函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第2章 開拓使の設置と函館の町政

第4節 函館区会開設

2 区会開設

 区会規則の裁定布達5日後の1月13日、区役所は、区会議員選挙実施要領を次のとおり告示した(明治14年1月14日「函新」)。
 
函館区々会規則、裁定第二号ヲ以テ支庁ヨリ布達相成ニ付、来ル二十三日午前九時当区宝学校ニ於テ議員選定候条、選挙人ハ各組ミ戸長役場ヨリ投票用紙申請規則ニ拠リ、被選人ノ住所姓名并ニ自己ノ住所姓名ヲ記載(選挙人一名ニテ被選挙人五名宛ヲ選ブ、若一組内ニ相当ト見認モノナキトキハ他組内ノ人ヲ選挙スルモ妨ゲナシ)、前同日定時限、宝学校ニ於テ投票差出ベシ。
告示のとおり23日朝9時から宝学校で選挙会が開催され、表2-51の通りの区会議員が選出され、うち約半数が承諾の請書を会場で提出した。
なお被選挙資格と選挙資格は次のとおりで、府県会規則の被選挙資格(満25才以上の男子、府県内に本籍、満3年以上住居、地租10円以上納入者)、選挙資格(満20才以上の男子、府県内に本籍、地租5円以上納入者)より大幅に緩和されている。

 
 表2-51 区会議員当選者名簿(明治13年1月23日)
氏名
得票
氏名
得票
氏名
得票
氏名
得票
氏名
得票
1
広田丈吉
159
小野亀吉
131
佐々木政十郎
97
村林又右衛門
96
和田元右衛門
72
2
小林重吉
202
中村兵右衛門
191
向井藤蔵
111
西村利光
82
西村和吉
66
3
田中正右衛門
141
枚田藤五郎
109
林字三郎
90
工藤弥兵衛
90
石田啓蔵
58
4
安浪治郎吉
187
杉浦嘉七
178
泉藤兵衝
115
渡辺熊四郎
87
今井市右衛門
67
5
田中兵太郎
119
山本鉄次郎
109
武富善吉
104
金子利吉
98
米谷権右衛門
84
6
村田駒吉
120
間作良太
50
高田吉蔵
47
西村善吉
26
大宅民蔵
24

 
 「桜庭為四郎文書」道図蔵より作成
 
被選挙資格 満20才以上の男子にして区内に本籍住居を定め、区内に於て土地を有する者
選挙資格 満20才以上の男子にして区内に本籍住居を定め、不動産を有する者及同上にして満1年以上間断なく寄留する者

 
 2月5日には議員互選による議長副議長の選挙が行われ、議長に杉浦嘉七、副議長に安浪次郎吉が選出された。
  区会議員当選者の内、西村利光、工藤弥兵衛、石田啓蔵、田中兵太郎、武富善吉、高田吉蔵、を除いた24人は旧総代人で、総代人の集会3年間の実績から、円滑な区議会の進展が予想されたが、議事規則に規制された議会運営に対する不安からか、選挙直後から次のような動きもあったと「函館新聞」(1月24日付)は伝えている。
 
今度選ばれたる議員のうちにて其姓名は判然せねど、何でも議員になる事が嫌だとてにわかに此地の在籍をどこぞ近在の方へ引移さんとする者があるとか、其了簡は一向解せ無いけれど衆皆が非常に骨を折って選挙したる甲斐も徒らに画餅とするは、最も歎はしき限といふべし。

 
 また函館支庁は、議員選挙実施後、支庁吏員による模擬区会を開いて区会議員に傍聴させ、円滑な議事運営を期待した。
 3月1日午後5時30分、区役所会議室に於て臨時区会が開催され、区長心得桜庭為四郎が「区会の開設は民権の伸暢するの端を啓けるものと言ふべし。豈に当道人民の為に賀し、旦祝せざるべけんや。敢て望む、会議の決は区内の幸不幸に関す、各員熟議其宜しきを得ことを」との祝詞を述べ、区会議費の審議に入った。当日の出席議員は19人で議長杉浦嘉七は商用で東京に行っており、副議長の安浪次郎吉が議長を務めた。議事は議則に則って進行し、まず第1次会の議案提案説明と質問会が行われ、続いて第2次会の逐条審議に入り若干の修正がなされ、第3次会の議案議決は翌日行われることとなった。しかし翌2日は過半数の議員が出席せず散会し、3日ようやく第3次会を開いて議案議決を行い、同時に諮詢された号外議案(公費で公立学校教員を養成すること)も議決して臨時区会を閉じた。
 区会開会前から危惧されていたことが、早くも現実となってあらわれ、たった2日間の臨時区会を欠席する議員が相次いだのである。更に、旧総代人の広田丈吉、村林又右衛門、平田伝六、間作良太、大宅民蔵の5人は、病気を理由に辞職してしまった。このため15日に開会を予定されていた通常区会は延期せざるを得ず、取りあえず20日に議員の補選を行って、上田武左衛門以下5名を選んだ。以後、15年の区会で区会規則改正が審議された際、林宇三郎の提案で議員定数が21人に削減され、更に17年の区町村会法改定をうけた区会規則改定の中で10人に削減されてようやく落着くまで、議員の辞職と補選が続き、区会の円滑な運営が妨げられた。21人に削減されるまでの辞職議員と補選議員は表2-52のとおりである。
 辞職議員の続出並びに議員の欠席が過半数のための流会続出の原因として、議員が総代人の集会との相違に戸惑ったこと、議政権を軽くみていたこと、議員の大半が商工業者でその活動を優先させたことなどが挙げられる。区会議員に選ばれた者の中に政治意識の未成熟という者が含まれていたことは事実であるが、しかし、14年10月辞職の小野亀吉、安浪次郎吉、米谷権右衛門、15年5月辞職の枚田藤五郎、石田啓蔵、井口兵右衛門、林宇三郎、工藤弥兵衛は、開拓使官有物払下事件(第2章第5節参照)に関与したための辞職であり、第1回通常区会の会期が大幅に延長された最大の原因も、郡区の経費分離について区会議員が区会規則に則って開拓使函館支庁へ強力に主張したためで、ほとんどの議員が政治意識の未成熟というわけではなかったのである。
 
 表2-52 区会議員の辞職と補選一覧(明治14年3月~15年9月)
区別
年月
辞職議員及び補選議員氏名
辞職
補選
14.3
14.3
広田丈吉
上田武左衛門
村林又右衛門
枚田要蔵
平田伝六
石川小十郎
間作良太
井口兵右衛門
大宅民蔵
金沢弥惣兵衛
辞職
補選
14.10
15.1
小野亀吉
米谷権右衛門
中村市兵衛
佐久間市五郎
和田元右衛門
村田駒吉
成田嘉七
千葉重吉
小林重吉

佐野与三右衛門
渡辺熊四郎

亀井勝蔵
安浪次郎吉

菊池直七
辞職
補選
15.5
15.7
枚田藤五郎
西村利光
枚田藤五郎
西村本次郎
石田啓蔵
成田嘉七
石.田啓蔵
佐野半平
井口兵右衛門
山本鉄次郎
常野嘉兵衛
佐賀貞右衛門
林宇三郎
西村善吉(在職中死亡)
林宇三郎
平田儀平
工藤弥兵衛

工藤弥兵衛
辞職
補選
15.9
15.9
田中正右衛門
亀井勝蔵
渋田利右衛門
池田六右衛門
牧田要蔵
菊池直七
石田四郎右衛門
小川幸兵衛
中村市兵衛
西村和吉
成田嘉七
渡辺熊四郎
中村兵右衛門

細川半六
今井市右衛門

亀井惣十郎

 「函館新聞」、「桜庭為四郎文書」道図蔵より作成