函館市/函館市地域史料アーカイブ

南茅部町史 上

第一編 郷土の自然

第三章 生物

第二節 海藻

南茅部町沿岸の環境条件―海流と水温

 前述のように、海藻の地域分布(水平分布)を決める主な条件は水温である。そこで問題になるのは海流の状態と水温の変化であろう。
 日本海を北上した対馬暖流は津軽海峡西口付近で二分し、その一つが海峡を東へ進む。この流れは下北半島の先端をかすめ東北地方沿岸の沖合に消えるが、最盛期には噴火湾および襟裳岬辺りまで勢力を広める。一方、オホーツク海から釧路、襟裳岬を南下する千島寒流は、汐首岬付近及び噴火湾に影響を及ぼす。このように暖寒両流の影響下にある海域では、距離的に近い海域にもかかわらず水温の差が大きく、これにともなって、生育する種類の変化も当然大きいことが予想される。
 今、津軽海峡北海道側の海藻を例にとって海流の影響を見ると、次のようになっている。
 松前から白神岬辺りまではハイミル、イシゲなどの暖流系の種が多く、寒流系の種は見られない。白神岬から函館を通り汐首岬に至る間は、東進するにつれて暖流系の種が減少し、それに代わって寒流系の種が出現してくる。すなわち、この間は暖寒両流系の種が混生すると同時に、暖流種が寒流種に置き換えられてゆく海域と見ることができる。汐首岬から恵山岬を回って南茅部町沿岸に至る海域にはヒバマタ、エゾイシゲ、ハケサキノコギリヒバのような寒流系種がごく普通に生育し、寒流の影響が強いことを示している。したがって、南茅部町沿岸は、襟裳岬以東の完全な寒流海域への移行地域、と見ることができるであろう。
 水温の状況を表面水温でみると、最低は三月の二~三度、最高は八月の二〇度前後で、この間を変動している。しかし、一〇メートル層、二〇メートル層では、四月下旬から八月上旬頃にかけてかなり低目に経過していることに注意する必要があろう。海藻が実際に生育している水深の水温を把握することは、海藻の生態を知るうえでも有用海藻の増養殖管理の点からも重要なことである。コンブのように比較的深い所に繁茂する種を扱う際には、表面水温に惑わされないようにすることが特に肝心であろう。
 南茅部町沿岸の地形は比較的出入りが少なく直線的であるため、各地先特有の水温変動はなく、全沿岸ほぼ同じ変化を示している。