函館市/函館市地域史料アーカイブ

椴法華村史

第四編 行政

第四章 昭和時代の行政

第二節 新しい行政体制

二 椴法華村の再出発

 昭和二十五年十二月の『地方行政組織調査会議』の勘告に基づき、昭和二十八年九月一日法律第二百五十八号『町村合併促進法』が制定された。この法律の目的とするところは、弱小町村を合併することにより地方自治の充実を図ろうとするものであり、
 一 町村規模の拡大による地方自治の強化
 二 町村制度の基礎固め
 三 行政の能率向上
 四 その他
 などをねらいとしていた。またこの法律は昭和二十八年十月一日より昭和三十一年九月三十日までを有効期限としており(時限法)具体的にはこの間に小規模村(人口八千人未満)を合併させ、全国の町村数を約三分の一に減少させることを目的としていたのである。このような政府の方針に基き昭和二十九年一月ころより、椴法華尻岸内・戸井の三村合併の方針が道庁から打ち出され、本村においてもこれ以後合併問題が熱心に論議されることになった。
・合併促進法の説明会
 昭和二十九年二月二十三日午後、町村合併促進法説明会が椴法華村役場会議室で開催され、渡島支庁職員より合併についての説明がなされる。
 出席者
 渡島支庁 川端総務課長、滝川地方係長、地方係藤沢主事
 椴法華村 松坂村長、長政助役、主任全員、村会議員、各委員会委員、各種団体長、計四十名
 この日初めて町村合併問題が、渡島支庁より正式に村民代表に投げかけられ、(椴法華尻岸内・戸井の各村の代表者には予め一月頃より連絡あり)数日を経ずして村内はこの話しで持ちきりとなる。
・特別調査委員会の設置
 昭和二十九年九月八日臨時議会が開催され、この日松坂村長から『渡島支庁より合併計画に対する意見を求められたが議会の意向はどうか』という質問が出される。これに対し議会はいろいろ討議を重ねたが、十分研究しなければ回答できない、賛否の答申は日限内に出来ないので猶予して貰うという意見に決まる。
 更にこの日議会は討議を続け、特別調査委員会の設置が必要であるという意向になり、同委員会の設置を決定し、村長は町村合併に関する告示を出すことになった。
 
  椴法華村告示十六号
  町村合併促進法竝に北海道町村合併促進審議会の答申に基き北海道知事は、本村及尻岸内村竝に戸井村、三村の合併計画を策定し且つ本村はこの計画に対し意見を求められたので、町村合併促進法第十条第一項の規定により告示及公示及公表する。
  昭和二十九年九月八日
                     椴法華村長 松坂幹太郎印
  町村合併調査委員会委員
 川口玉造・香川喜三郎・佐々木正次郎・小寺玉太郎・中村泰三・中村岩雄
 
・町村合併促進の状況
 昭和二十九年の始めから町村合併について渡島支庁より示された訳であるが、その後の渡島支庁及び各村の状況はどのようなものであったろうか。
・道による合併計画の策定
 昭和二十九年始めより、椴法華村・尻岸内・戸井村に対して合併することを奨励してきた道庁は、九月十九日に至って正式に合併計画を策定してきた。
 
   昭和二十九年九月十九日
     北海道知事       田中敏文
   北海道における町村の規模の適正化の促進を図るため、地方自治法第八条の二の規定により、北海道町村合併促進審議会の答申を基礎とし(中略)町村合併計画を次の通り策定する。
       渡島支庁管内
            戸井村
            尻岸内
            椴法華
 
 道総務部より各村の合併促進状況について質問を受けた渡島支庁は、十一月八日次のような回答をしている。
 
   戸井村尻岸内村は何れも合併に対する特別に組織を結成していないようであるが、尻岸内村は道の計画による合併に賛意を表し村長等も積極的な意向が見える。戸井村は住民の一部に合併反対の声があるやに聞くが村長・議会ともに意思表示を明確にせず一応日和見的態度にあるが反対ではない模様である。
   椴法華村は合併委員会を議会で組織し調査研究の段階にある。
 
 その後関係の三村は、力を合わせてこの問題に取り組むようになり、昭和二十九年十一月二十九日午後一時から尻岸内村役場において三村合併懇談会を開催し、各村代表により研究促進の組織を結成するに至っている。
・村議会の審議
 昭和二十九年十二月、椴法華尻岸内・戸井の三村合併について、村議会において賛否両論に分かれて討議されたが、結論的に、
 ①合併により住民の負担が重くなる。
 ②施設面でこれから建設するものがない。
 ③住民の意見を聞いていない。
 等問題も多く、研究不十分でもあり、また住民の意見が反映されていないところから、議会では結論を出さずに持ち越されることになった。
渡島支庁への解答
 昭和三十年春、渡島支庁から合併時期その他について質問を受け、三月十四日付で椴法華村は次のように支庁へ回答している。
 
  一 合併予定時期     未定
  二 合併促進を阻害している事情全般
   イ 地形的な特殊事情
  戸井・尻岸内の二村は地続き平坦なれども三村間の延長距離十二里余にして交通上甚だ不便多く尚戸井・尻岸内と当村は山道二里余りの間人家なく冬季間積雪の為交通途絶の日が多く、陸の孤島の如く極めて交通不便である。
   ロ 住民感情の不一致
  地理的条件から三ケ村住民の感情一致せず合併の後に於ても村政の上に悪影響を残すこと必定と思われる。
  三 右に対する町村長としての意見
   イ 地理的事情及住民感情を充分考慮しない合併は到底住民の福祉増進を望み得ないと思はれる。
   ロ 三ケ村の合併は十二分に村民の意志を尊重せられたい。
 
・村民の合併反対
 議会ではその後更に合併に関する審議を慎重に続け、村民もまた真剣にこの問題に取り組んだが、全体的に合併反対の空気が強かったようである。
 このような気運の中で、昭和三十一年四月八日、椴法華小学校運動場において町村合併協議会が開催され、賛否両論に分かれ、意見がたたかわされたが、合併は村民の利益にならず、ゆえに合併せずとの意見が大勢を占め、合併は見送られることになった。
 こうするうちに時が過ぎ『町村合併促進法』の期限である昭和三十一年九月三十日となり、この法律は効力を失うことになった。しかし町村合併の問題は無くなったわけではなく、新たに『新市町村建設促進法』(施行期間昭和三十一年六月三十日より昭和三十六年六月二十九日まで)に引き継がれることになった。
・合併問題の再燃
『新市町村建設促進法』の説明会について次のような資料が残されているので次に記すことにする。
 
 昭和三十一年九月一日、渡島支庁より各町村宛に出された文書による。
   新市町村建設促進法の説明会開催について
   町村合併促進法は来る九月末日をもつて失効するのでありますが合併市町村の育成に関する法律(新市町村建設促進法)が去る六月三十日法律第百六十四号をもつて公布になり一部の規定を除き直ちに施行されたのでありますがこの法律の施行を機会に未合併町村民に対し法律制定の趣旨及び法律の内容等について説明する必要があると思料されますので左案により措置してよろしいか伺います。          (以下略)
 
 この説明会は昭和三十一年九月六日十一時三十分より椴法華村役場で行われたが、その内容を要約して記すことにする。
   新市町村建設促進法説明会 椴法華
   椴法華村六日十一時三十分-午後一時
  一 村長挨拶
  二 阿部係長説明
  三 質疑
   1 赤字団体に対する国の救済方法はどうか。
   2 赤字団体と黒字団体が合併した場合赤字団体の負債を平等に黒字団体が負担しなければならないか。
   3 合併後潜在赤字が判明し紛争を起こすおそれはないか。
   4 なされるべき事業は殆んど完成している。
・合併の再勧告
 昭和三十二年三月三十日、町村合併の法令改正により再度、町村合併の勧告を知事より受ける。
 
    勧告書
     亀田郡    戸井村
     亀田郡    尻岸内
     亀田郡    椴法華
  新市町村建設促進法第二十八条第一項の規定により、北海道新市町村建設促進審議会の意見をきき、内閣総理大臣に協議して別紙のように貴市町村に係る町村合併に関する計画を定めたので、これに基づき、町村合併を行うよう、同法同条同項の規定に基づき勧告する。
   昭和三十二年三月三十日
   北海道知事     田中敏文印
 
 以上の条文の勧告がなされ、一応の終結をしていた合併問題は再燃することになった。このため議会は慎重に審議を続け、更に村民の意向を知るために各部落別に懇談会が開催された。
  昭和三十二年五月二日
    銚子・浜町二 川口与吉宅
   五月三日
    浜町一・八幡町 村民会館
   五月四日
    島・富浦   村民会館
   五月五日
    元村   佐々木友太郎宅
 この結果、村民及び議会の方針は以前と変わることなく、また戸井村においても村民の合併反対の意見が強く、ここに町村の合併は再度見送られることになった。