弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

通史編1(自然・原始)

新編弘前市史 通史編1(自然・原始)

第1章 津軽の自然

第五節 山地と丘陵の生い立ち

一 海の時代の終焉と古いカルデラの活動

この海には、ときおり大規模な噴火活動に伴って発生した火砕流が流れ込み、軽石凝灰岩からなる厚い地層を形成した。軽石凝灰岩にジルコンなどの鉱物が含まれていると、フィッショントラック法という方法で、火砕流をもたらした火山の、マグマが吹き出した年代を測定することができる。
 西目屋村西目屋小・中学校の下の崖にみられる軽石凝灰石を、フィッショントラック法で年代測定した結果、三六〇万年±二〇万年という値が得られた。この年代値は、鮮新世前期の終わりごろにあたる。同じような年代値を示す火砕流堆積物には、尾開(おびらき)山凝灰岩(村岡・長谷、一九九〇)がある。尾開山凝灰岩は、湯ノ沢カルデラから噴出した火砕流堆積物堆積してできた地層である。湯ノ沢カルデラは、碇ヶ関カルデラ(一六四頁参照)とほぼ同じ所にあったが、碇ヶ関カルデラよりは、古い時代に存在した火山で、より規模の大きなカルデラであったと考えられている(村岡・長谷、一九九〇)。そのほかにも浪岡町王余魚沢(かれいざわ)、五所川原市の東方など津軽平野周辺では、多くの場所で白色の軽石凝灰岩と呼ばれる厚い堆積物がみられる。これらは鮮新世前半に活動していたカルデラから海に流れ込んで堆積した、大規模な火砕流の名残である。しかし、その当時、これほど大量の火砕流を放出した火山がどこに位置していたのかについては、湯ノ沢カルデラを除くとあまりよくわかっていない。なお、本稿を執筆するために、新たに年代測定を行った試料と、その年代値を表12に掲げた。
表12 津軽平野周辺に分布する火砕流堆積物と溶岩の年代
試料の採取位置岩 相年代値地質年代
地層
従来の解釈
五所川原市若山
N 40°48'30”
E140°31'30”
軽石凝灰岩1.1±0.2Ma前期更新世
鶴ヶ坂層?
王余魚沢層(岩井ほか,1982)
尾開山凝灰岩(村岡,1988)
平賀町唐竹
N 40°33'
E140°37'
軽石凝灰岩1.5±0.2Ma前期更新世初期
大釈迦層
尾開山凝灰岩(村岡,1988;村岡・長谷,1990)
黒石市法峠
N 40°39'30”
E140°40'
軽石凝灰岩2.8±0.5Ma後期鮮新世
大釈迦層
六萬平層(村岡・長谷,1990)
前田野目層(根本,2000)
黒石市法峠
N 40°39'30”
E140°40'
軽石凝灰岩3.3±0.3Ma後期鮮新世初期
尾開山凝灰岩
八甲田第1期火砕流堆積物(村岡・長谷,1990)
大落前川層(根本,2000)
西目屋村上田代
N 40°34'30”
E140°18'
軽石凝灰岩3.6±0.2Ma前期鮮新世
尾開山凝灰岩
大秋層(大沢,1962)
大秋層田代凝灰岩部層(岩井ほか,1973)
相馬村立構山
N 40°32'30”
E140°24'30”
安山岩溶岩9.5±0.4Ma後期中新世前期
相馬安山岩類
相馬集塊岩層(大沢,1962)
相馬安山岩質集塊岩類(岩井ほか,1973)
三ッ森安山岩(村岡,1988)
*年代測定はフィッショントラック法による。年代値のMaは百万年単位。