函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第10章 学校教育の発生と展開

第1節 近代学校教育のはじまり

2 「学制」の公布と小学校の開校

 公立小学校の経費をもう少し詳しく見てみることにしよう。「学制」における教育財政の基本的な考えは受益者負担、つまり各自の立身出世に役立つ教育に必要な費用は教育を受ける人民自らがこれを負担すべきで、この原則に基づき学校経費は先ず授業料で賄われ、不足は寄付金・学区内集金その他の方法によって学区が負担すべきものとした。
 具体的に内澗学校の場合を見てみよう。同校開設時の概算書によると、新設のための一時費640円のみを官から援助してもらい、ほかの(1)教員給料(月給8円、6名を予定)・宿直料(1夜7銭)の年額600円50銭は、町会所予備金利子収入と貸地料収入それに年額200円で5か年間払われる魁文社の寄付金で、(2)小使給料・営繕費・時々の書籍代などその他一切の年費700円は関係小区(1大区4小区と3大区1、2小区)の戸賦金(概算で月額5、60円)と生徒の授業料で賄うとなっている。つまり学校運営の経費は授業料と寄付金それに学区内集金に当たる戸賦金で成り立っていたのである。
 これに対し10年1年間の内澗学校出納状況は表10-5のとおりであった。支出の″その他″の内訳は、半紙・墨などの消耗品購入費や教材購入費・修繕費・便所掃除請負料などとなっており、特に1月は開校当初で色々な消耗品買い入れにかかり、6月は新教室増設およびそれに関係した椅子・テーブルの購入があり、12月は炭・薪などの燃料費の出費がかさんでいるため″その他″の金額が大きくなっているが、通常は20円程度だったと思われる。この表で分かるように、収入では戸賦金収入が予定額(5、60円)を常に下回り、10月以降は40円を切り減少傾向にある一方、支出では6割前後を占めていた人件費が、教員の増員などにより8月からは7割以上を占め増加の傾向にある。内澗学校の場合は魁文社からの寄付金200円が基礎資金としてあるのでまにあっているが、この寄付金がなければ、つまり授業料と戸賦金それに町会所の利子だけの収入でみると、高額な教材の購入や備品の修繕などの臨時の高額支出があると、それはそのまま赤字へつながり、学校の経営難は明らかであり、当然戸賦金増額の処置などがとられることになる。学校を経営することは、その学区にとっては大変な負担となったわけである。
 また授業料の学校経費に占める割合は、内澗学校の場合は5パーセント前後と極わずかではあるが、それを払う親にとっては、授業料の支払いに加え戸賦金も課せられ負担は増加する。1戸当たりの戸賦金の額がはっきしないため実際どれだけの金額を納めていたかわからないが、この親の負担の重圧感は函館に限ったことではなかった。そのため全国各地では就学拒否や授業料未払いなども起こった。就学の義務を強いながら授業料は受益者負担という矛盾を含んだ学制は、これらのことも一端となって改正の道を歩むことになったのである。
 
 表10-5 明治10年1年間における公立内澗学校出納表
 
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月






前月繰越金
戸 賦 金
  第16大区1小区
   〃   2
   〃   3
   〃   4
   〃   5
  第14大区4小区
町会所・魁文社出金
  予備金利子収入
  貸地料
  魁文社寄付金
授 業 料
   (月額12銭5厘)


47.126
15.626
9.500
7.000
1.500
3.500
10.000
229.167
16.667
12.500
200.000
18.625
(149)

205.773
47.155
15.655
9.500
7.000
1.500
3.500
10.000
29.167
16.667
12.500

18.625
(149)

237.566
45.407
15.007
9.300
6.400
1.400
3.300
10.000
29.167
16.667
12.500

18.500
(148)

246.097
44.462
14.988
9.300
5.900
1.400
3.300
9.574
29.167
16.667
12.500

18.375
(147)

266.155
42.234
13.150
9.300
5.410
1.400
3.300
9.674
29.167
16.667
12.500

18.250
(146)

273.903
43.129
14.000
9.300
5.410
1.400
3.300
9.719
29.167
16.66
12.500

18.375
(147)

270.771
42.216
13.161
9.300
5.350
1.400
3.300
9.705
29.167
16.667
12.500

20.750
(166)

270.751
42.355
13.350
9.300
5.350
1.400
3.300
9.655
29.167
16.667
12.500



268.620
42.093
13.250
9.300
5.350
1.400
3.300
9.493
29.167
16.667
12.500

19.625
(157)

284.308
39.717
13.135
8.700
5.150
1.000
3.300
8.432
29.167
16..667
12.500

19.625
(157)















282.975
38.856
12.321
8.700
5.170
1.000
3.300
8.365
29.167
16.667
12.500

20.375
(163)
小   計
294.918
300.72
330.64
338.101
355.806
364.574
362.904
342.273
359.505
372.817
371.373



人 件 費
  教員給料
  宿直料
  小使い3名給料
  裁縫教員給料
定期試験褒賞買入代
そ の 他
48.320
33.000
1.820
13.500


40.825
48.460
33.000
1.960
13.500


14.694
50.170
33.000
2.170
15.000


34.373
50.100
33.000
2.100
15.000


21.846
50.170
33.000
2.170
15.000

10.280
21.453
50.100
33.000
2.100
15.000


43.703
55.170
38.000
2.170
15.000

8.350
28.633
55.450
38.000
2.170
15.000
0.280

18.203
56.350
38.000
2.100
15.000
1.250

18.847
57.670
38.000
2.170
15.000
2.500

16.767






61.670
42.000
2.170
15.000
2.500

37.428
小   計
89.145
63.154
84.543
71.946
81.903
93.803
92.153
73.653
75.197
74.437
99.098
残    高
205.773
237.566
246.097
266.155
273.903
270.771
270.751
268.62
284.308
298.38
272.275

 明治10年「公立学校出納表」(北海道立文書館蔵)より作成
 教員給料内訳:1~6月は月額9円1名・月額8円3名、7~10月は月額9円1名・月額8円3名・月額5円1名、12月は月額9円4名・月額6円1名
 11月分は史料が欠けている
 授業料の( )内は生徒数を表す