函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第4章 都市形成とその構造

第2節 市街地の機能構成

1 地価と土地生産性

 政府は、地券発行後の、地価を決める作業への指針として、明治9年3月に「市街地租改正調査細目」を布達した。「調査細目」は全4条からなり、土地丈量(第1条)、地位等級(第2条)、地価算定(第3条)、地価表作成(第4条)などの調査項目を掲げ、その詳細を指示している(佐々木寛治『地租改正』)。北海道では明治10年12月に「北海道地券発行条例」が制定され、本、支庁に達せられた(『新撰北海道史』通説2)。函館については『開拓使事業報告』の中に明治10年6月「函館市街地位等級ヲ四十一等ト定、地価上等百坪千百円ニ起リ下等金四円ニ止メ、一月ヨリ地価ニ応シテ地租ヲ課ス」と知見できるが、実際に地価改正が行われた経緯については、次のとおりである。
 
      函館市街地改正調査済収租ノ義伺
当港支庁管内函館市街ノ義、明治五年沽券税発行以来売買等ノ為メ地価ノ昂低有之、旁十年十二月地券発行条例御達ニ基キ、地価改正調査着手可為致ノ処、其際ハ専ラ管内耕宅地調査中ニ付、同年十一月ニ至リ地位等級等調査ノ為メ、地価鑑定人及ヒ公撰ヲ以地主総代人ヲ置キ着手為致、同十月下旬粗調査了ノ際、十一月十六日鰪澗町ヨリノ火災跡道路更正ノ為メ、地所ノ変換ヲ生シ随テ各町ヘモ影響ヲ及ボシ、前等級調モ画餅ニ属シ候間、翌十二年融雪ノ期ヨリシテ右調査順序ヲ経、実地丈量ニ着手、同十一月下旬既ニ丈量モ相了リ候処、十二月六日堀江町ヨリノ大火引続道路更正ニ付テハ一層地所ノ変換モ甚タシク、且ツ改正路線ニ係ル民有地買上道路建築等旁調査場合ニ至リ兼、漸ク去十三年十月ヨリ再ヒ地主総代鑑定人ヲシテ、現場商業ノ盛衰運搬ノ便否其他諸般ノ景況等ヲ鑑査セシメ、其少シク不適当ト認ル廉ハ再調ヲ命スル等、反覆審議ノ上毎地ノ優劣ニ随ヒ地位等級ヲ区内通シテ四拾壱等トシ、上等百坪金千百円ニ起リ下等金四円ニ止マルノ地価ヲ得候、右ハ当時実際賃借上ノ利益並ニ売買ノ景況等審査スルニ、適当価格ト信認候ニ付地主一同ヘ及告示候処、毫モ異議ナク一筆限リ地価帳ヘ銘々調印相済候条、別紙新旧税比較表面ノ通本年一月ヨリ収租ノ義御允裁相成度、書類相添此段相伺候也
   明治十四年六月一日
         函館支庁在勤
          開拓大書記官 時任為基
   開拓長官黒田清隆 殿
(明治十一年「市街地改租書類」)

 

地租改正後発行の地券

 このように函館の地価改正については、「北海道地券発行条例」の達しにより調査に着手し、明治11年10月下旬に一応地位等級が出来たのである。その直後大火により街区改正が行われ、先の等級に変更が生じることになった。さらに明治12年12月の大火により街区改正が広げられるため、翌年になり再度調査をし、5月に地主総代鑑定人より区役所へ地位等級表が提出された。つまりこれらの大火は、地租改正の施行時期を遅らせるとともに、街区の様子を大きく変えることになったのである。
 このことから1つ問題が生じることになった。それは明治12年6月25日付の布達により、12年の上半期分の地租は仮に今までどおり納め、地租改正がなされた時に不足分を納めるという内容のため、明治11年の市街の景況と明治12年大火後の景況には、おのずと違いがあり、先の布達が生きている限り改正後の地租によって整理することが難しくなったのである。このため明治14年3月10日付で函館区長心得区書記桜庭為四郎名で開拓大書記官時任為基へ「現今之景況ヲ以テ地価相定十二年已降之地租徴収相成候テハ不適当ニ可有之」との判断から、先の布達の取消しを副申している。そしてこの件については、同布達を廃し「昨十三年十二月迄ハ市街宅地々租従前ノ通沽券税ニ引直シ徴収相成」となり、地価改正にともなう地租改正は14年1月から施行することになったのである(明治11年「市街改租書類」)。
 この時を境にして市街地の新旧税を比較してまとめたのが表4-6である。又改正後に表4-7のとおり新たに地券が引き渡された。この比較表で留意する点は、宅地の坪数が改正後減じているが、これは改正前の数値には畑地が含まれていたことが考えられ、実質的には増加していたと思われる。また崖地も数字化されているのは、明治12年大火後の街区改正などとの関連で、明治13年4月21日に布達された「崖地保全規則」などによるものと考えられる。また同表は全体的には当時の土地利用をも表現しているのである。また、地券数については、「沽券地請印帳」の数字を明治6年段階での地券数と理解することが可能であれば、改正時において約2倍に増えたことになろう。
 
 表4-6 函舘区市街地新旧税額比較表
地目
旧地坪
活券価
活券税
改正坪数
改正段別
地価
地券税
坪数段別比較
地価比較
税金比較
民有地第1種宅地
672,684
715,173
7,149
610,541
外崖地 1,799
966,115
9,661
外崖地 1,799
△62,143
250,942 2,512 
  
  
26町8段9畝
外畦畔2町1段9畝
1,987
19
26町8段9畝
外畦畔2町1段9畝
 
1,987
 
19
 
第2種村社地
951
  
973
  
22
     
道路敷地
 
  
307
  
307
     
墓地
23,435
  
25,486
  
2,051
     
火葬場
1,332
  
1,343
  
11
     
官有地1神地
1,959
  
1,960
  
1
     
2官用地
72,762
  
74,690
外崖地 333
  
1,928
外崖地 333
     
宅地
 
  
224,464
外崖地 194
  
224,464
外崖地 194
     
第3種農業仮博覧会場
24,432
  
24,432
        
外国人居留地
14,994
  
14,567
   
△427
    
招魂社地
5,422
  
10,075
  
4,653
     
公園地
16,129
  
14,534
  
 
△1,595    
樹芸園
24,569
  
84,203
  
59,634
     
官林
 
  
136,448
  
136,448
     
荷揚場
 
  
1,102
  
1,102
     
井戸地
87
  
65
  
 
△22
    
堂宇地
 
  
805
  
805
     
墓地
21,913
  
16,927
  
 
△4,986    
塵焼場
 
  
89
  
89
     
第4種学校地
3,865
  
3,971
  
106
     
女紅場
1,963
  
2,018
  
55
     
病院地
5,472
  
5,483
  
11
     
寺院地
8,261
  
15,123
  
6,862
     
総計
900,230
715,173
7,149
1,269,606
外崖地 2,326
畑地26町8段9畝
外畦畔2町1段9畝
968,102
9,680
438,549
外崖地 2,326
畑地 26町8段9畝
外畦畔2町1段9畝
△69,173
252,929 
2,531
 

 明治11年「市街改租書類」より作成
表4-7 地券状引渡目録
町名
枚数
富岡町
鍛冶町
旅籠町
天神町
駒止町
船見町
山背泊

会所

相生町
元町
寿町
曙町
汐見町
青柳町
春日町
住吉町
谷地頭
大町
仲浜町
弁天町
西浜町
幸町
大黒町
鰪澗町
末広町
東浜町
船場町
恵比須町
蓬莱町
地蔵町
豊川町
西川町
汐留町
宝町
東川町
大森
鶴岡町
若松町
音羽町
海岸町
高砂町
大縄町
真砂町
3
77
87
130
35
142
97
38
57
94
45
24
28
13
80
41
191
42
45
26
86
38
8
129
52
115
53
8
83
147
66
53
107
31
32
242
7
69
111
86
115
22
12
0
総計2,967

明治11年「市街改租書類」より作成