弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

通史編1(自然・原始)

新編弘前市史 通史編1(自然・原始)

第1章 津軽の自然

第五節 山地と丘陵の生い立ち

一 海の時代の終焉と古いカルデラの活動

火山の噴火活動が終息し静かな時期が続くと、カルデラ壁中央火口丘などの高い所から風化、侵食により崩れてできた土砂は、雨水や風で運ばれた後に堆積し、扇状地を形成した。特に大雨が降ると、大量の土砂が流れ出し、勢いの強い流れは扇状地の表面をえぐったり、凹地を埋めながら新しい洪水堆積物を積み重ねて次第に扇状地を成長させた。こうしてできた堆積物は、阿闍羅山の周囲(鎌田、一九九三)や碇ヶ関付近(写真55)でみることができる。またカルデラ内の低い場所には次第に水がたまって湖沼ができ、その水中には火山灰質の泥や砂が堆積した。一般に湖沼堆積物には、平行な縞模様がみられる(写真56)。よくみると縞は粒子の粗い層と細かな層の繰り返しからなり、季節の違いによって湖沼に流水する水量が変化することに対応してできると考えられている。この縞にそって薄く地層をはがすと、いろいろな種類の木の葉の化石をみつけることができる。碇ヶ関層についてこれまでに調査された報告書の化石のリストをみると、碇ヶ関カルデラの中の湖沼の周囲にはクマシデやメタセコイア(井上・三橋、一九六一)をはじめとした樹木が繁っていたことがわかる。同じように、堆積物の中からは花粉の化石もみつかるので、詳しく調べてその種類がわかると、当時の植物相が復元できるし、植物の組み合わせをもとに、どのような気候であったかの目安をつかむこともできる。このカルデラ湖堆積物からは淡水に住む珪藻(けいそう)化石もみつかっている(岩井、一九六五)。

写真55 碇ヶ関カルデラ内の扇状地堆積物。(碇ヶ関村東部)


写真56 碇ヶ関カルデラ内の湖底に堆積したシルト岩。(碇ヶ関村碇沢付近)

 このようなカルデラ湖や浅くなりつつあった狭い海は、地殻変動が次第に激しくなり、断層の活動により地面が帯状に隆起し始めることによって陸域が広がりはじめ、時がたつとともに現在の姿に近づいた。