さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

初期の手作り歌集等

初期の手作り歌集

『12 ひとり生きたし 歌の集』

同室の留学生は昨日より氣が違ひたり秋ふかくして
貧困を悩みたまひし終果(いやはて)に留学生は狂ひおほせぬ
楽しげに笑ひたまへどそのこゑに吾等ひそかにこゝろいたむる
ほがらかに歌ふその声庭先ゆきこえくるなり吾等なみだのむ
美しいことわたしは好きよとけはひ終へてげにうれしげにほゝゑませけり
狂ひしにあらずたゞ心楽しきなりかくのたまはす狂へるひとは
吾等つねに盡くし耒れる甲斐あらずまずしき友は狂ひたまひぬ
満州にゐますとふ友の兄上はいかに思ふや狂へる妹を
満州国の留学生は集ひきて涙流しつゝ慰めあへり
吾がすゝめし沈静剤の五グラムをすなほにのみて礼も云ひたり
又癒ゆる日のあれかしと今はたゞ吾等こゝろにいのるばかりなり