さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
いつとなく       屈折せし        身の不幸        生きてゆく       
公務員法        自信持てと       パラソルを       敎員の         
遠けれど        草生分けて       水門を         穂草そよぐ       
みづうみの       窓に匂ふ        運命に         
 
 
 

00021
いつとなく 寂しき雰圍氣 漂はす われならずやと思ふ 勤め終へ來て
イツトナク サビシキフンイキ タダヨハス ワレナラズヤトオモフ ツトメオヘキテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.8
【初出】 『形成』 1955.12 寂しき電話 (13)


00022
屈折せし 意識に澱む 夜の心 長くかかりてスカートの 襞をたためり
クッセツセシ イシキニシズム ヨノココロ ナガクカカリテスカートノ ヒダヲタタメリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.8


00023
身の不幸 など歌ふべき 時代かと 苛みし人あり日を經て 心展け來
ミノフコウ ナドウタフベキ ジダイカト サイナミシヒトアリヒヲヘテ ココロヒラケク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.9


00024
生きてゆく 幅を少しでも ひろげたく 昇任試驗 受けて見むとす
イキテユク ハバヲスコシデモ ヒロゲタク ショウニンシケン ウケテミムトス

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.9


00025
公務員法 讀み終へて そのまま眠りしか 夜の明けて試驗は 今日ぞと思ふ
コウムインホウ ヨミオヘテ ソノママネムリシカ ヨノアケテシケンハ キョウゾトオモフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.9


00026
自信持てと つねにのたまへるを 思ひ出づ 訴願法の問題 解き進みつつ
ジシンモテト ツネニノタマヘルヲ オモヒイヅ ソガンホウノモンダイ トキススミツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.10


00027
パラソルを たたみて入り來し 妹の 聲はづみわれの 合格を告ぐ
パラソルヲ タタミテイリコシ イモウトノ コエバヅミワレノ ゴウカクヲツグ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.10


00028
敎員の 資格持つも一つの ゆとりとし のびのびとわが 生きてゆきたし
キョウインノ シカクモツモヒトツノ ユトリトシ ノビノビトワガ イキテユキタシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.10


00029
遠けれど 湖のある 村と知れば 明日の出張を たのしみて寢る
トオケレド ミズウミノアル ムラトシレバ アスノシュッチョウヲ タノシミテネル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11
【初出】 『形成』 1956.1 湖心 (7)


00030
草生分けて 道に出づれば イムメン湖の 如きみづうみ 木の間に見え來
クサフワケテ ミチニイヅレバ イムメンコノ ゴトキミヅウミ コノマニミエク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11
【初出】 『形成』 1956.1 湖心 (8)


00031
水門を 閉ぢし人も去りたる 湖に 風吹けばまた ささなみのたつ
スイモンヲ トヂシヒトモサリタル ミズウミニ カゼフケバマタ ササナミノタツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11
【初出】 『形成』 1956.1 湖心 (9)


00032
穂草そよぐ 道のかたへに 少女ひとり 畫架たてて白き ホテルを描く
ホグサソヨグ ミチノカタヘニ ショウジョヒトリ ガカタテテシロキ ホテルヲエガク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11
【初出】 『形成』 1956.1 湖心 (10)


00033
みづうみの 旅より夜半に 歸り來て 思ふ寂しき 晩年のこと
ミヅウミノ タビヨリヨワニ カエリキテ オモフサビシキ バンネンノコト

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11


00034
窓に匂ふ 月あり固執せぬ 性をもつ こともわれのみの 知る幸として
マドニニオフ ツキアリコシツセヌ サガヲモツ コトモワレノミノ シルサチトシテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.11


00035
運命に 從順に見えて はがゆしと 言はれしを幾日 噛みしめて過ぐ
ウンメイニ ジュウジュンニミエテ ハガユシト イハレシヲイクヒ カミシメテスグ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.12