函館市/函館市地域史料アーカイブ

南茅部町史 上

第六編 漁業

第一章 郷土の漁業

第一節 昆布漁業

大正・昭和初期の昆布採取

 昭和七年六月、尾札部漁業組合書記平田清太郎が、昆布の販路状況を視察のため東京から京都、大阪、下関、鹿児島へと出張している。
 このときの報告書に拠り、視察した各地の真昆布市場の概略を要約する。
 
    昆布販路状況視察報告書  尾札部漁業組合書記 平田清太郎
  大阪市
  大阪昆布同業組合 組合長 吹田 主事 勝見 大阪市消化量八割五分~九割 とろろ・おぼろ・元揃だし
             製造業者 二七〇余戸  板 酢昆布  名産「大阪昆布
           尾札部昆布昆布中最高価ノ優良品  要望 1三等以下ニ品質ノ良キモノヲ入レルヨウニ 2一、二、三等混同入札ニ附セズ等級別入札ノ試ミヲ望ム 3取扱上、皮昆布ノ損傷ナキヨウ 4ポンポンは別にポンポン用昆布を付けられないか 5三等以下の木直・古部昆布を島切結束に改束できないか 6一定検査の前に臨時検査を行い、他地方産の入荷前に問屋の手元に入るようにしたら生産者の利が多くなると思料する。
            尾札部産を主とし第一に三等品を加工する。次いで二等品を用い、品切れのところを利尻、樺太湾内、臼尻産を代用する。
            一等品 元揃・板・昆布
            二・三等品  とろろ・おぼろ・塩・酢昆布
            昆布茶、塩昆布は元揃の切尾の良いところを混入
            商品「元揃昆布」両端の耳を切りおとし、幅五寸・長さ一尺位に折り 結束  百匁刻七〇銭売
            「とろろ」一・二番は百匁五〇銭~六〇銭
            「おぼろ」百匁七〇銭
            尾札部、六月上旬、拾い昆布の見本に大阪着値百石五、〇〇〇円を付値せり。
神戸市
               尾札部産のものは大阪問屋より少量仕入れているだけ。
後藤昆布問屋         尾札部産の高価品は需要少なく大衆向けの青森、日高産もの。
野村製造販売業者       上品として北見・樺太湾内・臼尻椴法華尻岸内産を用いている。
          昆布問屋・加工製造業の看板の手前、尾札部産の昆布一把の手持ちもないと顧客に断ることも出来ないので、木直もの二、三等品を二、三〇梱仕入れ、業者それぞれ一梱位ずつ手持ちしているのが現状である。上品で百匁五〇銭位で販売
尾ノ道市
三好昆布問屋         神戸に同じ
               青森・樺太・日高・椴法華尻岸内・戸井産多量に入荷
               尾札部産の上品は僅少
               小売・百匁四、五〇銭位
広島市
本昆布問屋         主に戸井・尻岸内椴法華産のものを料理店宿屋「だし」用
               日高三場所産のものを大衆家庭用
               尾札部産の高価ものは僅かに見舞品・中元贈答品に用いる
               「とろろ・おぼろ・塩昆布」百匁四、五〇銭を最高限度とする。
               尾札部産の高価な上品は「絶対加工セザルナリ」
山口市
県水産会  会長 浜田    県内昆布の嗜好は相当多く、消費量も多量であるが高価な上等品は適せず
               青森・南部産・日高産の安価な薄皮のものを煮昆布として常食する。
               「上等品は試食したることなきが如し」
下関
有岡昆布問屋         下海岸・利尻・青森産のものを「だし・とろろ・塩・酢・板」
               尾札部産の如き最上品は二〆匁束八把梱を二、三梱仕入れると消化に半年かかる。
門司市
小見山昆布問屋
下関
大阪屋門司支店
博多市            「とろろ・おぼろ・塩・板昆布
豊田昆布問屋         主に尻岸内椴法華・利尻・樺太湾内・日高・青森産を用いる
               尾札部産は年間一五〇~六〇把加工するのみ
               尾札部産に多くの利尻ものを混入し百匁六〇銭位で小売する
熊本市
大阪屋            九州における元揃昆布の需要地なり
               「だし昆布・とろろ・おぼろ・塩・板」
               多く利尻・樺太・下海岸・臼尻・鹿部・青森産のもの
               尾札部産は僅かに贈答品として珍重するのみ
 
鹿児島市
大阪屋船津昆布問屋      市中、昆布問屋製造加工業一店のみ
               尾札部産高価品は需要皆無
               「だし・酢・煮生昆布」として大衆向需要は多い。
               仕入先は主に広島市辻本問屋
京都
伊勢久荒木昆布製造販売店   尾札部産は一部で、主に尻岸内椴法華・戸井・石崎・日高産なり 樺太産も用いる。
               尾札部産は「元揃」とし
               大衆向は「とろろ・おぼろ・塩・酢・板」
               大阪は上品を常食とするが京都は割安のものを用いる傾向なり
竹屋町上ル二九代目      宮内省上納品は川汲産のもののみ
小島文右衛門製造販売店    「宮内省御用品は産地より直送のこと願はしきものなり」
               川汲検一等品より僅かに二、三枚より用いられず、輸送中、皮昆布が損傷することは残念なり
               上納量は年に約三〇貫匁位
昆布問屋          下海岸・利尻・樺太湾内・青森産のものを用い
昆布問屋          「だし・煮・塩・酢・とろろ」
名古屋市
川島昆布問屋         尾札部川汲産は僅少 五〇貫匁程
               桧山・下海岸・臼尻・鹿部・樺太・利尻・木直・古部産
               「だし・とろろ・塩」
          函館市 サ印佐藤・〓小林問屋より仕入れている
               ※古部産「しほこし昆布」は最も多く捌かれている。
               木直産も島切として移出したらどうか、また尾札部村内を第一、二、三、四の四口に区分し、共同販売方策を樹てると名古屋商人も入札に参加し、生産価格の保持に裨益せんと。
静岡市
市役所            昆布問屋なし。乾物問屋で取扱う 勧業課長
               「だし昆布・巻昆布(昆布巻)・煮昆布
横浜市
足立昆布加工問屋       市民は昆布を嗜好せざる所、「だし昆布」より安い鰹節を用いる。
               下海岸・利尻・臼尻産で「板・青板(鰊巻)」
               尾札部産は年間僅か一、二梱(一梱一六貫)位のみ
東京市
石井製造販売店        「だし・とろろ」に下海岸・利尻または樺太・青森産
               尾札部産は「元揃・板」を贈答品とし、上流階層で「だし」用に用いるに過ぎず。
山城屋昆布