高根沢町図書館/高根沢町史ほか

高根沢町史 通史編Ⅱ

第三章 大正期の村政と産業の発達

第二節 穀物検査と地主会

二 農会の新たな技術指導

 穀物検査の状況を表2~4で見てみよう。検査が始まった明治四三年の産米のうち生産検査を受けたのは六〇パーセントであったが、大正三年に八〇パーセント台になるとそれ以後はほぼ八〇パーセント前後を保つようになった。塩谷郡は三年に八三パーセント、四年八六パーセント、五年九一パーセントと受検割合は県全体でみると高いほうであった。検査の結果不合格になる米の割合は四三年には一八パーセント程度であった。その後大正二年までは少しずつ減って一四パーセント弱になるが、三年から増えはじめ四年は三〇パーセント、五年は四三パーセントに達している。塩谷郡は那須郡と共に不合格米の割合が高く、四年四二パーセント、五年は五一パーセントであった。増えた要因は品質不良米の増加であった。品質不良の原因には気侯、特に秋の長雨、台風によることが多かったが、栽培技術や労働の質の問題もあった。
 麦類が生産検査を受けた割合は三年の四四パーセントから五年の四九パーセントへと増えているが、生産高の半分に満たない。不合格の割合は米に較べると低く、四年が二五パーセント、五年が三四パーセントであった。塩谷郡の割合は米と同様に高く三四パーセントと六八パーセントであった。
 穀物検査が行われるようになってから、米麦栽培について新たな課題が生まれてきた。それは生産検査で合格する米を作るためにはこれまでより多くの手間をかけ、たくさんの肥料を使い水の管理や肥培管理に専念しなければならない。また、出荷には良質の俵を使い俵装に手を掛けなければならなかった。耕作地主や自作農はそうして作った米が高く売れればそれは自分の収入の増加になるから、努力のし甲斐があった。しかし、北高根沢村でいえば農家の七〇パーセントに達する小作・自小作農は米で高率の小作料を納めるから、努力してもその成果の大部分は地主の懐へ入ってしまう。田の六〇パーセントを占める小作田で合格米を作るためには、小作・自小作農に良質米を作ろうという意欲を持たせねばならなかった。県・農会・地主の三者はそれを小作保護と農会の新たな農事指導という二つの方策で実現しようとした。

図10 米の発送を待つ産業組合の米倉庫(仁井田駅)(栗ヶ島 渡辺章一提供)

表2 各年度米収穫高と生産検査高
郡 市 名収  穫  高生 産 検 査 高仝 上
 百分率
大 正
 四 年

 三年

 二年

 元年
明 治
 四十四年

 四十三年
宇 都 宮
 一三、〇二四

 五、四五六
四二四九五〇四二四二四〇三六
河   内一九五、七五六一七一、六八九八八八六九二 八五八五八〇七四
上 都 賀八四、〇五四六四、〇六〇七六八二八二 八二六九六九六四
芳   賀二一三、七三〇一八〇、六六四八四八一八八七七七〇七三五三
下 都 賀二五三、四六五二一二、六〇〇八四八四九〇八六八二八四七六
塩   谷一六六、九三三一五一、一五九九一八六八三七五七三七四五八
那   須二三二、一六三一六三、六四七七〇六九六五六〇五七五七四三
安   蘇五一、一八四三〇、一五〇五九六一五五六九六一六四五九
足   利六七、六二一四四、二〇二六五六九六四六一五七五九五二
一、二七七、九三〇一、〇二三、六二七八〇七九八一七六七一七二六〇

表3 各年度産米検査不合格歩合調
年 度 別検 査 総 俵 数不 合 格 歩 合(千分率)
乾 不赤 多青多又ハ
不熟多
品 不其 他
明治四十三年        俵
一、三八五、一〇七
五五七五四七一八一
 仝 四十四年一、九一七、一一二四〇七一 六 三二一五二
大正元年一、九九七、八二四五九三四一七 五九一七一
 仝 二年二、〇七八、五八五四三二七一〇 五五一三七
 仝 三年二、四七九、六二〇三一四三 五一三三二一七
 仝 四年二、六六五、八七三三五四〇一〇二一八三〇九

表4 各年度麦収穫高と生産検査高
郡 市 名収 穫 高生産検査高仝上百分率大正四年大正三年
宇 都 宮    石
 九、二二〇
    石
 三、九八七
四三三六五七
河   内一三九、九〇九 六七、二四五四八四五四〇
上 都 賀 六八、一一二 二五、六一四三九三一三〇
芳   賀一三七、四〇七 六四、九三〇四八四六四〇
下 都 賀二八七、六〇三一七九、七六〇六二五九五六
塩   谷 四九、〇五三 一四、六二八三〇二三一四
那   須一四二、八九五 五七、七四九四〇三二二五
安   蘇 八八、一八一 四一、七六四四七四四四六
足   利 七〇、九五五 三九、九三七五五四九五〇
九九三、三三六四九五、五七〇四九四六四四

『大正五年度栃木県米穀検査成績報告』による  (栗ケ島 渡辺章一家蔵)
 

図11 米穀検査10周年記念品評会出品への感謝状(栗ヶ島 渡辺章一提供)