函館市/函館市地域史料アーカイブ

南茅部町史 下

第七編 産業

第四章 商工業

第二節 鱈肝油製造

官業鱈肝油製造所

当初、製造された鱈の肝油は、すべて在来の木製の樽詰であったが、試製の肝油が品質よく好評を博したので、売薬されるためには、その取扱上のこともあって壜詰にすることをいろいろ計画された。
 壜詰の壜の製造について大きな役割りを演ずるのが、当時、函館に在住して日本の製氷の先駆者となった中川嘉兵衛である。好評をえた鱈の肝油は大きな関心事であり、医薬を業とする諸方面から注文が多く、この市販化にあたった官業の事務は腐心を露(あらわ)にしている。
 衛生上からも壜詰にしたいが、業者の手で詰替えや増量(他の油を混入してみずまし)などされ(優良)品の信用を失墜するなどの危惧があるとして、中川の進言を入れ、壜は英国に発注し、文字や図案を壜に鋳造して紙票の貼替などの防止策を採用した。
 
  十一年十二月七日出
  十二月三日 船便
  第八百五号
    東京        函館
      書記官        書記官
  鱈肝油製造之儀ニ付本月八日付無号ヲ以再ヒ御申越之趣了承本年之儀ハ製法ニ熟スル者少ク候間更ニ数名ヲ傭入傅習セシメ候圖ニ付製造高之儀ハ先般申進候通之目的ニハ候得共猶督励可成丈増加候様可取計候然ルニ右売捌方之儀樽入之儘薬舗ヘ相渡候テハ他品ヲ混入スルノ係(懸)念モ有之仮令瓶詰ニ致シ候共銘紙ヲ取替候等従来薬舗之通弊ニ付厳敷是等ヲ豫防相成度段中川嘉兵衛ゟ屢々申出之趣モ有之右等之儀ハ疾ク御承知之事ニモ可有之且嘉兵衛申立モ悉ク信用難致口ニハ候得共萬一右弊害有之候テハ折角精製之良品モ遂ニ聲價ヲ得ルヲ期シ難キニ付篤ト熟考候ニ別紙雛形之通文字ヲ鋳込タル瓶ヘ詰口ヲ堅固ニシ賣捌候ハゝ前陳之弊害ヲ除去スル儀ゟ存候ニ付右瓶鋳造之儀中川嘉兵衛ヘ尋問候処御國内ニテハ鋳造無覚束殊ニ代價モ不廉ニ付英國ヘ注文候ハ充分之品出來候上代價モ壹個ニ付凡六銭位ニテ東京着可相成哉之趣ニ付為参考申進候条猶可然御詮議篤ト弊害豫防ノ途相立候様致度候過日於本廳差出置候損益豫算調ヘハ瓶代八銭五厘ニ見込置候當地賣捌用之分壱ヶ年百個入用ニ候条瓶代右見込以内ニテ御買上錫口共合セテ御回送相成度此段御回答旁及御照會候也
   十一年十一月廿九日
 
 開拓使函館支庁から東京の勧業課書記官にあてた書翰は、鱈肝油に係る官業事業の担当官たちも、在来の商(あきな)いの慣習から新しい商品市場に、いかに対応するか部内の揺(ゆ)れの一節である。
 書翰の内容は
 
一、所期の目標高まで生産製造できなかったのは、製法に熟練した者が少ないからであること。
二、来年は傭入製法を伝習・講習させて目的達成に努めるつもりであること。
三、これまでのように肝油を樽詰で薬店に売渡すとき、薬店で他のものを混ぜて増量をはかるおそれがあるので、瓶詰にしたいこと。
  たとえ瓶詰にして商標の紙札レッテルを貼りつけても、他の瓶にうつしかえレッテルを贋物と貼り替える危険も多い。
四、樽より瓶詰にし、さらに贋もの防止のためには、瓶に商標・文字レッテルを鋳造することである。
五、商標・文字入りの瓶は国内では製造がおぼつかないので、英国へ注文する必要のあること。
六、英国で製造させると、東京着瓶一個の代価はおよそ、六銭ぐらいであるが、国内輸送や製品化までの瓶の廃棄などもふくめて一個八銭五厘の見込みである。
七、函館(道内)での売捌用として百個入用であるので、錫口とも回送してほしい。
  第六百五拾八號
  客月十六日御送付之肝油拾弐瓶代償金    一瓶 二五銭
  三円差出候条御落手有之度候也
   明治十一年十二月十三日 東京司薬場
    開拓使勧業課 御中

[図]

               Pure  Pjuәr ピュア
                   純粋な
               Cod   Kәd  カッド
               Liver  livәr リヴァ 肝臓
               Oil   ail  オイル
 
               ☆開拓使紋章
                七光星と文字は鋳込
               ☆開拓使官業の記号(開拓使紋章は七光星)