新編弘前市史 通史編1(自然・原始)
第1章 津軽の自然
第六節 津軽地域の気候
二 津軽地域気候の要素別特性
(一) 気温
気温は海岸と内陸、緯度、地表状態などで著しい差があるが、その中で明け方に最低気温になり、午後二時ごろに最高気温が現われるといった日変化や、春夏秋冬をリズムとした年変化をしている。そこで、津軽地域における気候値特性を、月別平年気温で周辺都市などとの比較でみてみる。
日本の気候区で分類される地域のうち、東北の日本海側(青森)、日本海側の北陸(新潟)、北海道西部(札幌)、太平洋側の関東(東京)の気象官署地点で地域を代表させる(表14)。
青森(北緯四〇度四九分)における年平均気温は、九・七℃である。この気温は東京(北緯三五度四一分)より五・九℃、新潟(北緯三七度三五分)より三・五℃低く、札幌(北緯四三度〇三分)より一・五℃高くなっている。単純に緯度差一度あたり、一℃前後差の見当になっている。近隣地の年平均気温は、八戸一〇℃、秋田一一℃、仙台・酒田一二℃となっている。北海道は九℃以下と低温であるが、津軽地域でも九℃台の低温域がある。津軽半島陸奥湾側の蟹田から北部で九℃くらいである。この特徴は夏のヤマセ卓越期間における低温によるものである。全国平均気温は一三℃(理科年表の国内八〇地点平均)である。これを等値線からみると、北陸、北関東から東北南部にかけての地帯になっている。月別平年気温で青森と東京との場合で比較すると、気温差の大きいのは冬と春で七℃前後、気温差の小さい月は八月で四℃、その他の月は五℃くらいになっている。 また、農作業(植物)期間に相当する春・夏・秋について比べると、春では青森が東京より一ヵ月遅れの季節になっている特徴がある。これは、桜(ソメイソシノ)前線の北上する日進差にも現われている。すなわち、青森の四月は東京の三月、青森の五月は東京の四月、そして六月は五月、七月は六月に相当する(ただし、約一℃の前後差がある)。反対に秋冷でみると、青森は東京に比べほぼ一ヵ月早い。東京の九月が青森の八月に、東京の十月が青森の九月に、そして青森の十月が東京の十一月の気温に相当している。このように津軽地域の農作業期間は、東京周辺の地域気候から七月・八月の盛夏期を除いた天候に相当し、暖候期間がいかに短いかがうかがわれる。したがって当地域では、位置的に生じる季節の遅早や期間差を、どう埋めるかの工夫が求められる。 津軽地域と同じ雪国である新潟は、若干低緯度であるほか対馬暖流の影響もあって比較的温和で、青森と東京とのほぼ中間値を示し、年平均気温一三℃は全国平均気温地帯にある。青森は年間を通して新潟より気温は低く、冬で四℃、ほかの季節は三℃くらい低くなっている。新潟は、春が青森より二週間ほど早く、秋冷は二週間ほど遅い。 北海道は津軽地域と同じ北日本圏に区分されることもあるが、年平均気温は札幌八℃。道内全域では五~九℃と一〇℃以下の地域である。青森と札幌との月別気温差は、最も大きい冬で二~三℃、ほかの季節は札幌で一℃低い程度で年変化の状態は、よく似ている。 |