さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

日々の手記・和歌・文集思ひ出のまゝ

日々の手記/和歌/鄙の秋・春紀行

和歌(NOTEBOOK)

傾きて嘆く月なり細々と嗚咽の声も風に途切れつ
月落ちて庭かげ昏らし濡縁に遙けき星をひとり恋ふかな
月落ちて夜露もしげし庭かげに瞬く星の数を数へつ
故も無く物思ふなり夢に見し月のまぼろし忘れやらでか
佇みて衣濕り行く秋の夜は心も沈みてさみしと思ふ
人ごみの中に見かけし彼の面の冷たきひとみ何故か忘れず
浅ましく物思ふなり名も知らぬかの美はしき面を描きつ
煙のごと薄れ果つらむ秋の日に夢に描きし美はし面影
運命が吾を忘れむその時に再びまみえず美はし面影
忘れ行く夢かとばかり哀れなりふれ得ぬ月のうまし面影
月影のさやかなるごと彼のひとみ瞼の裏に今も忘れず
夢を見しひとひなりしを月と共にかこつ吾なり夢の淋しさ
吹く風や月より吹くか彼の君の冷たき面の笑みより吹くか