高根沢町図書館/高根沢町史ほか

高根沢町史 通史編Ⅱ

第二章 宝積寺駅の開業と地主制の成立

第四節 明治後期の社会

一 明治三五年の暴風雨

 この台風がもたらした強風、洪水による被害は北高根沢村にあっても惨憺たるものである。この被害状況を上高根沢地区の被害報告にみると建物に限ってみても、表14にあるように住宅の全壊四二棟、半潰五棟、神社仏閣も全潰三棟、半潰五棟と想像以上のものであった。森林の損害も大きく村社及び大字上高根沢の宇津権右衛門、阿久津徳重の所有のものは甚大で、村社安住神社の境内の樹木はその七〇パーセントが倒れた。特に安住神社では風損木は六八本にのぼり、うち桧五四本、杉七本、樫七本である。この風損木の処置をめぐり入札売買を考え、落札売買代金は一、三二五円五〇銭と計上している。入札については心得八項目があり、入札したいものは保証金一〇〇円を入札書に添えて提出すること。また落札人が確定した時は二割の手附金を納めること。残金納入は来る一一月一五日を限りとすること。木材搬出期限を明治三六年九月三〇日にする等をとりきめている。
 稲作の被害も予想外で、そのうち激甚なものは土佐坊、山根、勧業などの種類で、一見投売りの状況であった。村では上高根沢の被害者二九人に対し罹災救助基金中より救助金を一〇月七日に渡している。一〇月一一日付で県から風水害により町村の負担する道路、橋梁、堤防の修築について、工事費の負担が重い場合は県費の補助をするとの通報があった。また一〇月一三日、天皇皇后両陛下よりの下賜金一万四〇〇〇円が栃木県に渡され、被害者に配布されることが通知された。役場では配分の都合上、床上まで浸水した戸数の取調べを実施している。
 相次ぐ暴風雨に対応するため菅井誠美知事は翌三六年九月八日「客年ノ大災ニ鑑ミ、勤倹貯蓄、茲に他日ノ凶荒ニ備ヘ、一ハ以テ一家自営ノ産業ヲ振興シ、一ハ以テ地方自治体ノ基礎ヲ鞏固ニシ其ノ福利ノ増進ニ勉ムベシ」と告諭を出している。これにこたえるように塩谷郡役所は町村長宛に具体的対策を次のようにあげている。
 
  一、町村基本財産蓄積・方法ヲ設クル事
  一、大字又ハ小字ヲ一団トシテ共同蓄積ノ方法ヲ設クル事
   (一) 積穀ノ方法ヲ設ケシムル事
   (二) 少量ノ金銭ヲ積立ツル為メ信用組合ヲ設ケシムル事
  一、共同植林ヲ為サシムル事
 
 暴風雨に対する県、郡の対策は、災害からの復旧と救済にとどまらず、町村の自助努力により、災害に負けない財政力を作ることも求めていた。また鬼怒川の洪水対策として堅固な堤防を作ることが緊急の課題として取り組まれるようになった。
 
表14 上高根沢暴風雨被害報告(建物のみ)
住 宅納 屋水 車 門  厠 倉 庫神 社
仏 閣
全 潰42141260368
半 潰50000229
合 計47141262577

但、此他毎戸屋根其他ニ多少ノ損害アルハ勿論ナリ   上高根沢区有文書より作成