函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第3章 北海道庁設立と自治制への歩み

第1節 北海道庁設置に伴う行政機構

2 函館を所管する役所

 明治30年の北海道庁の官制改正でもう一度函館支庁が誕生する。この度の函館支庁は19年の函館支庁とは違って郡区役所に代わるものとして設けられたものである。明治30年は道庁の官制改正が2度行われた年で、まず4月14日の改正で部署の改正が行われ殖民部が誕生し、殖民事務長職が設けられている。北海道の開拓を標傍しながら誕生した北海道庁ではあるが、部署制については、地方官官制に則って置かれていたため、分課職掌や処務細則では拓殖、殖民を謳っているが、部名に殖民を冠したのは今回が初めてである。殖民事務長は書記官の次に列し、年俸は函館区長兼務の書記官と同じ2000円であった。次いで10月30日(11月5日施行)に2度目の改正が行われた。部署は内務部、殖民部、財務部、警察部、鉄道部、土木部、監獄署の6部1署制となり、警察部(警部長が部長)以外の5部は、書記官、殖民事務長に代わって置かれた事務官(5名内1名は勅任官)が部長となる体制となった。せっかく設けられた殖民事務長という職は半年ほどでなくなってしまったのである。置かれた職員は次の通りで、郡区官は全く廃止された。
 
職員……長官 書記官 警部長 財務長 参事官 技師 典獄 属 技手 警部 監獄書記 看守長 監獄医
郡区官…郡長 区長 郡書記 区書記
(明治二十四年七月二十四日勅令第一一一号『官報』号外「北海道庁官制」より抜粋)

 
 地方行政事務は支庁長が担当することとなり、第51条で次のように規定した。
 
従前ノ法律命令ニ於テ北海道郡区長ノ管掌ニ属シタル事項ハ北海道庁支庁長ニ於テ処理スベキモノトス

 
 北海道庁支庁の名称位置及び管轄区域が同日の勅令第395号で定められ、19支庁が表3-4の通り誕生し、函館区長龍岡信熊が官制改正施行日の11月5日付で函館支庁長に就任した。郡区書記は他の一般事務職と同じように「道庁属」となったのである。また10月30日には、北海道庁高等文官官等俸給令(勅令第393号)も公布され表3-5のような年俸体系となったが、支庁長については次のような条文が付けられていた。
 
 表3-4 支庁の名称位置及び管轄区域表
名称
位置
管轄区域
北海道庁札幌支庁石狩国札幌区大通西3町目札幌区、札幌郡、石狩郡、厚田郡、浜益郡
北海道庁函館支庁渡島国函館区元町函館区
北海道庁亀田支庁渡島国亀田郡七飯町亀田郡、上磯郡、茅部郡、山越郡
北海道庁松前支庁渡島国松前郡福山河原町松前郡
北海道庁檜山支庁渡島国檜山郡江差中歌町檜山郡、爾志郡、久遠郡、奥尻郡、太櫓郡
瀬棚郡
北海道庁寿都支庁後志国寿都郡渡島寿都郡、島牧郡、歌棄郡、磯谷郡
北海道庁岩内支庁後志国岩内郡御鉾内町岩内郡、古宇郡
北海道庁小樽支庁後志国小樽郡量徳町小樽郡、高島郡、忍路郡、余市郡、古平郡
美国郡、積丹郡
北海道庁空知支庁石狩国空知郡岩見沢村空知郡、夕張郡、雨竜郡、樺戸郡
北海道庁上川支庁石狩国上川郡旭川村石狩国上川郡
北海道庁増毛支庁天塩国増毛郡永寿町増毛郡、留萌郡、苫前郡、天塩郡、中川郡
天塩国上川郡
北海道庁宗谷支庁北見国宗谷郡稚内村宗谷郡、枝幸郡、利尻郡、礼文郡
北海道庁網走支庁北見国網走郡北見町網走郡、斜里郡、常呂郡、紋別郡
北海道庁室蘭支庁胆振国室蘭郡札幌通室蘭郡、有珠郡、虻田郡、幌別郡、勇払郡
白老郡
北海道庁浦河支庁日高国浦河郡浦河村浦河郡、沙流郡、新冠郡、静内郡、三石郡
様似郡、幌泉郡
北海道庁釧路支庁釧路国釧路郡真砂町釧路郡、白糠郡、足寄郡、阿寒郡、川上郡
厚岸
北海道庁河西支庁十勝国河西郡下帯広村河西郡、河東郡、十勝国上川郡、中川郡
十勝郡、当縁郡、広尾郡
北海道庁根室支庁根室根室郡常盤町根室郡、花咲郡、野付郡、標津郡、目梨
国後郡、色丹郡、得撫郡、新知郡、占守郡
北海道庁紗那支庁千島紗那紗那紗那郡、振別郡、択捉郡、蘂取郡

 明治30年10月30日勅令第395号『官報』より作成
 
 表3-5 北海道庁高等文官官等俸給表
職名
年俸額
1級
2級
3級
4級
5級
6級
7級
長官
勅任事務官
奏任事務官
警部長
支庁長
参事官
警視
典獄
5,000
3,500
2,500
2,500
1,800
1,800
1,200
1,200

3,000
2,200
2,200
1,600
1,600
1,000
1,000


2,000
2,000
1,400
1,400
900
900


1,800
1,800
1,200
1,200
800
800




1,000
1,000
700
700




900
900




800
800

 
 明治30年10月30日勅令第393号『官報』より作成
 
第五条 函館支庁長ノ年俸ハ特ニ二千円迄ヲ給スルコトヲ得
第七条 当分ノ内支庁長ノ年俸ハ最下級以下六百円迄ヲ給スルコトヲ得

 
 つまり下級俸書記官兼函館区長の年俸2000円がそのまま函館支庁長の年俸となり、年俸600円の郡長もそのまま支庁長に移行したわけである。
 その後この龍岡信熊支庁長在任中に自治制の函館区が誕生するわけなので、ここで明治12年以来の歴代区長を表(表3-6)にして掲げておく。
 この事務内容の変更は全く伴わない郡区役所制から支庁制への移行には、役所名の変更整理という意図があったのかも知れない。郡役所名は亀田外3郡役所でも正式名称は亀田上磯茅部山越郡役所であり、根室支庁となった地域も郡役所の正式名称は根室花咲野付標津目梨国後色丹得撫新知占守郡役所であり、ここの初代郡長広田千秋はさらに網走斜里常呂紋別郡長及び紗那振別択捉蕊取郡長を兼ね、正式な彼の肩書きは、根室花咲野付標津目梨国後色丹得撫新知占守郡長兼網走斜里常呂紋別郡長紗那振別択捉蕊取郡長と18郡をも所管するというものであった。『官報』の辞令記載中もっとも長い肩書きである。開発はこれからという未開の原野を行政区画割のみ先行させたため、多くの郡を兼務する郡長を置かざるを得なかったわけである。
 以後、明治32年10月に自治制の函館区となるまで函館区の行政事務は函館支庁が担当、函館区会も議長を支庁長が勤め、区会において説明員となる番外も函館区書記に代わって北海道庁属が担当したのである。
 
 表3-6 歴代区長表
職名
氏名
前職
就任年月日
年俸
備考
退任年月日
後職
備考
区長
区長心得
 同
 同
区長代理
区長
 同
 同
 同
 同
区長代理
区長
 同
支庁長
 同
 同
常野与兵衛
桜庭為四郎
荻野八郎
林悦郎
林悦郎
林悦郎
二木彦七
添田弼
椎原国太
曽我部道夫
井川武策
財部羌
龍岡信熊
龍岡信熊
加藤広説
龍岡信熊
大小区制区長
区書記
区書記
函館県8等属
区長心得
区長代理
函館県1等属
檜山爾志郡長
室蘭外5郡長 注1
宮城県書記官
区書記
広島県警部長
台北県書記官 注2
函館区長
北海道庁属
非職北海道庁支庁長
12.10.14
13.12.13
15.3.15
15.5.23
15.11.2
18.10.26
19.12.28
23.2.22
24.1.24
24.8.26
25.1.26
25.11.30
29.7.25
30.11.5
31.9.1
31.11.29
※420円
※360
※240
※300
※360
※420
900
600
600
2,000
※480?
2,000
2,000
2,000
2,000
2,000
区長就任後「正義」と改名
12.10.30開拓9等属より
14.3.29開拓10等属より



兼道庁理事官・亀田上磯郡長
特別手当400円
特別手当400円
兼道庁書記官

兼道庁書記官
兼道庁書記官
兼亀田支庁長
兼亀田支庁長
兼亀田支庁長
13.12.11
15.3.15
15.5.23
15.11.2
18.10.26
19.12.28
23.2.22
24.1.24
24.8.26
25.1.25
25.11.30
29.7.25
30.11.5
31.8.29
31.11.29
32.10.1
家業
払下事件で引責辞任(15.2.2)
区書記
区長代理 注3
区長
岩内古宇郡長
非職(23.3.25)
室蘭外5郡長 注4
釧路外12郡長 注5
未確認
区書記
台北県書記官
函館支庁長
非職(31.8.29)
非職(31.11.29)
亀田支庁改め函館支庁長

15.7.15函館県7等属
15.7.19依願免












函館区長事務取扱

 『官報』、「函館区政沿革史」(北大蔵)等より作成
 年俸中※印のあるものは月俸支給のものを年俸換算したものである。
 注1 室蘭有珠虻田幌別勇払白老郡長
 注2 台湾総督府法院検察官を兼務
 注3 15.11.2区長不在時、上席書記を区長代理とする。
 注4 室蘭有珠虻田幌別勇払白老郡長
 注5 釧路広尾当縁十勝中川河西河東上川白糠阿寒足寄川上厚岸郡長
 
   荻野八郎の退任年月日が「5.5.23」とあるが、誤記のため訂正
   龍岡信熊の就任年月日が「27.7.25」とあるが、誤記のため訂正