函館市/函館市地域史料アーカイブ

恵山町史

第1編 自然

第3章 自然災害

第4節 火山災害評価と防災対策

 荒井(1998)はハザードマップ(火山災害危険地区予測図)編成に際して、重要な項目の1つに初期条件の設定をあげている。第1章および本章の火山災害実績図で示したとおり、恵山ではEs-6噴火のような火口原にしか堆積物を残さない小規模の噴火から、現在の元村地区や柏野地区を形成した元村噴火のように、既存の地形を大きく変えてしまうほど大規模なマグマ噴火まで、さまざまな噴火現象を経験している。
 すなわち、将来発生する噴火現象やその規模の推測も多岐におよぶことが考えられる。しかし、初期条件を決定しなければ危険区域の設定はできない。中でも、火砕流および火砕サージは災害度の高い火山現象であり、火口から生活区域までの距離が短い恵山では特に重要な火山現象の1つである。そのため、荒井(1998)は火砕流および火砕サージ災害危険区域、つまり流れの到達区域を予測する作業を行った。到達区域の予測は Hsu(1975)、Sheridan(1979)そして、Malin and Sheridan(1982)のenergy line / energy coneの考えに基づく方法を用いた。なお、実際の作業手順は、雲仙火山1991年火砕流においてこの方法を用いた金子・鎌田(1992)に従った。この方法で用いるパラメーターはgas thrust 高さと見かけの摩擦係数の2つのみである。見かけの摩擦係数(H/L値)は、今回の研究により求めた、各火砕流堆積物の推定発生高度と最大到達地点の計測結果に従う。なお、この手法で推測した火砕流は給源から放射線上に直進することになる。実際の火砕流は特定方向にしか流走しないことが知られているため、実際の災害危険区域の線引きにはその点も考慮する必要がある(宇井、1997)。また、噴煙柱を生じて発生するような火砕流の場合にもこの方法は使えない。
 恵山で確認できる火砕流堆積物および火砕サージ堆積物の見かけの摩擦係数(H/L値)は、最大で0.28(Es-4噴火)で、最小は0.08(Es-MP)この値はφに直すと、それぞれ16°5°である。この2つの値と元村噴火以降の5つの火砕流および火砕サージのH/L値の平均値0.17(φ=10°)の3つのH/L値を用いて、メラピ型あるいはプレー型(gas thrust=Oメートル)の火砕流の到達区域が推定された。噴火口は最も標高の高い恵山溶岩ドームの山頂部、最新の噴火(Es-6)と同じY火口(札幌管区気象台、1994など、通称大地獄火口)、そして、現在噴気活動が確認できる外輪山東部(W火口)の3か所を想定した。地形データーは1:25000の地形図「恵山」を、250メートル×250メートルの正方形の格子に分けて、格子点における高度を10メートル単位で読とり“Macintosh”上で“Microsoft Excel 5.0”を用いて位置とともに記録した。
 シミュレーション結果は、荒井(1998)の論文(附録)に示されており、それぞれの初期条件毎の予測到達範囲が地形図上に示されている。