函館市/函館市地域史料アーカイブ

椴法華村史

第六編 交通・通信・灯台

第三章 港湾

第一節 江戸時代から現在まで

二 明治以後の椴法華

 こうして村民からの陳情は道庁の認めるところとなり、昭和七年実地調査のうえ元椴法華(現在の元村)に船入澗が建設されることになった。当時の新聞はこの時の様子を次のように報じている。
 
    昭和七年六月廿五日  函館日日新聞
     椴法華船入澗、道廳實地調査
   亀田郡椴法華村は純漁村で生産額卅六万圓を有してゐるが船入澗を築設せばこれの倍額の生産高に達せしめ得る見込み充分ある所から今回船入澗築設申請を道廳になし中村港湾課長が近く實地踏査することになった。
   元椴法華船入澗(昭和九年渡島支庁管内水産業概要より)
   工事着手 昭和七年十月
   竣工期日 昭和九年七月二日
   工費(国費)六万円
  被覆面積 九千平方米
  防波堤長 百十五米
   水深 防波堤附近 四米内外
       護岸附近  三米以下
 
椴法華小漁港の改良
 昭和九年七月、椴法華小漁港東防波堤百十五メートルは完成されたが、この漁港はこれで完成されたわけではなく、この他に何度かの改善工事が望まれていた。この主なるものを上げてみると次のようである。
・昭和十年の要求
 昭和十年十二月二十一日北海道會議長村上元吉から北海道廳長官佐上信一宛に提出された議会の意見書に「左記小漁港ニ對シ更ニ補修工事ヲ施行セラレンコトヲ望ム」として椴法華小漁港の名があげられる。このときの意見は道庁の認めるところとなり、一部捨て石等の事業が行われる。
・昭和十二年度道費五百円により捨石工事を実施
 昭和十二年六月椴法華小漁港、港口より西北へ四十メートルの箇所に存在する百平方メートルにわたる大暗礁及び港内の大岩石の除去を陳情したが認められず、更に十一月この大暗礁上に防波堤の築設を要望するがこれも認められるところとはならなかった。
・昭和十四年三月、本漁港に避難する漁船が増加したが、これにともない港口より四十メートルの暗礁にふれ遭難する船が続出し、椴法華村は、このことを理由に、再度この暗礁上に防波堤を築設することを陳情するが認められず。
 この時椴法華村長上村浩太郎より道庁その他関係機関に提出された陳情書を次に記す。
 
     陳情書
    小漁港ニ防波堤築設方陳情
   本村字元村小漁港ハ昭和七年度以降農山漁村振興事業費ヲ以テ昭和九年度ニ第一期工事トシテ築設セラレ爾来東風ノ激浪ハ防除セラレ漁民ハ本漁港ヲ利用シ其ノ恩恵ニ浴シツゝアリタルモ近時本村地方ニ於ケル漁業ノ趨勢ハ沿岸漁業ノ衰頽ニ伴ヒ沖合ニ進展シ漁具漁網ノ改良ト共ニ小型發動機船ハ大型船ニ改良サレ或ハ資本ノ合併強化等ニヨリテ漸次規模ヲ拡大セラレツゝアルハ顯著ナル事實ニシテ殊ニ沿岸町村ヨリ本村沖合ニ出漁ノタメ集合スル漁船ハ累年増加ヲ示シ柔魚・鱈・鰮ノ盛漁期ニ於テハ時ニ其ノ數激増シ而シテ九月ヨリ十二月ニ至ル間ハ海上最モ風激シク一度荒天ニ遭遇スルヤ各漁船ハ先ヲ競フテ本漁港ニ避難セムトスル實情ニシテ其ノ利用日ニ月ニ増加ヲ加ヘツゝアル䖏ナルガ然ルニ本漁港ハ防波堤突端ヨリ西北方ヘ約四十米突ノ箇所ニ更ニ西北方ヘ渉リ約百平方米突(干潮時ニ於テ水面下約一米突)ノ一大暗礁アリテ、コノ暗礁ニ遭難船頻出スルノ惨事ヲ呈シ之カ救済防護上ヨリ見ルモコノ暗礁上ニ防波堤築設セラルゝコトニヨリ本漁港ノ利用價値ヲ嵩メルト共ニ漁船ノ避難ヲ迅速且ツ容易ナラシメ延テハ本村漁業者ノミナラス本地方沿岸漁村民ノ福利ヲ増進シ漁村振興ニ寄與セムトスル次第ニ候ニ付キ速ニ第二期工事トシテ該暗礁上ニ防波堤ヲ築設セラレムコトヲ要請スル次第ニ候條右事情御明察ノ上急速ニ之カ實現ヲ期セラルゝ様御高慮相仰度玆ニ謹テ陳情仕候
   昭和十四年三月六日
     亀田郡椴法華村長 上村浩太郎
 
・昭和十五年椴法華村長高柳良雄、国費による大漁港の築設を関係機関に陳情するが認められず。

昭和15年7月15日の台風により大破した椴法華港防波堤

・昭和十五年七月十七日、前椴法華村長高柳良雄と新村長伊藤國平との間で引き継がれた「事務引継書」によれば、次のごとく記されている。
 
   國費大漁港築設方陳情ノ件
  本村ハ太平洋ニ面スル一大魚田ニシテ内地及近海他村ヨリノ漁船モ入港シ且ツ本村亦六十余艘ノ発動機船ヲ有シ将来大イニ海田ノ開発ニ努力水産業ノ発達ニ寄與スベキ地ノ利ヲ有スル処ナルヲ以テ本村内ニ一大國費漁港ノ築設ヲ陳情中ナレバ之レガ実現スベク努メラレ度
 
・昭和十八年五月、元椴法華村長伊藤國平と新椴法華村長谷内久吉の「事務引継演説書」によれば、国費による大漁港の築設と船入澗修築の件について陳情中であることが記されている。戦時下非常時態の中で実現されそうもない希望を敢えて陳情しているということは、村民が特に強く希望していることであったからであろう。事務引継演説書の中から関係部分を次に記すことにする。
 
     引継演説書
  (三) 國費大漁港築設ノ件
   本村ハ太平洋ニ面スル一大漁(ママ)田ニシテ内地及近海ヨリノ漁船モ入港シ且ツ本村又数十艘ノ発動機船ヲ有シ将来大イニ海田ヲ開発シテ水産業ノ振興に寄與スベキ地ノ利ヲ有スル處ナルヲ以テ本村内ニ一大國費漁港ノ築設ヲ陳情中ナレハ之レカ實現ニ御努力セラレ度。
  (五) 船入澗修築ノ件
   字元村ニ船入澗アルモ数度ノ災害ヲ受ケテ破損甚敷ヲ以テ函館土木現業所長ニモ陳情シアルヲ以テ之レカ實現ニ御努力アリタシ。