函館市/函館市地域史料アーカイブ

恵山町史

第1編 自然

第3章 自然災害

第4節 火山災害評価と防災対策

 恵山火山では、前述のように、恵山溶岩円頂丘で将来小規模な水蒸気爆発が起こる可能性がある。このような活動が再開した場合、おおよそ次の諸現象が起こると予測される。
 
(1)火山岩塊・火山礫・火山灰の放出
 火山岩塊・火山礫は火口から約10メートル〜500メートル以内に落下。火山灰は噴煙柱(高さ最大2000〜4000メートル)となって噴出し風下側に降灰。降灰堆積量は火口から半径2キロメートルで最大2〜5センチメートル程度。
 
(2)円頂丘または火口壁の一部崩壊
 岩屑流または泥流が発生、その流路は噴火地点によって異なるが、恵山“火口原”〜スカイ沢、タカノス沢〜御崎地区、椴法華村水無沢〜水無恵山岬地区および元村地区が想定される。
 火山灰が山頂付近を厚く被覆した場合も、降雨により二次的な泥流が発生し、上記地域が泥流被害を受けることが予想される。降灰分布によっては、椴法華側の八幡川その他でも二次泥流が発生する可能性がある。
 
 以上のような活動が発生した場合、被害想定としては次のような事項が考えられる。
 
(1)火口付近における落下物と火災発生
 落下物による災害は噴火地点から半径500メートル以内、火災発生もこの範囲内。ただし広く延焼することも考えられる。硫黄の発火点は約190℃で比較的低いので注意を要する。
 
(2)火山ガスによる窒息
 硫黄の燃焼熱は2200cal/gで、例えば植物油の約9400cal/gに比べると小さい。しかし、硫黄の燃焼の結果生ずるSO2は有毒ガスであるから注意を要する。さらに、火口から直接噴出する火山ガスの中にはHF、HCl、SO2、H2S、CO2が含まれ、場合によっては極めて毒性の強いHF、COが含まれることがあるので注意を要する。このような火山ガスは、空気より比重が重く低所に沿って流下する。したがって、各沢沿いでは、下流の海岸および若干の沖合まで危険区域となろう。
 
(3)降灰被害
 火口から半径おおよそ2キロメートル以内。
 
(4)岩屑流・泥流の被害
 これらの流動堆積物は、大部分が前述の沢沿いに流下する。岩屑流・泥流は破壊力が極めて大きく、流路の建造物は大被害を受ける。
 
(5)大気・水質汚染
 降灰・火山ガス等により大気汚染がやや広範囲に発生する。水質汚染としては、スカイ沢その他の河川に影響が考えられる。また、各沢から流れ出る泥流、土砂などが著しく汚染し、漁業にかなりの被害を及ぼすことが考えられる。
 
 以上の被害想定に基づき、恵山の活動状況に異常を認めるか、または噴火の危険が迫ったと判定された場合、その危険度の判断により緊急対策をとる必要がある。
 
(1)噴気・地震活動その他に異常現象を認めたとき
 恵山“火口原”への立ち入り、並びに恵山溶岩円頂丘の登山禁止。恵山火山の山麓住民への火山活動の状況についての広報活動。
 
(2)噴火発生の危険が予想されるような異常現象を認めたとき
 上記(1)の処置のほか、恵山町御崎、椴法華村元村、水無恵山岬の各地区および恵山町柏野−恵山地区のスカイ沢沿いでは、住民の避難準備体制をとる。
 
(3)噴火がかなりの確度で予測されたとき
 水無恵山岬、御崎およびスカイ沢沿いの地域住民は避難を開始する。これは、おもに泥流・岩屑流に対する避難であり、微地形を考慮し、沢沿いの危険地域から重点的に避難する。椴法華村元村地区は状況によって避難を開始する。』
 噴火の際最も避難対策の迫られる地区は、恵山岬を挟む椴法華村元村地区の46世帯、142人と、恵山町御崎地区の84世帯313人(1996年現在)であろう。しかし、両地区を繋ぐ道道は岬で分断されている。地元町村はトンネル建設を道に再三申請しているが実現の見通しは立っていない。
 恵山町では万一の場合、海上からの救助を想定し、救助船の確保、救命胴衣の配布などの避難態勢を整備する。恵山漁協には漁業無線基地があり、出漁漁船の協力を得られるという(小池、1998)。