函館市/函館市地域史料アーカイブ

恵山町史

第1編 自然

第1章 恵山町の地学的環境

第1節 地理的位置

 恵山町は、西南北海道の渡島半島南東部にあたる亀田半島に位置し、南は津軽海峡に面して青森県の下北半島と相対している。
 本町の緯度・経度をみると、役場所在地の日ノ浜(図1.1参照)は北緯41度47分07秒・東経141度06分42秒をしめし、北方圏の北朝鮮清津(チョンチン)、中国瀋陽(シェンヤン)およびロシアのウラジオストクや内陸部のタシケントとほぼ同緯度にある。また、北米大陸の米国ボストン、シカゴおよびカナダのトロントなどの都市と同緯度にある。

図1.1 渡島半島と恵山町の位置(北海道新聞社広告局、1996原図)

 恵山町の東端は、恵山岬付近御崎(みさき)の東経141度11分、西端は、北西部毛無山(海抜631メートル)付近の141度00分で、南端は、日浦岬の北緯41度43分30秒、北端は、丸山(691メートル)付近で北緯41度51分30秒である。
 本町は東西15.6キロメートル、南北14.5キロメートル、周囲56キロメートル、面積95.82平方キロメートル 東方にそびえる活火山恵山(618メートル)をもって亀田郡椴法華(とどほっけ)村に隣接し、北西部の毛無山、三枚岳(585メートル)および丸山の新第三紀−第四紀の火山地域は、函館市と南茅部町に境をなし西南は日浦岬を挟んで亀田郡戸井町に接している(図1.2参照)。

図1.2 渡島半島の市町村区分と恵山町域図

 本町一帯の風土的特性は、まず、地理的に亀田半島最南端に位置していることから、松前半島の上ノ国町・松前町・福島町と同様、本州東北地方に類似の温和な気候に支配されている。とくに亀田半島の南東部は、藤木(1987)の北海道気候境界区分図(図1.3)によると、冬期の積雪量50センチメートル以下の「非雪国」で、しかも沿岸部であるためシバレルという方言に象徴されるような、寒冷気候下にはない。一方、夏期は梅雨の北限線以南の地域に含まれ、東北地方的である。渡島半島における梅雨の北限線については変動が多いが、およそ噴火湾岸の八雲から奥尻島周辺と見なされよう。なお、亀田半島を含む渡島半島全域は、森林植生の上から、東北地方を代表するブナ林の平地北限(黒松内付近)以南に含まれ、土地景観の重要な要素である植生の面からみても、東北的要素が非常に強い。恵山岬における気温と降水量の特性からみて、亀田半島南東部は、最暖月(8月)の年平均気温22℃以上で高く、他方、最寒月(2月)の平均気温は、マイナス2℃で函館市のマイナス3℃より高く、江差・松前地方と同様に、道内で最も冬の暖かい地域である(井上・羽田野、1983)。また、当地域の最暖月の平均降水量150ミリメートル以下、最寒月の同降水量100ミリメートル以下で少なく、降水量配分から「表日本型気候」に属する(藤木、1987)。

図1.3 北海道の気候境界区分
羊蹄山周辺(倶知安)は漸移帯にはいる。夕張山地を除きその東側に漸移帯の境界をおくこともできる。漸移帯の境界は丘陵と山地の境界とほぼ一致する。気象資料は札幌管区気象台編『北海道の気候』(1982年版)、中村・木村・内嶋『日本の気候』(1986)その他による。流氷限界は小野(1986)による

 
 最暖月の平均気温から最寒月のそれを引いた値、すなわち月平均気温の年較差をみると、亀田半島の沿岸部は25℃以下で小さく、井上・羽田野(1983)の「気候図表」による地域類型化の「高温で年較差の小さい石狩低地帯以南の半島部」に包含される。
 周知のごとく、亀田半島を含む渡島半島は、近世において和人地ないしはその影響が濃厚だった地域である。すなわち、江戸期からみえる「恵山」の地名は、東蝦夷地箱館六ケ場所の一つ尾札部場所のうちに見いだされ、1800年(寛政12)和人地となっている(北海道地名大辞典上巻、p212)。江戸期の本町域を含む下海岸一帯は、場所請負制が広く行われた地域であり、北海道開拓史上最も古い江差・松前地方や箱館付近に次いで、和人の定住による漁村集落が形成されたところである。
 恵山は旧尻岸内町と椴法華(とどほっけ)村にまたがる地名で、この地名は活火山恵山の山名に由来する。恵山町という1985年(昭和60)から現在に至る亀田郡の自治体名は、冒頭でも述べたとおり、尻岸内町が改称して成立したもの、同町の14字をそのまま継承している。エサンの美しい響きと、潮風とつつじの香りの町。江戸期からの豊かな民話の里の知名度を生かし、最近は沿岸漁業のみならず観光振興に力を注ぎ、1986年(昭和61)を観光元年として、観光地化に力を入れている。
 渡島半島の「恵山道立自然公園」は、恵山町・椴法華村・戸井町および南茅部町にまたがり、1961年(昭和36)6月に指定された。自然公園は、図1.4に示したとおり、面積26.4平方キロメートル、恵山火山(618メートル)を中心に、山麓の海岸と温泉群で構成される。恵山火山は現在も活発な噴気活動を続ける活火山で、溶岩円頂丘の爆裂火口には多数の硫気口がある。火口原にはエゾイソツツジ・ガンコウラン・コケモモ・ヒメスゲなどの高山植物群、外輪山斜面にはフウリンツツジともいわれるサラサドウダン・ヤマツツジなどが分布し、初夏の開花期には見事な景観が出現する(口絵写真)。山麓には恵山温泉・石田温泉・水無海浜温泉などが湧出し、一部は国民保養温泉地に指定されている。海岸線には本州との最短地点の汐首岬・武井の島・日浦岬などがあり、波食地形や柱状節理(地元では通称材木岩)の絶壁など海岸美を呈する箇所が多い。亀田半島北部の太平洋岸の谷沿いには、川汲温泉・大船温泉・磯谷温泉などの温泉が湧出し、海岸では昆布干しの風景なども見られる(口絵写真)。国道278号線、道道函館南茅部(みなみかやべ)線が利用ルートとなる。

図1.4 恵山道立自然公園(北海道大百科事典、1981原図)