弘前市立弘前図書館/おくゆかしき津軽の古典籍

通史編1(自然・原始)

新編弘前市史 通史編1(自然・原始)

第1章 津軽の自然

第二節 岩木火山発達史

二 岩木火山の概観

図7には岩木火山周辺の水系および等高線の配置を示した。まず等高線の配置をみると、標高約五〇〇メートルを境にしてその間隔に違いが認められる。五〇〇メートル以高では間隔が密であり、南西側で三五度、北東側で二五度と急傾斜をなしている。五〇〇メートル以下では約六度の緩やかな斜面で、火山麓扇状地として展開している。なお、標高一〇〇〇メートル付近には爆裂火口跡が存在し、放射谷の谷頭となっていることが多い。

図7 岩木火山周辺の水系および等高線図

 岩木火山を源流とする河川として、北麓を流れる大鳴沢(おおなるさわ)(下流側で鳴沢川)から時計回りに、長前(ちょうまえ)川・赤倉(あかくら)沢(下流側で大石川)・前萢(まえやち)川・多沢(たざわ)川・鶏(にわとり)川・一本木(いっぽんぎ)沢川(下流側で血洗川)・後長根(うしろながね)沢(下流側で後長根川)・蔵助沢・毒蛇(どくじゃ)沢・平沢川・柴柄(しばから)沢・湯ノ沢・湯段沢(ゆだんざわ)川・赤沢白沢・徳明(とくめい)川・湯舟(ゆぶね)川などが流れていて、いずれも火山特有の放射谷である(写真8)。これらの河川は中村(なかむら)川、鳴沢(なるさわ)川、新山田(しんやまだ)川および岩木川の四つの水系に属し、前の二河川は直接日本海に、後の二河川は津軽平野を北上したのち、十三湖を経て日本海に流れている。北麓を流れる大鳴沢湯舟川および丘陵を流れる鍋(なべ)川は鳴沢川に合流し、長前川平野部新山田川に流れている。東麓の赤倉沢から南麓を流れる毒蛇沢までの放射谷岩木川に合流し、南麓の平沢川から湯ノ沢までは大秋(たいあき)川に注ぎ、下流の相馬村で岩木川に合流している。西麓を流れる湯段沢川から徳明川にかけては岩木火山体の西側を北流する中村川に合流している。このほかに数多くの小河川が存在するが、岩木火山北麓の扇状地外縁に展開する岩屑(がんせつ)なだれ(2)堆積面、および東麓の山麓扇状地外縁に展開する弧状の丘陵に源を発するものが目立っている。

写真8 南麓での緩やかな火山麓扇状地と火山体を刻む放射谷

 これらの放射谷は、図8の断面に示したが、岩木火山体の高度約五〇〇メートル以高にあっては比高五〇メートル以上、山頂部付近では二〇〇メートルにも及ぶ絶壁状の谷壁となっている。特に赤倉沢谷頭の、標高一一〇〇~一四〇〇メートル付近に展開する「赤倉爆裂火口跡(3)」は、その後の開析による崩落も進んで山頂部の外輪山側壁を大きく浸食している(写真9)。

図8 岩木火山の主要放射谷の河床断面(太線)と尾根の断面(細線)との比較


写真9 赤倉沢最上流にみられる,すり鉢状の爆裂火口跡

 しかし、火山麓扇状地内では土石流などで供給された砂により谷底が埋積され扇状地面とほとんど高度差が認められない。開析度が大きく起伏に富む山麓扇状地外縁の丘陵では、再び二〇メートルあるいはそれ以上にも及ぶ谷壁となっている。ただ、西麓の白沢および赤沢流域では、第二松代の位置する山麓部にあっても五〇~一〇〇メートルに及ぶ深い谷壁が認められる。谷壁は古岩木火山を構成する角凝灰岩などの火砕物と、これを不整合に覆う岩屑なだれ堆積物からなり、地表面は平滑で緩傾斜な岩屑なだれ堆積面となっている。