さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
陽の昃れば       足もとの        今は誰にも       月の夜の        
身代りに        今朝の夢の       覺めかけて       アルフレッドと     
わが中の        
 
 
 

00036
陽の昃れば 忽ちデュフィの 海となり スカートをふくらませて われも佇つ
ヒノカタムケレバ タチマチデュフィノ ウミトナリ スカートヲフクラマセテ ワレモマツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.14


00037
足もとの 砂冷えて來て 昏るる海 わが畏れゐし 褐色となる
アシモトノ スナヒエテキテ クルルウミ ワガオソレヰシ カッショクトナル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.14
【初出】 『短歌』 1956.7 まぼろしの椅子・その後 (22)


00038
今は誰にも 見することなき わが素顏 霧笛は鳴れり 夜の海原に
イマハダレニモ ミスルコトナキ ワガスガオ ムテキハナレリ ヨノウナバラニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.15
【初出】 『形成』 1955.11 秋深む (2)


00039
月の夜の 潮鳴り低し 出でゆかば 身近にあらむ死と 思ふ時の間
ツキノヨノ シオナリヒクシ イデユカバ ミジカニアラムシト オモフトキノマ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.15
【初出】 『短歌』 1956.7 まぼろしの椅子・その後 (24)


00040
身代りに 何を沈めて 戻るべき いどむ如く來る 夜の満ち潮
ミガワリニ ナニヲシズメテ モドルベキ イドムゴトククル ヨルノミチシオ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.15
【初出】 『形成』 1955.11 秋深む (3)


00041
今朝の夢の 終末を呑める 海の色を 怖れてゐしが やがて眠りぬ
ケサノユメノ シュウマツヲノメル ウミノイロヲ オソレテヰシガ ヤガテネムリヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.16


00042
覺めかけて また夢見つつ 幾たびか 潮滿ち來て わが身をひたす
サメカケテ マタユメミツツ イクタビカ ウシホミチキテ ワガミヲヒタス

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.16


00043
アルフレッドと 心に呼びゐて さりげなく 遠くかすめる 島の名を問ふ
アルフレッドト ココロニヨビヰテ サリゲナク トオクカスメル シマノナヲトフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.16


00044
わが中の 脆き一面を 怖るるに 近よりて不意に 君は肩をたたく
ワガナカノ モロキイチメンヲ オソルルニ チカヨリテフイニ キミハカタヲタタク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.17
【初出】 『形成』 1955.11 秋深む (4)