弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

資料編1(考古編)

新編弘前市史 資料編1(考古編)

第2章 旧石器・縄文・弥生

第2節 縄文時代

3.青森県における土器の出現

 前期に続く中期は、前半が円筒上層式土器(正確には円筒土器上層式土器)の盛行した時代であり、後半は東北地方南部から北上してきた大木系(だいぎけい)土器文化にさしもの円筒土器も押されて席巻され、終局的にはその土器文化の中に包含されてしまうのである。
 円筒上層式土器は、下層式と異なり胎土に砂粒を多く含むが、大半の土器は植物の繊維を含んでいない。土器の上半部や口縁部には、粘土の紐を横・縦・斜め等に張り付けて器面を飾っている。また、器体の外面には縄文を斜めに付けた斜縄文・撚りを中間で逆方向に変えた羽状縄文・撚り糸を押し付けた絡条体・細竹を押し付けた竹管文等々の文様が施されている。この上層式土器は、前述のように山内清男によりa・bの2類に分類され*44、昭和31年(1956)の『日本考古学講座』3(河出書房)の中で、江坂輝彌がc・d類を追加して4分類とし*45、さらに昭和45年(1970)の『石神遺跡』において、新たにe・fの2類が加えられて6分類となり*46、その後f類が最花(さいはな)式に還元され、5分類の状態で現在研究が進められている。
 円筒上層式土器の中で最も華やかに器面を飾るのは、b式(b類と呼ぶのが正確だが今日では類に代えて〝式〟が多く用いられる)土器であり、上層d式の時期に南の大木系土器が浸透して両者の共存状態を現出し、上層e式になると大木系土器の様相が濃くなって、大木8b式土器の特色を持つ榎林式土器の成立を見るに至り、次の最花式・中の平Ⅲ式*47(大木9式類似)から、大木10式(唐竹式ともいう)へと続くのである*48
 縄文時代の前期と中期に栄えた円筒土器は、その下層式土器の段階において、北は津軽海峡を越えて北海道の石狩川河口にある石狩町から室蘭市を結ぶ線を北限とし*49、南は太平洋側で岩手県一関市付近、日本海側は秋田県南部ないし山形県北部を南限としている。また上層式土器は北において北海道の石狩平野から南の日高地方を下って襟裳(えりも)岬付近に達し、南は山形県南部の上山市付近まで広がっている*50
 円筒土器の文化圏は以上のようであるが、一部にこの文化圏を越え、想像以上の遠隔地に達しているものもある。例えば、下層d1式土器は、能登半島の能都町真脇遺跡で出土している*51

図6 縄文時代中期の土器(円筒土器) 石神遺跡(1)
円筒上層a式土器


円筒上層a式土器


円筒上層a式土器


円筒上層b式土器


円筒上層b式土器…
青森市・三内遺跡(青森県立郷土館蔵)


円筒上層b式土器


円筒上層b式土器

(1点を除き森田村歴史民俗資料館蔵)

図7 縄文時代中期の土器(円筒土器) 石神遺跡(2)
円筒上層c式台付鉢形土器


円筒上層c式土器


円筒上層d式土器


円筒上層d式土器


円筒上層e式土器


円筒上層e式土器

(森田村歴史民俗資料館蔵)

図8 縄文時代中期の土器(主に大木系土器)(3)
狩猟文土器
中期末未命名形式の深鉢形土器…
八戸市・韮窪遺跡
(県埋蔵文化財調査センター蔵)


大木8b式甕形土器…
二ッ森貝塚
(天間林村教育委員会蔵)


大木9式系鉢形土器…
石神遺跡(森田村歴史民俗資料館蔵)


大木8a式深鉢形土器
石神遺跡(森田村歴史民俗資料館蔵)