函館市/函館市地域史料アーカイブ

南茅部町史 上

第一編 郷土の自然

第三章 生物

植生概説

海岸地帯(市街地を含む)

 海岸線は太平洋に面して約三六キロメートルにわたっている。南東部の屏風岩付近から尾札部付近にいたる約一五キロメートルの間は、亀田山脈から斜降する山地が直接汀線に迫って三〇~八〇メートルの懸崖を発達させ、獅子鼻岬、立岩岬などの奇岩のそそり立つ海岸風景を形成している。したがって、植生も海辺性よりは山地性、内陸性の目立つ環境が多い。北西部の黒羽尻岬、岩戸、豊崎方面の崖地は断続的で、また、後背地に耕地化の進んでいるところが多いこともあって、山地性より草原性、荒地性などの人里植物が目立っている。
 崖地肩部の植生は後背地の地形や植生によって若干のちがいはあるものの、一般には、
  ヤマハンノキ、カシワ、ミズナラ、イタヤカエデ
などの木本に被われ、矮生化、風衝形をなすものも多い。また、
  イワガラミ、ツルアジサイ、クズ、ツタウルシ、ツルウメモドキ、ヤマブドウ、サルナシ、マタタビ
などの蔓木の垂下もみられる。
 崖地基部の崩落堆積地には、ヤマハンノキ、イタヤカエデなどの小径木もみられるが一般に低木が多い。すなわち、
  ハイネズ、イヌコリヤナギ、ノリウツギ、ノイバラ、ハマナス、タラノキ、ヤマウルシ、ヌルデ、ミツバウツギ、エゾニワトコ、タニウツギ
などである。草本には、
  カズノコグサ、キタヨシ、オオイタドリ、オニシモツケ、アマニウ、エゾニウ、エゾノヨロイグサ、オオハナウド、エゾクガイソウ、エゾゴマナ、シラヤマギク、エゾオグルマ、ハンゴンソウ、ハチジョウナ、コウゾリナ、エゾノキツネアザミ、オオヨモギ
などの高茎草本が多く、特にオオイタドリは普遍的にみられ、大小の群落を形成している。
 崖地肩部から地表水または地下水の流下、浸出しているところも随所にあって、その斜面や基部には
  タヌキラン、コウガイゼキショウ、アオコウガイゼキショウ、タチギボウシ、エゾカンゾウ、ノハナショウブ、オオバタネツケバナ、ミツバベンケイソウ、ダイモンジソウ、キツリフネ、コケオトギリ、エゾミソハギ、アカバナ、オオサクラソウ、ユキワリコザクラ、オオバミゾホウズキ、ミヤマニガウリ
などの好湿性の草本がみられる。
 海に突きでた岩場などの環境には矮生化したカシワ、ハマナスなどの小群落が散在し、その間に、
  ハイネズ、ラセイタソウ、ハマツメクサ、キリンソウ、ハマゼリ、コハマギク
などの岩隙植物が大小のコロニーをつくり、また、
  エゾスカシユリ、エゾアサツキ、エゾマンテマ、エゾイヌナズナ、ハマハタザオ、マルバトウキ、エゾオオバコ、マツムシソウ、アキノキリンソウ
などもそれぞれのところをえて咲ききそい、最も海辺らしい植物景観を呈する。このような比較的安定した岩場の植生を四季別に観察すると、まず早春にはオオサクラソウやユキワリコザクラの淡紅の花々にキクザキイチゲの白花がまじって春風に揺れ、初夏にはノハナショウブの紫花に橙黄色のエゾカンゾウが群生して崖下を飾る。盛夏ともなれば黄金色のキリンソウがまぶしいほどに岩壁を埋め、その中にエゾスカシユリが朱紅色の大きな花をもたげて点々と立ち、ヒロハクサフジは紫の花房をもたげてはいまわる。晩夏には淡紅のカワラナデシコや白いノコギリソウ、黄花のアキノキリンソウが代わって登場し、やがてススキの穂が真珠の純い輝きをみせる頃、岩場のあちこちはコハマギクの白い菊花の群れに埋められ、晩秋の最後を飾るフィナーレが奏でられる。