高根沢町図書館/高根沢町史ほか

高根沢町史 通史編Ⅱ

第四章 昭和恐慌と戦争の時代

第五節 戦時統制経済と農業の協同化

二 農業の協同化と学徒動員

 農業生産に関連する戦時統制は昭和一四年から本格化していた。同年三月に臨時農村対策施設綜合協議会から出された指示事項(『栃木県史』史料編近現代四・一一二三頁)には米穀・資源農産物(大麦・甘薯・大麻・苧麻・飼料用作物)の計画的増産、肥料統制、農業労働力の調整、農機具及農機具用鉄鋼の配給統制等について県、市町村経済更生委員会の指導に従うよう求めていた。県では同年九月に「昭和一四年度に於ける小麦増産計画」(史料編Ⅲ・四七二頁)を発表し、「冬季間休閑地の利用」で小麦一四万八四五九石の増産を各市町村に割り当てた。阿久津村九〇五石、北高根沢村一、八九二石、熟田村一、九三二石を開墾畑地、水田裏作によって増産せよという指示だった。
 昭和一六年度の重要農産物増産計画では米、甘薯、馬鈴薯、苧麻・大麻、麦類の増産が各郡、市町村に割り当てられた。こうした増産割当てをうけた現地の農村では、出征兵士や都市の軍需工場へ働きにいった者が多く、労働力不足は深刻で、産業組合・農会の主張する農業の協同化以外にはこの目標を達成することは難しかった。
 北高根沢村は一六年度「労力調整指定村」となり六月一日から一〇日まで共同作業と共同炊事を、般若塚一四戸、東高谷一一戸、栗ケ島九戸、井亀七戸で実施した。農繁期保育所も花岡、東高谷、太田、上高根沢、桑窪で前年に引き続き設置された。この時の東高谷第一農事実行組合の記録(史料編Ⅲ・四八一頁)でみると、共同作業では一人一日の労働を一工程、単価一円二〇銭として労賃を計算し、田植えは普通田、谷田、麦田(二毛作田)に作業を分けている。共同炊事は組合員が提供した米、野菜類も金に換算して、商店からの購入品と同様に扱って経費を算出している。そして、田植えの反別負担金、共同炊事の食費を加えて全体の負担金を出している。これらの経験が基礎資料として、村の共同作業の規定や計画に生かされていった。
 北高根沢村で本格的に農業の協同化が始まるのは昭和一六年秋からである。九月一日の農事実行組合長会議で麦類増産計画、八~一二月配給肥料割当計画、農業資材配給等一〇件の会議事項と共に「秋期共同作業実施計画」が討議された。そして、一〇月八日の組合長会議で「北高根沢村農会共同作業統制規定」、「農業移動労働統制規定」、「役畜及農機具利用並に移動統制規定」が決定された。さらに一〇月二五日に「農耕牛馬賃貸料・労働賃金表」が発表された。これで共同作業の制度面は整った。それらの諸規定によると、
 
  ○共同作業の内容
   耕起・整地、採種、苗代、田植、除草、収穫、脱穀、籾・麦摺、麦播種、病虫害防除、堆肥積込、肥料配合のうち会長(農会長・村長)の指定したもの
  ○会員(実行組合員・農会員)の守ること
   組合長は共同作業計画をたて、会長に報告する。会員は共同作業期間中、農業に従事する家族全員を出動させ、必要な農機具・役畜を提供し、実行組合長の指図に従って作業する。共同作業の精算労賃は会長の定めた労賃による
  ○農業移動労働について
   会長の指定した期間内に、常時農業従事者が雇用、手伝、手間替、請負作業のため本農会区域外へ出動する(農業移動労働)場合、または区域外から労働を受け入れる場合は、組合長の承認を得て会長に届け出る。また、会長は会員に農業移動労働の出動を命じることが出来る
  ○役畜及農業用機械器具の利用と移動の統制
   次の機械器具(石油発動機、電動機、畜力原動機、噴霧器、脱穀機、動力麦摺機、動力籾摺選別機、動力精米機、動力精麦機、動力揚水機、畜力除草機、自動耕耘機)のうち、会長の指定するものを区域外に移動せんとする者は予め会長に期間、使用法を届け出てその指示を受ける。区域外から受入れをしたいときは、同様にあらかじめ会長に届け出て承認を受ける
  ○農耕牛馬賃貸料及労働賃金(表36)
 
 このような規定に従って共同作業が始まったが、一六年秋の東高谷第一農事実行組合で実施した方法を見ると(史料編Ⅲ・四八七頁)、作業種別を稲刈り(人工数七九・二)、稲揚げ(一一〇・七)、麦蒔(一一・四)、畑掘り(五・一)、草取り(五・〇)、畝立・麦蒔(一八・六)、切返し・麦蒔(一三・五)、田小麦蒔(二・五)、共同経営地麦蒔(一〇〇・五)と分けて作業量と賃金を計算している。
 北高根沢村全体としては一六年秋は稲刈り、脱穀(動力と足踏み)、籾摺までを共同作業で実施した。二六の農事実行組合のうち大きい組合は幾つかの班に分かれたので、全村で三五班が編成された。上高根沢の六組合は一一の班、栗ケ島は三つの班、東高谷は第一と第二、花岡は五組合が七班というように。作業は一〇月一五日を中生稲の刈取り最終日とし、麦の播種が一〇月二〇日から二八日までと決められていたから、東高谷の組合のように麦蒔きまで共同作業で行った組合が多かったろう。共同作業による収穫玄米は一四万六九四〇俵、使用した石油発動機の脱穀機が六八台、同じく籾摺機が三七台で、それぞれ石油と揮発油が配給された。早場米は収穫後、架干しをして、脱穀・調整し一〇月三一日までに出荷を完了したが俵数は八、〇八七俵だった。続いて秋作の作付反別の調査によって作物別の肥料割当てが行われ、麦類、大根、白菜の肥料が配給された。肥料は農事実行組合毎に産業組合と肥料商組合から配給されたが、硫安は三割、過燐酸は七~八割、石灰窒素は全部、配合肥料は一割弱が産業組合の扱いだった。

図42 収穫の共同作業(栗ヶ島 渡辺章一提供)

表36 農耕牛馬賃貸料及び労働賃金表
(一)農耕牛馬賃貸料
秋季 自 九

   至一二 月   馬 一日間料金  二、〇〇円  牛  一、六〇円
 仝  仝      仝一ケ月間  金二五、〇〇   〃 一九、〇〇
 仝  仝      仝三ケ月間  金三五、〇〇   〃 二六、〇〇
(二)労働賃金表
作業種別日傭 渡シ
ノ別
男 女
賄有無指定賃金
最高最低
 稲   刈 一反歩渡シ 男 弁当持  二、五〇  二、〇〇
 一人一日 女  一、三〇  一、〇〇
 稲 夜 刈 一人午后一〇時マデ   、四〇   、三〇
 稲 脱 穀 一人一日 男 弁当持 一、五〇 一、二〇
 女 一、三〇 一、〇〇
 畑   堀 一反歩渡シ   仝 五、〇〇 三、〇〇
 同 一人一日 男   仝 一、六六 一、二六
 麦類播種 一人一日 弁当持 一、三〇 一、〇〇
 畑 除 草   仝   仝 一、〇〇   、七〇
 畑 中 耕   仝   仝 一、三〇 一、〇〇
 落葉サライ   仝   仝   、八〇   、五〇
 同 マルキ 一、〇〇   、七〇
 一般日雇   仝 男   仝 一、三〇 一、〇〇
 女 一、二〇   、九〇
 役馬人夫   仝 三、五〇 二、五〇
賄付各作業共三十銭増トス