函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第4章 都市形成とその構造

第2節 市街地の機能構成

1 地価と土地生産性

 函館における地価改正の具体的な作業は地主総代人の選挙から始まった。それは、明治11年4月15日付の各大区戸長への「今般市街地価改正ニ付テハ地主総代人トシテ毎一大区両人以上左之条款ニヨリ撰挙可申出此旨相違候事」(明治11年「御達留」)という達しにより、4条の規程内で選ばれることになった。その規程とは、各大区に本籍を持ち、21才以上で500円以上の土地を有するものという条項に代表された。当初の構成員は14大区地主総代小林重吉、中村兵右衛門、鑑定人上田武左衛門、井上喜三郎、15大区地主総代牧田藤五郎、松代良吉、白鳥宇兵衛、鑑定人浜中伝三郎、亀井勝蔵、16大区地主総代佐々木忠兵衛、近江勇蔵、斉藤又兵衛、鑑定人永田宇兵衛、佐々木与兵衛であった(明治11年5月12日「函新」)。これらの人たちは有力商人であるばかりでなく、町総代人などの公職を経験している人たちであった。
 このような地主総代、鑑定人の地租改正調査は「市街地位等級調査順序心得書」の地位等級ノ事(第1条)、地価ヲ算スル事(第2条)、地価表ヲ製スル事(第3条)によって指示されており、その内容については次のとおりである。
 
          市街地位等級調査順序心得書
        第一条      地位等級ノ事
第一節
 地位等級ヲ立ルニハ先ツ市街全面絵図ニ就キ各一町限(毎宅地ヲ載セシモノ)ヲ摸写シ毎番号坪数等記入シ調査ノ順序ヲ立ツベシ
第二節
 先ツ各宅地ヲ始メトシ各町ノ等級ヲ定ムヘキモノトス
    但官有地ハ此限ニアラス
第三節
 一宅地中表裏地位ノ差ハ引分ケニ及ハス、然レトモ度外ニ表裏ノ坪数ヲ異ニシ、(譬ハ今茲ニ奥行浅ク表坪ノミヲ以テ一宅地ヲナスアリ、又ハ奥行深クシテ表坪少ク他地ノ裏面ヲ包占シ類外ニ裏地多キモノ)或ハ運搬ノ便宜ニ因リ裏地ヲ重ンスル等ノ地ハ深ク注意シテ適当ノ階級ヲ定ムヘシ
第四節
 地位ノ等級ハ地景ニ因リ限リナシト雖モ、一町内各地鰊漁彙報ノ等級ヲ分ツニ方リ僅々ノ差ヲ論シ区別セントスレハ、却テ煩雑ニ渉リ適当ヲ失スルモノナレハ、壱町限リ図面ニ就キ(本町裏町捨返リ小路等)大観シ適度ノ平準ヲ視認シ第三節ヲ参酌シテ階級ヲ立ツヘシ
第五節
 其町ノ景況ニ因リ順次ノ階級譬ハ四等迄ニ至リ五等ニ当べキ地ハ格外ノ劣リニテ是ヲ三四等ノ段階ニ比スレハ六等ニ飛越シ相当ト見認ムル歟、若シ見据ヲ得難キモノハ隣町何辺ノ地ト同等ナルヘキヲ考量シ、同種比較ヲ以決スヘキモノトス
第六節
 各町ノ等級ヲ定メテ後一等町ノ何等地ハ二等町ノ何番地ニ当ル歟ヲ椎窮シ、各等級ニ就テ其比較ヲ綿密ニシテ後各町ノ等級ヲ定メ之レヲ大観シ、彼是ノ権衡ヲ椎究スヘキモノトス
第七節
 宅地一区内ニ籠ル僅少ノ田畑ハ区別ニ及ハス、然レトモ端々ニ至リ全ク多数ノ耕地アリテ宅地ト区域ヲ異ニシ、夫レカ為メニ一般宅地、階級ニ組入レ難キモノナルカ、又ハ一区挙ツテ耕地トナシ比隣モ同ク耕地連続シ永々存置ノ景況ナルカ如キハ実地ニ就キ検査ノ上現今ノ地種ニ編入スヘキモノトス
    但四隣宅地ニシテ一時勝手ヲ以テ家宅取毀チ趾又ハ宅地ニ接シ花木等植附風致ヲ要スル為メニ設ル等ノモノハ本条ノ例ニアラス、尤望ニヨリ田畑林ヲ宅地ニスル等ハ地主申立ニ任スヘキコトモアルヘシ
第八節
 各調査了ラハ一町及ヒ一市街甲乙雛形ニ做ヒ等級表ヲ製調スヘシ
第九節
 地位ノ等級定マラサル内ハ地価ノコトヲ論スヘカラス、等級決定ノ上地価算スヘキモノトス
        第二条      地価ヲ算スル事
第一節
 地位ノ等級定マラサル内ハ地価ノコトヲ論スヘカラス、等級決定ノ上地価ヲ算スヘキモノトス
第二節
 地価ハ等級ヲ基礎トシ貸地料ト売買代価ヲ参酌シ各地ノ比準ヲ以テ定ムヘキモノトス
第三節
 一宅地表坪ト裏坪ト地位差アルトキ、裏坪ノ地価ハ表坪ヨリ若干ノ割引ヲ以テ参酌シ該地相当ノ地価ヲ定ムヘキモノトス
第四節
 市街地価ハ百坪ニ付若干ト見積ルヘキモノトス
第五節
 貸地料ヨリ地価ヲ算スルニハ、先ツ各小区内ニテ類別スル処ノ同等ナル数町ニ就テ之レ取調ヘ、地位ノ等級ヲ区分シ改正後ノ区入費(則地価百分ノ弐厘)地租(則地価百分ノ一)ノ割合ヲ以テ利子何程ト見積リ算出スヘキモノトス
第六節
 貸地料ハ前五ヶ年平均ヲ本則トナスト雖モ、実況ニ拠リ適宜斟酌スヘキモノトス
第七節
 貸地料ヨリ地価ヲ算スルニ方リ利子ハ五分マテヲ用フヘキモノトス
第八節
 売買価ハ昂低常ナラスト雖モ、凡ソ現今売買上ノ中位ト認ムヘキモノヲ取リ、各等級ヲ区分シテ取調ヘ貸地料ヨリ算スル地価ニ照シ参酌スヘキモノトス
第九節
 従前貸地料モ実際各地異同アリ、必スシモ貸地料ニノミ拘泥スヘカラサルモノトス
第十節
 貸地料売買代価トモ毎地ニ就テ取調ルニ及ハス、各町五ヶ所内外ヲ調査シ他ハ類推シテ至当ノ地価ヲ定ムヘキモノトス
第十一節
 別区域ナセル田畑林等アレハ郡村ノ調査ニ準シ地価ヲ定ムヘキモノトス
        第三条      地価表ヲ製スル事
第一節
 地価表ハ郡村ノ体裁ニ準シ、大市街ハ大区限リ其他ハ一市街限リ之レヲ製シ、宅地平均地価ハ百坪当リヲ記載スヘキモノトス
第二節
 地内ニ宅地田畑林ヲ区別シ猶其他別ニ掲ケスシテハ調査上不便ナルモノアルトキハ、適宜之ヲ区別シテ記載スヘキモノトス
    但事故ニ依リテ類外低価ノ宅地数町アルモノハ、地価表ノ外ニ通常部ト類外部トヲ引分ケタル坪数地価調書ヲ製シ、表ニ副テ出スヘシ
(明治十一年「市街改租書類」)

 
 この「心得書」の内容は、大小区制の廃止などにより一部修正されているため修正後のものとした。たとえば第1条第2節についてみれば、当初は「先ツ各宅地ヲ始各町各小区各大区ト順次ニ等級ヲ定ムヘキモノトス」という文言であった。実際には地価決定に際し、大小区制がどの程度の意味があったのかは、疑問のあるところである。つまり同条第5節にみるように、各町中にあっても等級が多様で個々の宅地にみる等級認定に、この改正の目的が存在するように思われるからである。また、地価の算出においては、貸地料と売買代価を参照しているが、どちらかといえば前者が優先しているようである。
 さて、このような調査により作成されたのが表4-8の地位等級表と表4-9の地価表である。この地租改正の作業によって個々の宅地に等級がつけられ、必然的に坪数に見合う地価が決められ、その100分の1の金額が地租として納められる体制が整備された。そしてこの改正により土地そのものが、「資産財」としての価値を今まで以上に付与されることになったのである。
 
 表4-8 函館市街各町地位等級表
 
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第1組富岡町           
                              
鍛冶町            
   
                    
旅籠町               
                       
天神町                 
                  
駒止町                   
                  
船見町                     
    
  
 
山背泊                   
               
台町                          
     
   
第2組会所町          
                          
相生町            
 
 
           
元町                 
  
 
  
  
         
寿町                  
                     
青柳町                   
             
曙町                     
                
春日町                         
 
 
     
汐見町                             
    
     
住吉町                     
     
谷地頭                             
  
    
第3組大町
 
   
                                 
仲浜町  
                                   
弁天町  
                              
西浜町  
 
                                
幸町      
                                
大黒町        
                       
鰪澗町               
                   
第4組末広町
                               
東浜町
  
                               
船場町     
                                 
恵比須町        
 
   
                   
蓬莱町        
 
       
第5組地蔵町   
                                
豊川町          
                            
西川町          
               
汐留町           
                            
宝町                   
 
     
東川町                       
  
大森                                    
   
第6組鶴岡町         
 
                     
若松町                  
 
 
            
真砂町             
                            
音羽町                          
      
海岸町                         
      
高砂町                            
 
  
大縄町                                       
 

 明治11年「市街改租書類」より作成
 
等級 百坪の
評価額
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39
40
1,100
1,000
900
800
720
640
570
500
450
400
350
300
250
225
200
175
150
125
110
95
80
65
50
45
40
35
30
25
23
21
19
16
14
12
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8
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6
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 明治11年「市街改租書類」より作成