弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

通史編1(古代・中世)

新編弘前市史 通史編1(古代・中世)

第5章 中世後期

第三節 南北交易と「境界地域」津軽

二 陶磁器と津軽

津軽地域では、陶磁器の使用に関して興味ある事例が存在する。それは、日常生活で使用した陶磁器を廃棄するとき、意図的に破砕して捨てる風習である。浪岡城跡や中里城跡で出土した破砕陶磁器は、一定の場所に粉々に砕いた陶磁器片を撒くような状態で廃棄しているのである。事例としては特殊な部類に入るため、すべての陶磁器がそのようにされたわけではないが、かわらけの稀少性とともに、陶磁器という「うつわ」に対する精神性のあらわれとして注視すべき出土状況である。
 これらの陶磁器かわらけ、さらには煮炊具である鉄鍋と、調理・貯蔵具として鉢・甕の列島的な分布から、中世後期の組み合わせを検証すると、北日本の地域相は「北国相」と「蝦夷相」に区分されるという(図48)。

図48 陶磁器アセンブレッジの地域相
(小野正敏原図)

 津軽地域は「北国相」のなかに入り、煮炊きの基本は鉄鍋だけで土器の鍋を使用しない。貯蔵具・調理具は、越前焼を基本とする日本海交易の中に組み込まれている。陶磁器に関しては日本海交易圏でありながら、かわらけという器ををほとんど使用しない地域であり、基礎的な生活文化の伝統性や物資の動きから、さらに「北国相」と「蝦夷相」に区分している。いみじくもこの区分は、中世から近世に至る和人社会とアイヌ社会との分断の歴史と連動するものであり、考古学資料の分析が社会構造の動きに一定の発言をなし得ることを証明したものである。