常総市/デジタルミュージアム

石下町史

第四編 近現代

第三章 大正期の石下地方

第一節 大正期の町政

大正期の県会で鬼怒川の治水対策に関する質問は散発したが、本格的にまとまって行なわれたのは大正十二年十一月の県会で、その質問者は大形村鎌庭(現千代川村)出身の渡辺亀三郎であった。質問の要点は鬼怒川改修工事の技術的な面で、県の技師との間に一問一答をくり返した。その一部を紹介すると次のとおりである。
 

Ⅲ-3図 鬼怒川の流れ

 
  (質問)……年々歳々鬼怒川ノ工事ニ付キマシテハ多額ノ県費ヲ頂戴シテ居リマシテ、地方民ト致シマシテ
   ハ洵ニ御気ノ毒ニ感ジテ居ルノデゴザイマス、就キマシテハドウカシテ此鬼怒川ノ工事ハ、永久ニ堪ヘ
   得ベキ工事ヲシタイ考ヘデアリマス……アノ式ハ何ト云フヤウナ式デ、尚何レノ地方ニ於キマシテ研究
   サレマシタモノカ、此沈石工事ニ付キマシテ御説明ヲ願ヒタイノデゴザイマス
  (答)鬼怒川ノ宗道、其他鎌庭附近ニ施行シテ居リマス所ノ工事ハ混凝土単床ト申シマシテ、北海道ニ於キ
   マシテ……
  (質問)其北海道ノ河川ノ水勢及川底ノ傾斜並其土質等ニ付キマシテハ、鬼怒川ノ現在ノ水勢並河川ノ斜面、
   土質等ト較ベマシテ同一ノモノデアルヤ否ヤ……
  (答)同一ノモノデアルカナイカト云フコトハ、是ハ比較シテ見ナケレバ分リマセヌガ、必ズシモ同一デナ
   クトモ現在鬼怒川ニ施行シテ居リマス場所ニ、適当シテ居ルコトト信ジテ居リマス
  (質問)只今行ハレテ居リマス所ノ護岸工事ハ、甚ダ当ヲ得テナイ如ク考ヘルノデアリマス、ソレハ此鬼怒
   川ノ水勢ハ甚ダ早ウゴザイマシテ、只今ノ沈石工事ナドハ、其水勢ニ堪ヘラレナイヤウナ状態デゴザイ
   マス、昨年度ノ洪水ノ状態ヲ見マスルト、聊ノ洪水ニ依リマシテモ其沈石ハ恰モ木ノ葉ノ風ニ舞ウガ如
   ク、波動ヲ描イテフラフラシタノデゴザイマシタ、而シテ其経費ヲ聴イテ見マスルト、非常ナル所ノ、
   莫大ナル費用ガ掛ツテ居ルト云フコトデゴザイマス、斯ノ如キ工事ヲ尚継続サレ、莫大ノ費用ヲ投ジラ
   レルト云フコトニナレバ、啻ニ県全般ニ対スル所ノコトデナク、所謂此護岸地方ニ於ケル所ノ者ハ一朝
   決潰スル場合ニハ、生命財産マデモ失フト云フヤウナ大損害ヲ蒙ルノデゴザイマス……ドウカアレニ付
   キマシテハ一層ノ注意ヲ払ハレマシテ、而シテ動カナイヤウナ立派ナ工事ヲサレルデナケレバ、経費ヲ
   啻ニ捨テルバカリデナク、地方県民ノ生命、財産上ノ安定モ随テ得ラレナイノデアリマス(後略)
  (答)当局ト致シマシテハ、混凝土単床ヲ決シテ不適当トハ現在ニ於テハ認メテ居リマセヌ
 
 このような質疑に引続いて北相馬郡出身の横嶋酉之助が、鬼怒・小貝川の堤防修繕に関して、この両河川は出水のたびに大損害を受けているのだが、果して県当局は河川改修・堤防補強等について、計画的に各河川の工事をすすめていくのかどうか、と迫った。これに対して県はいずれ計画を建てて各河川の改修に当る予定であるが、目下の所は年々必要な場所の堤防補強が精一杯であると、治水対策の実情を明らかにするのにとどまった。
 とにかく石下地方のように鬼怒川に接する地区をはじめとして、小貝川や利根川など各河川に接する地方にとっては、治水堤防の問題は大問題であり、県会では道路問題を重視する県北地区選出の議員との間に、県西地区選出議員の活躍が期待されたのであった。