高根沢町図書館/高根沢町史ほか

高根沢町史 通史編Ⅱ

第一章 明治初期の政治と社会

第三節 地租改正と村々の生活の変化

六 村々の生活の変化

 明治政府の勧農政策がはじまる前の農業の状況を表29の町域一四か村が入っている第五大区一小区の物産調べで見てみよう。収穫量の中心は米、大・小麦、稗の穀物類である。租税は米の二三パーセント、小麦の二〇パーセント、稗の二四パーセントを占めている。大部分の作物は自家消費されているが、米の二三パーセント、大麦の四〇パーセントは輸出即ち販売されている。その他に販売されているのは煙草六〇パーセント、大豆二八パーセントであるから、農産物の商品化率はあまり高くない。他地域で商品化率の高い繭はまだ生産されておらず、茶・綿も生産量が少なく自家消費にとどまっている。
 在来工業である酒・醤油醸造は上高根沢村向戸の阿久津家、西根の宇津家、太田村の見目家が江戸時代から営んでいたが、明治になってから太田村の農民三名が仮免許をとり、わずかの石数だが新たに始めている。炭・筵など農間余業の生産品は農家の現金収入の源だったから、これらが販売されたのは当然だった。
 以上のような状況からみると、農民に対する封建的な諸制限、すなわち商品作物の作付け制限や商工業の兼業禁止はなくなったが、そういう変化を生かしていく動きはまだあまり見られない。江戸時代の農村の姿が続いているといってよかろう。
 次に耕宅地の改租も終了した明治一二年のようすを表30・31でみよう。この統計は勧業委員の下で米や野菜の新品種の試験栽培や物産統計を担当した町村公選の農事試験委員が最初に報告した統計で、花岡外六か村の全生産物を金高に換算している(村名が特定できないが前表中の村も多いと推定できる)。便宜上、表を農産物(A)と農産加工品・果樹・畜産(B)にわけて特徴的な点を見てみると
 
  一 農産物では延べ作付面積の九四パーセントは水稲・陸稲、大・小麦、稗、粟、大・小豆などで収穫高は金額にすると九六パーセントを占めており、穀物中心の農業であるが、反当収穫量はあまり高くない
  二 全県的には減少している綿の栽培がこの地域ではまだ多く、作付面積で三パーセント、金額で一・三パーセントほどある。また、わずかではあるが煙草・繭の生産もあるので、商品作物の栽培がすこしずつ広がっていると思われる。
  三 果樹では県が栽培を奨励している梨が現れた。柿・栗とは異なり作付面積がわかるので梨畑が作られはじめたことを示している
  四 農産物の加工がかなり行われているが、その生産物の粉類、綿糸、木綿織物、味噌などがどの程度販売されていたかは不明である。しかし、別の史料によると太田村に六人もの綿打ち職人がいることを考えると綿糸・綿織物は販売用である可能性が高い
  五 畜産では、農耕や駄送に使う馬が一家に一頭~二頭いたことがわかる
 
 ことなどである。
 穀物生産を主とする農業であるが、米が年貢として取られるのではなく商品化することを考えると、煙草・繭・梨など商品作物の増加とあいまって、農産物の商品化する部分がかなり増えた。そして、地租改正後の農村は大きな変化の波に洗われることになったといってよかろう。
 
表29 第5大区1小区物産調(明治5年)
 品目収穫量 備考
15557.0石1294.9貢税
2965.8自家消費
1296.3輸出
2大麦527.8208.42輸出
320.38自家消費
3小麦473.596.53貢税
377.02自家消費
41222.5296.52貢税
925.88自家消費
5大豆244.067.43輸出
176.47自家消費
6130.2130.2自家消費
7綿406.0貫406.0自家消費
8小豆30.0石30.0自家消費
925.025.0
10胡麻5.05.0
11煙草50.0貫20.0
30.0輸出
12清酒400.0石400.0輸出
13濁酒15.015.0
14醬油50.050.0
15150.0斤150.0自家消費
16500俵500輸出
17200枚200

1小区(宝積寺、石末、柳林、赤堀新田、上高根沢、栗ケ島、寺渡戸、西高谷、平田、太田、桑久保、中・下・上柏崎の14か村)
史料編Ⅲ・548頁史料3より作成

図26 向戸酒造場の徳利(上高根沢 阿久津昌彦家蔵)

表30 明治12年度農産物統計表(A)下野国塩谷郡勧業第2区 花岡村外6か村
戸数324、人口2504。田反別648町1反4畝29歩、畑反別299町5反9畝21歩
品目作付面積割合%反収収穫高 金高割合%
  615町 6反―畝―歩54.7 7斗 8升 6合  4,838石 6斗 1升 6合  34,557
     円
39銭 8厘73.5
糯米  32. 4. 4. 29 3.0 7斗 5升―   243. 3. 7. 5    1678 31. 43.6
大麦
   6. 9. ―. ― 
  田16. 2. ―. ― 

 2.0

  6斗 ― ― 

   138. 6.―. ― 

461 
67. 7

 1.0
小麦  179. 7. 6. ― 16.9 3斗 5升―   629. 1. 6. ―    3493 09. 37.4
  104. 8. 7. ― 9.0 1石 5斗―  1,573. 0. 5. ―    2620 70. 15.6
  14. 9. 5. ― 1.3  5斗   74. 7. 5. ―     224 25.―0.5
大豆  59. 9. 3. ― 5.0  4斗  239. 7. 2. ―    1,198 60.―2.5
小豆   1. 5. ―  ―   4斗   6. ―.―. ―     155 64.―0.3
胡麻   1. 4. ―  ―   3斗   4. 2.―. ―     27 99. 7
蕎麦  16. 2. ―. ― 1.4  4斗   64. 8.―. ―     19 44.―
   0. 5. ―. ―   4斗   2. 0.―. ―      9 60.―
陸稲  33. 4. ―. ― 3.0  5斗  167. ―.―. ―    1,035 40.―2.2
里芋  16. 2. ―. ― 1.4  10駄 5万8320貫(1駄36貫)    405 00.―0.9
大根   6. 4. 8. ―  3,000本      19万4400本   (単価不明)
ごぼう   0. 3. ―. ―   9500本       2万8500本   
茄子   3. 2. 4. ―   300個        9720個   
唐茄子   0. 1. ―. ―   130個         130個   
真桑瓜   0. 5. ―. ―   1620個        8100個   
実 綿  32. 4. ―. ― 3.0   8貫        2592貫       648 001.3
甘薯   3. 2. 2. ―   100貫        3220貫       80 50
青菜   1. 6. 2. ―   2500把       4万 500把       40 50
とうきび   2. 1. 6. ―  1石 5斗       32石 4斗       121 50
黄瓜   1. 4. ―       8000個      11万2000個   (単価不明)
豌豆   1. 5. ―      2斗 5升      3石 7斗 5升       ― 37. 5
煙草   2. 2. 7. ―    25貫       567. 5貫       141 87. 50.3
   1石 5斗(石28.5円)    42 75
延1126町 5反 2畝 計4万6962円21銭2厘100

史料編Ⅲ・557頁・史料12より作成
 
表31 明治12年度農産物統計表(B)
品 目作付面積反収・単価収 穫 高 金   高割 合
 パー
 セント
1. 5.-.-35000個5万2500個157
  円
50
648本1本 100個6万4800個 (単価不明)
生 栗1斗 2銭 5厘  9石 7斗 2升 2 43
1石 3銭5石       15
味 噌1貫20銭1万9044貫3808 80 16
1石 7円30銭 12石       87 60
醤 油〃12円 40石       480 002
豆 腐1丁 4厘4万2000丁84 00
油 揚〃 3厘2200丁6 60
小麦粉1石 8円175石       1400 006
蕎麦粉〃 4円50銭43石       193 50
1束 3銭 5厘16万1500束5652 50 21
製 茶1貫 1円110貫110 00
1挺15銭300挺45 00
木 綿1反25銭450反112 50
木綿糸1貫 1円50銭800貫1200 005
17.-. 8.151反10駄6万1506貫21 35
1羽 8銭1500羽120 00
鶏 卵1ヶ 6厘1万6200個97 20
牡 馬1頭30円23頭690 003
牝 馬〃 25円392頭9800 0041
計 2万406913 100

注 割合欄空欄の計は1,037円33銭、4.4パーセント。花岡村外6か村の村名は特定出来ないが旧北高根沢村である。
史料編Ⅲ・557頁史料12より作成