函館市/函館市地域史料アーカイブ

函館市史 通説編2

第2巻 第4編 箱館から近代都市函館へ

第2章 開拓使の設置と函館の町政

第4節 函館区会開設

2 区会開設

 総代人の願書と函館区長の上申書を受理した函館支庁は、記録課の村尾元長等を中心に願書内容の検討に入った。記録課の評議書をみると、まるで区会開設の出願がなされるのを待っていたかのようで、7月19日、次のような内容の調書を作成、開設許可を長官へ禀議するようにと結論した。
 
第一項 現在、人民の利害に関する事は、総代人決議を以って施行しているが、郡区編制法実施の今日、人民の利害に関し衆議を必要とする事が増加して、会議法及び議事規則のない総代人制では、対応が難しくなってきている。今般総代人等が出願してきたのは好機会と思われるので、開設を許可するのが筋と考える。
第二項 今年四月八日布告の区町村会法は、十一年七月二十二日太政官番外達(三新法施行順序)により各府県に区町村会が開設されたので、大則数章を設け、その他は地方の便宜にまかす趣旨で制定された法であるから、函館区の出願を許可し、後日各郡でも開設の時期が来たならば、同様に開設すべきで、そうすることが政府の趣旨に適し、人民の便宜となることである。
第三項 区町村会の規則は、区町村会法第二条で「其区町村ニ於テ制定シ、府知事県令ノ裁定ヲ受ク可シ」とあるので、願書では支庁に草案布達を願っているのは筋違いである。しかし、総代人か委員を選んで規則草案作成を委ねても、好結果は期待できないと思われるので、区長が草案を作成し、当庁が一覧の上、総代人の集会にはかってから伺い出るのが良いのではないか。
第四項 郡区改正の際、郡区の予算分離を考えたが、郡は草創期で経済的自立が難しく郡区合併予算に据置いた。しかし区会が開設されれば、全区の公共に関する事件及び其経費の支出徴収方法を議定することになり、分離を考えなければならないが、現状では困難なので追々取調ることとする。
第五項 区会町村会開設の地は、総代人は廃止されているが、区会開設が決定しても議事の体裁が整頓するまでは、総代人を存続し、その後廃止すれば良い。
第六項 総代人の出願は、区町会の開設出願となっているが、区町村会法は区に区会、郡の町村に町村会を設置するとしたもので、区中各町にも町会を開設することではないと考える。しかし、一町内又は数町連合に係る事業もあり、これを区会にかけず町会で処理する方法も一考を要する。
(前掲「函館支庁文移録」)

 
 記録課からの報告を受けた時任為基大書記官は、支障なく長官の許可が下りるとの判断から、長官伺書は送らずに、東京出張所の書記官への書面と総代人の願書を東京へ送り、電報照会等で連絡しながら許可を待った。
 しかし東京出張所では、慎重論が大勢を占め、なかなか長官禀議が行われなかった。このため、時任大書記官は、8月16日、記録課の調書写を東京の書記官へ送り、区長が区会規則の草案調査を開始している旨を伝え、早急に開設許可が下りるよう配慮を要請した。にもかかわらず東京出張所は、府県会に当たる議会がないということで、北海道に区会を開設することに難色を示したが、11月に入ってようやく長官禀議となり、26日、函館区会開設が許可された。
 
本年四月第十八号公布ニ準シ、函館区ニ限リ区会開設候条、此旨相達候事
 但 該公布中府知事県令トアルハ函館支庁長官、同公布第十条中「府県会ニ付シ」云々トアルハ函館支庁長官ニ於テ決定スル義ト心得ベシ
   明治十三年十一月二十六日  開拓長官 黒田清隆           (同前)
 
 だが、同時に、函館支庁に対して、区会規則は函館支庁が作成し、これを区長が総代人の集会に諮り決議を取って、再び区長が支庁へ提出して裁定を受け、施行後開申するよう指示した。更に、経費支出は出港税から補助している部分もあるので、区会の議決があっても行政上の都合により、開拓使は区会決議を取捨する権利を保有し、その権利は府県より強いはずであるから、区会議員は行政官の諮問に応ずる会員位に考えるべきであると通達した。東京出張所は、区会権限を縮小制限する方針で開設を許可したのである。
 この区会開設許可が、函館支庁から函館区へ布達されたのは12月15日であった。この日は、黒田長官が太政官へ函館区会開設を許可した旨を上申した日でもあった。
 函館市民は函館支庁が区会開設に対して積極的であったことを知っていたと思われ、出願から許可までの5か月間を非常に長く感じていたようで、12月26日の函館新聞の「区会允可の祝辞」と題する次の投書は、市民の気持を代弁した投書であった。
 
本月十五日を以て開設允可の旨を布達せられたり。該布達を捧読するの日や、区民は欣然として大旱の雲霓を望み、濁者の清泉を得たると同、一般の悦色を現はし、大に允可を祝頌せり。自今以後幾分の干渉を脱して、亦自治幾分の権利を得、真に区民たるの面目に適合するの行為を得たり、誰か亦、当区一般の為めに祝賀せざる者あらんや。