高根沢町図書館/高根沢町史ほか

高根沢町史 通史編Ⅰ

第一編 自然

第二章 高根沢町の風土

第三節 動物と植物

二 植物

(一)植物分布の特性

 その地域の気象や地形は、植物の生育や分布に深い関係をもつ大きな要因のひとつである。高根沢町の植物の種類や分布の様子をこの観点よりながめてみるとき、まず第一に生育に大きい影響をおよぼす気温より考えてみよう。
 植物の分布区分を左右するといわれる年平均気温一三度の等温線の様子を、栃木県年平均気温(平年値)メッシュ図、14図よりたどってみると、県南西部の足利市方面より北東に向かい鹿沼市、氏家町、喜連川町へ。そのあたりより那珂川沿いに湯津上村まで北上し、黒羽町の南部付近より再び八溝山脈に沿って南下し茂木町に至る。そこから茨城県側へと連らなる。また一三・五度の等温線を加えてみると、宇都宮市中央部を西より東に横断し、さらに芳賀町の中央を横断してゆるくカーブしながら益子町を南下する。
 高根沢町は、年平均気温一三度と一三・五度の等温線の間にすっぽりと収まったような位置にある。
 植物の分布は年平均気温一三度から南側を暖帯、その北側を温帯と区分するので高根沢町は暖帯の北限の位置にあたる。もちろん気温は常に流動的であることはいうまでもない。
 このような条件の中に町全体があることは暖かい地方にみられる植物のうち、比較的寒さに強い植物と温帯にみられる植物が入り乱れて複雑な種類の分布が推察され、自生植物の種類も豊富なことが容易に考察される。

14図 栃木県年平均気温メッシュ図

 次に地形からみると典形的な平野の様相をみせている。わずかに町の西部河内町、宇都宮市との境界をなす鬼怒川縁に海抜二一〇メートルほどの宝積寺台地があり、東部には喜連川町、南那須町、芳賀町との境界沿いに南北に連らなる海抜二二〇メートルほどの丘陵がある。この東西の丘陵の間は広大な水田地帯であって、北部の大谷付近は海抜一五〇メートル、南部の上高根沢付近が一一〇メートルで高度差が四〇メートルの平坦な地形で、その中を灌漑用水の川が水量豊かにゆるやかに流れ、そこにはたくさんの水生植物が繁茂している。
 町内の地形をさらにくわしく眺めるため北部、中央部、南部地区をそれぞれ東西方向に横断してみると15図および16図のようになる。北部は亀梨地区のゴルフ場付近から文挾を通り大谷の天沼地区に至るA線。中央部は上柏崎地区の南部からJR宝積寺駅北側付近に至るB線。そして南部は中柏崎地区の北部から新鬼怒川橋に至るC線のそれぞれの横断面である。D線は同一経線を表わす。全体的には町全部が平坦な地形であるから植物の垂直分布上からの変化はあまり考えられない。また地形による日照較差、気流などによる乾湿較差もあまり考えられない。大部分を占める水田は野生種の侵入を拒んでいるとともに、すべてが同一の条件をもっている単純な植生でもある。高根沢町の特色のひとつとして平坦地に点在する農家に「屋敷山」または「屋敷森」と呼ばれているスギ林を主体とした広大な防風林をもっていることである。数軒が集まっている所では隣から隣へと連続するこれらの防風林は、一辺が二〇〇メートル以上の規模のものが、いくつも存在している。この防風林のスギはいずれも大木で樹齢八〇年以上のものが多い。林は欝蒼と繁り林床は安定して日陰を好む植物が自生している。
 近年著しく発達してきた交通機関による植物の移動、土地造成などによる植物の移動、大規模産業の発達による海外との交流にともなう植物の移動などが高根沢町においても活発となり、在来種以外の帰化植物の分布も考えられる。
 以上の様に高根沢町は、植物の種類の豊富な自然条件がある反面、単純な地形などから多くの種類の期待できない条件をもつという矛盾点をかかえているところである。したがって高根沢町の植物相の特性を考察するには綿密な調査が必要であることはいうまでもない。今回の調査は短期間であったため十分な資料に基づくとはいえないが以下その特色を述べてみる。

15図 横断面の位置


16図 横断面

 まず、ここで述べる植物の種類という語は、植物学上でいうところの「種」「変種」「品種」および「雑種」と呼ばれているもののことで、一般に「種類」と呼ばれているものを指すことにする。
 園芸植物、作物植物、牧草等の栽培植物、建設工事等による植栽植物は野生植物でないので含めないのは当然であるが、これらのものが人為によらず勝手にとび出し、野生化して安定しているものは逸出種として野生植物とみなされる。