヘイコウノ ナガキジゾクヲ タノマムトスル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.41
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (3)


00104
渇きゆく 日々と思ふに 野いばらは グラスの水吸ひ上げて 次々に咲く
カワキユク ヒビトオモフニ ノイバラハ グラスノミズスイアゲテ ツギツギニサク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.41
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (4)


00105
ながくわれを 苛める貌も わが中に 嚙み碎かれて 像を結ばず
ナガクワレヲ サイナメルカオモ ワガナカニ カミクダカレテ ゾウヲムスバズ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.41
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (5)


00106
われを伴ひて 遁れむと言ふ ノアもなし 裾濡らし雨の 鋪道を歸る
ワレヲトモナヒテ ノガレムトイフ ノアモナシ スソヌラシアメノ ホドウヲカエル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.42
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (6)


00107
水びたしの 日本列島と思ひ めざめゐつ 夜の更けてまた 降りつのる雨
ミズビタシノ ニホンレットウトオモヒ メザメヰツ ヨノフケテマタ フリツノルアメ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.42
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (10)


00108
醉へば亂れて 歸る夫を夜々に みとりたる 来し方も今の 獨りも寂し
ヨヘバミダレテ カエルツマヲヨヨニ ミトリタル コシカタモイマノ ヒトリモサビシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.42
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (7)


00109
神々も 渇く夜あらむ わがひとり 夜更くればまた 眠る外なく
カミガミモ カワクヨアラム ワガヒトリ ヨフクレバマタ ネムルホカナク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.43
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (9)


00110
風落ちて また雨となれる 夜半に覺む 猜疑より遁るる 如く眠りし
カゼオチテ マタアメトナレル ヨワニサム サイギヨリカクルル ゴトクネムリシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.43
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (10)