函館市/函館市地域史料アーカイブ

南茅部町史 下

第一七編 漁村の生活

第二章 伝説

第一節 伝説

義経伝説

 オキクルミの姿が岩になったのが、椴法華村の銚子ノ岬の西方にある崖の上にある。アイヌの立っている姿によく似た一丈五尺ばかりの立岩がある。
 アイヌたちは、この立岩をアイヌの神(カムイ)として崇(あが)め、恐れて近づかなかった。
 その昔、蝦夷地に逃れて来た九郎判官義経が、ここまで逃れて来てこの立ち姿の岩に身を隠した。アイヌの恐れるカムイの岩に近づいた義経を見て、アイヌ達は大いに驚いて弓矢を舟に投げ捨て、身をふるわせて礼拝(ウムシャ)をくりかえしながらみな逃げ帰ってしまった。
 銚子の碕といへる岩の上に、蝦夷(アヰノ)の立るがごとき形したる五尺(イツサカ)ばかりと見えて、をのづからなれる石のたてり。此立石をアヰノら、神鬼(カムキ)と恐れたふとめり。其ゆへは、九郎判官義経の此石にかくろひおはしたりけるを、追来るアヰノあまたが見おどろき、弓箭を舟に投て、身をふるはして礼儀(ウムシャ)して、にげしぞけりとなん、それらがむかし物語をせり。
                            出典『えぞのてぶり』(菅江真澄全集末来社)