函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第5章 近代港湾の生成と陸上交通の整備

第3節 倉庫業

7 函館商人と産業資本

 では、商人がどのように倉庫を利用したのか、その具体的な取引の例を『函館区史』が、次のように示している。
 
一、(入庫)回漕店、荷受主に代って、貨物を倉庫に寄托、倉庫発行の仮証券を受取って、この旨、荷受主に通知。
二、荷受主、この貨物の船荷証券運賃を持参、回漕店に運賃を支払い、倉庫の仮証券を受取る。この貨物が荷為替付なら、その金額を銀行に支払い、船荷証券を受取る。この銀行が荷受主の取引銀行の時は、この荷為替を地為替に振替えうる。
三、(出庫)在庫貨物が、銀行に質入れされている場合、貨主はまず回漕店に至り船積の手配をし、銀行に来て、借入金、内入金を支払って質入証券もしくは内入認書を受取り、これを以て、倉庫から貨物の庫出をする。
四、(在庫貨物売買)在庫貨物が質入れされており、質入証券が銀行にある場合。売主は買主より時価の80パーセントの支払を受け、銀行から質入証券もしくは内出承認書を受取り倉庫に至り、右の貨物の受渡を行う。

 
 以上の取引が通常であるが、倉庫業者は信用ある商人に対して時として便宜を与えることがある。その弊害を『函館区史』は次のように指摘する。
 
然るに倉庫業者も信用ある商人に対しては、時として変則の手続をなして便宜を与え、殊に銀行の休日其他業務時間外に於て、至急庫出を要する場合の如きは、担保若しくは、供託金を提供せしめ、倉庫は銀行に対し、自ら責任を負いて、倉出しを許す等の事ありしも、其事の信用ある商人のみに対して行わるる間は、亳も不都合を生ぜざりしが、遂に往々之を濫用するの傾を生じ倉庫によりては其不良なる使用人の専断により、担保も取らず、銀行よりの内出承認書をも要せずして、内客に貨主に内出を許すものあり、俗に之を時貸と称す。或は輸入の場合、荷為替の支拂の済まざる前に倉出しを黙許し、或は在庫貨物売買の場合にも、さきに売主に対し発行せし該預証券及び質入証券の回収を怠る等種々の情弊を生じ、銀行業者も又注意を怠り、専ら対物信用に重きを置き、対人信用を軽んじて貸出をなせしより、倉庫破綻其他種々の弊を見るに至れり。然れども之が為め爾後各自の注意を喚起し、大に改良を加えた