常総市/デジタルミュージアム

坂野家書画資料解説

「坂野家の書画資料」について

坂野家収集書画

  • 「充廣徳性力行好事」
  • 小野湖山書


 小野湖山(本姓横山、名は巻のち長愿、1814-1910)が半切の画仙紙(34cm×133cm)に「充廣徳性力行好事」を行書で扁額用に揮毫し、坂野家に贈ったのであろう。左に添えられた「朱文公語」から、朱子と尊称される中国南宋の儒学者朱熹(しゅき、1130-1200)の語であることを知るが、南宋の羅大経(だいけい)が文人や学者の詩文についての論評や逸話などをまとめた随筆集で1250年頃に成立したとされる『鶴林玉露』に所収される。16巻と補遺を加えた17巻本の四庫全書本で閲するに、巻十三の巻末近くに当該語が収められており、湖山は江戸時代の和刻本で、この朱子学の祖の語を修得したのであろう。
 落款「湖山七十一翁愿」の脇に「長愿之印」白文方印を捺して落款とするが、齢から明治17年(1884)の書である。成語の「讀千古書友天下士」字間作欄白文方印も添えるが、これは清代の学者にして書家・篆刻家の包世臣(1775- 1855)の語「読古人書友天下士」(古人の書を読み天下の士を友とす)を受けたものであろう。朱文の引首印「賜硯樓」は湖山の楼号で、内閣書記官としての功により明治16年(1883)7月9日に天皇より硯を賜ったことによる。翌年7月に刊行された『賜研楼詩』には硯の図が掲載されているが、本作はその前後に書かれたものである。これについては、同時作の七言律詩「七十自寿」の解説を参照されたい。
 なお、本作のような体裁はふつう右横書きと称されるが、一字ずつ改行を繰り返しつつ、小字の落款は縦に字を連ねることから、「一行一字の縦書き」と見る説もある。
 
解説: 森岡 隆(筑波大学教授・博士(芸術学)) 2019.3
 
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