弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

資料編1(考古編)

新編弘前市史 資料編1(考古編)

第1章 地形と地質

第5節 温泉

 東北地方には600を超える温泉地があるとされている。青森県内の温泉地は福島県に次いで多く、酒井(1967)によって青森県の温泉が総括された時点で67か所の温泉地が上げられている。
 東北地方の温泉は、温泉の分布と地質との関係に基づき、次のように3区分されている(大上・田宮,1989)。①脊梁山脈を中心とした、第四紀火山の周辺に集中して分布する自然湧出による高温泉。②石油や黒鉱探査や、観光・リゾート開発を目的としたボーリングにより地下深部から揚水されている温泉。③北上山地などの地温勾配が小さい地域に見られる25℃以下の鉱泉。
 津軽平野周辺にあるもののうち、大鰐温泉、温湯・板留温泉、嶽・湯段温泉などが高温泉のタイプに含められ、酸ヶ湯・蔦温泉もこれに入る。一般に第四紀火山に近接した高温泉は、硫酸酸性泉(嶽・湯段温泉、酸ヶ湯温泉)が見られ、第四紀火山から離れた地域の高温泉には炭酸泉や単純泉が配置する傾向が認められる。また高温泉は、カルデラを形成する火山体の周囲に集中している。
 大鰐温泉をはじめ、浅虫温泉や札幌近郊の定山渓温泉などは、すぐそばに第四紀火山はないことから、温泉の熱源についてはよく分かっていない。しかし、そのような地域には、新第三紀(2400-180万年前ころ)の火山活動に由来する火山岩が分布しているので、数百万年以上前に活動し、既に火山地形も失われてしまったものの、その地下にある岩体の余熱が、温泉の熱源になっていると考えられている(大木・小林,1987)。
 さて、弘前市内をはじめ津軽平野を構成する沖積層分布地域にも近年次々と温泉ができつつある。このような沖積層分布域における温泉の先駆的役割りを果たしたのが、昭和48年に開発された板柳温泉である。その後、深部掘さくによる温泉(熱源が火山とは直接関係のない、地下水が地熱によって温められて生じた温泉)開発が盛んに行われるようになった。地下の温度は、火山との関係があるなしにかかわらず、深くなるにしたがって高くなる。この地下深度に応じた温度変化を、地下増温率(地温勾配とも呼ばれる)という。酒井(1981)によれば、弘前地域における地下増温率は、概ね5.5℃/100mとされている。したがって、弘前地域のような沖積層分布域においても、地中深く掘さくすれば、高温の地下水が得られるはずである。しかし、温泉として利用できるかどうかは、温度を左右する地下増温率のほかに、その深度に温泉水の基となる地下水が豊富に存在するかどうかにもかかわっている。この地下水の賦存層は帯水層と呼ばれ、それが温泉として利用可能か否かは、帯水層の形状や状態を意味する堆積層や地質構造に起因することとなる。例えば、シルト層より礫層が深部より浅部に分布する地層が良好な帯水層と言える。弘前地域において帯水層となる地層は、新第三紀鮮新統と中新統の上部・下部であり、これらの時代の地層が温泉開発の対象となっている。
 弘前付近における温泉のうち、鮮新統及び中新統上部層から取水している温泉水の泉質は、単純泉に属する。しかし、さらに古い地質系統の中新統中・下部層から取水している温泉水は弱~強食塩泉で、油田かん水的な性格を持っている。弘前市境関及び福田付近においては、同程度の深度から揚水されている温泉にもかかわらず、その泉質が東西で異なることが認められている。このことは、地下深部の地質構造的な不連続性に由来すると考えられており、沖積層の下に比較的大きな断層が伏在することが予想される。
 
※温泉 (hot spring、 thermal spring) …科学的には、その土地の年平均気温より高い水温を持つ湧水とされ、日本では25℃以上としている。温泉法では、地中から湧出する温水・鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で温泉源から採取されるときの温度が25℃以上、または次の成分のいずれか1つを含むものを温泉と定義している。溶在物質、CO2、Li+、Sr2+、Ba2+、Fe2+・Fe3+、Mn2+、H+、Br-、I-、F-、HAsO42-、HAsO2、 S、 HBO2、H2SiO3、NaHCO3、Rn、Ra。(地学事典、平凡社刊による)
源泉一覧表
弘前市地域に湧出する温泉の源泉名・掘削・泉温・湧出量を整理し示した。
番号温泉名源泉名所在地深度(m)口径(mm)泉温(℃)湧出量(L/分)
自墳揚湯自墳揚湯
1上恋塚源泉弘前市大字三和字上恋塚29-9700150~ 8050.0040
2恋塚温泉下恋塚源泉弘前市大字三和字下恋塚189-4860200~10068.00218
3大森温泉田浦温泉弘前市大字大森字田浦85-1900150~10049.00220
4鬼沢温泉貝沢温泉弘前市大字貝沢字沢辺732-4650100~ 6031.540
5瑞風荘神原温泉弘前市大字高杉字神原93-2730150~12542.00400
6三世寺温泉鳴瀬温泉弘前市大字三世寺字鳴瀬103-1550150~10051.00345
7石田源泉弘前市大字独弧字石田170-2562150~10041.00360
8はなさき温泉津賀野温泉弘前市大字津賀野字浅田987-1700150~10051.00130
9石渡温泉石渡温泉弘前市大字石渡字田浦45-24650150~ 8042.00120
10横船源泉弘前市大字船水字横船168-21000150~10044.00120
11堅田神田泉弘前市大字堅田字神田378500150~10039.50340
12津軽長寿温泉津軽長寿温泉弘前市大字東城北3丁目4-7780150~10044.0075
13境関温泉境関温泉弘前市大字境関字亥ノ宮8-1550150~10046.00153
14白菊温泉紺屋町温泉弘前市大字紺屋町52-1500150~10036.00230
15川端泉弘前市大字堅田字宮川326-3400150~10033.00270
16和徳温泉弘前市大字堅田字宮川411-11000200~ 7530.00600
17福田温泉福田温泉弘前市大字福田字村元70785150~10045.00320
18城東泉弘前市大字城東中央4丁目1-101060150~ 6027.0050
19種元源泉弘前市大字福田字種元96800150~ 6543.00360
20桃太郎温泉下樋田温泉弘前市大字新里字樋田82-4986150~10047.00800
21福田萢源泉弘前市大字豊田2丁目3番地1000200~10053.0070
22新里源泉弘前市大字新里字東里見4946415038.50200
23宝来源泉弘前市大字鷹匠町57600150~10034.00210
24朝日温泉2号泉弘前市大字土手町245010042.00180
25マルサン温泉弘前市大字駅前2丁目18-2420150~10037.00360
26浜館温泉弘前市大字駅前2丁目2-3345010030.00133
27富田2丁目源泉弘前市大字富田2丁目8-4300150~10026.00164
28富田温泉弘前市大字富田2丁目83-1404150~10026.00250
29弘西泉弘前市大字富田町134300150~ 7527.00190
30寒沢温泉弘前市大字寒沢町5-4700150~10037.00100
31富の湯温泉桔梗野泉弘前市大字桔梗野4丁目13-5500150~10036.00110
32寺沢温泉弘前市大字清水富田字寺沢52-150150~10031.00300
33青柳温泉弘前市大字下湯口字青柳12-2800150~ 6543.00360
34緑ヶ丘温泉緑ヶ丘温泉弘前市大字旭ヶ丘2丁目6-8750100~ 5041.5050
35桜ヶ丘温泉桜ヶ丘源泉弘前市大字桜ヶ丘4丁目2-3500150~10040.50115
36山崎温泉弘前市大字山崎2丁目10-9800150~ 6545.0050
37松原温泉弘前市大字松原4丁目5-10700150~10045.00250
38白馬龍神温泉小栗山泉弘前市大字小栗山字芹沢2-1700200~10058.4250
39伸光温泉大清水源泉弘前市大字大清水字下広野4-4525150~ 8029.00127
40川合宝温泉弘前市大字堀越字下川原4-2600150~10050.00157
41川原田源泉弘前市大字石川字川原田4-2790150~ 8042.00150
42光世温泉里見温泉弘前市大字大和沢字里見13450150~10045.0400
43小沢龍神温泉小沢温泉弘前市大字坂元字山下49-4600150~10043.00300
44国吉泉弘前市大字黒土字山下41-1377150~10058.00377