札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5下

第十編 現代の札幌

第七章 市民生活の諸相と保健・福祉

第三節 保健衛生の推進

二 各種感染症の変遷と対策

札幌の感染症の変遷と国際化

 北海道内では昭和二十五年に最後の天然痘(痘そう)が終息し(北海道衛生年報)、五十四年は世界保健機構(WHO)がアフリカ・ケニアのナイロビで天然痘の根絶を宣言して、人類が地球上から天然痘を撲滅した記念すべき年であった。ところが、表19に示したように、昭和五十年代から国際伝染病と呼ばれる世界のごく一部のみで流行していた感染症が、日本国内で流行し始めた。五十一年、海外からの帰国者に風土病のラッサ熱が発生したため、伝染病予防法に基づく指定伝染病に指定し(昭51・3・10)、マールブルグ病、エボラ出血熱を追加し、予防法や治療法が確立していないため致死率が高い感染症を国際伝染病(後の新感染症1類)として対策を立てることにした(厚生省五十年史)。また、天然痘はその後、平成十三年九月十一日に起きた対米国同時多発テロルを契機に、天然痘がテロルの手段として使用される危険性も高まり、日本でも感染症新法の1類に重症急性呼吸器症候群(SARS)とともに指定されるにいたる。
表-19 昭和51年から平成6年までの主な新型感染症の病原体
発見年病原体*
昭51アメリカレジオネラ菌
 51アメリカクリプトスポリジウム
 51ザイールエボラ出血熱ウイルス
 55イタリアD型肝炎ウイルス
 55日本成人T細胞白血病ウイルス
 56アメリカ・フランスHIV
 57アメリカO157
 60アメリカ劇症型A群連鎖球菌
 61イギリス新型ヤコブ病
平 1アメリカC型肝炎ウイルス
  3ベネズエラベネズエラ出血熱ウイルス
  4インドコレラO139
  5アメリカ新型ハンタウイルス
  6ブラジルブラジル出血熱ウイルス
  6オーストラリア新型モルビリウイルス
相川正道・永倉貢一『現代の感染症』より作成。
*病原体が未確定なものは病気名

 エイズ(後天性免疫不全症候群)は、昭和五十六年米国の同性愛者に発生したことから、厚生省は五十八年に全国五五八の医療機関でエイズサーベイランス網を整備し、二次感染を防止したが、六十年に患者が発見された(エイズについては次節に記述)。このように、地球上各地で発生した感染症が札幌でも発生するのは、表20に示したコレラに代表される。
 次に個別の感染症についての市内の発生状況をいくつか取り上げ、表20・21・22・23によってみることにする。
表-20 札幌市伝染病発生状況の推移―法定伝染病(昭和47~平成10年)
年次法定伝染病
ペストコレラ赤痢腸チフスパラチフスしょう紅熱ジフテリア流行性脳髄膜炎
患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者
昭471,81262121,7434
 481,80729121,7732
 491,5193631,4773
 501,1688731,07422
 511,30046632311,22531
 521,1199241,0221
 531,3603121521,22612
 541,65785831,5582
 55937
(64)
28
(57)
1
(2)
1
(―)
905
(5)
 56503
(33)
11
(30)
1
(2)
2
(1)
4881
 57300
(23)
14
(20)

(3)
286
 58260
(11)
120
(9)
1
(2)
8230
 59220
(11)
20
(10)
21197
 60107
(11)
12
(9)
194
 61125
(9)
8
(9)
1116
 6265
(10)
 116
(9)

(1)
48
 6319
(20)
8
(20)
1 19
平 111
(3)
8
(3)
111
  215
(5)
(1)11
(2)

(1)

(1)
4
  327
(11)
23
(10)
1
(1)
12
  47
(13)
6
(13)
1
  55
(13)
3
(12)
2
(1)
  612
(10)
(1)7
(9)
32
  716
(33)
4
(10)
12
(22)

(1)
1
  89
(11)
8
(10)
1
  910
(15)
7
(15)
21
 1010
(10)
9
(9)
1
11.1-3321
『札幌市衛生年報』第32巻・44号・50号・52号より作成。
昭和47~54年までの患者数は、疑似患者数を含み、55年以降は( )内に疑似患者を別掲した。
昭和54・55年の合計数は内訳と一致しないが出典のままとした。

表-21 札幌市伝染病発生状況の推移―指定伝染病・届出伝染病(昭和47~平成11年3月)
年次指定伝染病届出伝染病
ポリオ腸管出血性大腸菌感染症インフルエンザ百日咳麻疹破傷風マラリア
患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者患者死者
昭47221062122103
 481115351471
 491641112161
 501241318999443
 5115984161434
 52199316231819
 53 30514720138
 5461237223352
 551,8393291,5082
 561,2701111311,0271
 5711179215
 5815710264315
 5996861423
 6034033631
 6119811
 62261691
 6310451
平 1959014
  2211461
  317417013
  413562
  5311
  611
  733
  81515321
  91313
 101515413
11.1-37676
『札幌市衛生年報』第32巻・44号・50号・52号より作成。
患者数は、平成11年は1月から3月、その他は各年1月から12月の数。
「―」は発症はなし、「…」は伝染病指定以前のため不明を表す。

表-22 札幌市感染症の発生年次推移(平成11年4月~13年12月)(単位:人)
年次平11.4~12月平12平13
1類感染症総数
ペスト
2類感染症総数8(1)11(7)14(3)
細菌性赤痢6(1)10(5)11(2)
腸チフス11(1)2(1)
パラチフス1
コレラ(1)1
3類感染症総数87(30)16(8)30(14)
腸管出血性大腸菌感染症87(30)16(8)30(14)
4類感染症総数23(―)32(―)22(―)
破傷風12
マラリア332
クロイツフェルト・ヤコブ病113
急性ウイルス性肝炎1152
エキノコックス症282
アメーバ赤痢158
後天性免疫不全症候群(エイズ)4(―)4(3)3
梅毒442
ジアルジア症1
劇症型連鎖球菌感染症1
デング熱1
ライム病1
『札幌市衛生年報』第52号より作成。
新感染症法により平成11年は4月~12月、その他は各年1月~12月の届け出のあった病名のみの患者数を計上した。
エイズの( )内は患者の別掲、その他の( )内は疑似患者数の別掲である。

表-23 札幌市 感染症新法にもとづく第4類感染症定点医療機関(28疾患)届出状況
(平成11年4月~14年3月)
番号疾患名平11年度平12年度平13年度
1咽頭結膜炎249330434
2A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(しょう紅熱)2,2792,4103,291
3感染性胃腸炎8,7069,4736,708
4水痘3,6114,5623,657
5手足口病1282,9652,328
6伝染性紅斑1,2581,116539
7突発性発疹2,2692,0581,779
8百日咳141212
9風疹181116
10ヘルパンギーナ1,4121,5521,721
11麻疹11220768
12流行性耳下腺炎1,7602,4132,790
13インフルエンザ10,4031,8048,498
14急性出血性結膜炎1043
15流行性角結膜炎695670781
16性器クラミジア感染症1,1887231,216
17性器ヘルペスウイルス感染症283275381
18尖形コンジローム133114164
19淋菌感染症853313673
20急性脳炎100
21クラミジア肺炎000
22細菌性髄膜炎000
23ペニシリン耐性肺炎球菌感染症000
24マイコプラズマ肺炎000
25成人麻疹000
26無菌性髄膜炎000
27メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症143227
28薬性耐性緑膿菌感染症021
札幌市保健所『事業概要』平成11・12・13年度より作成。札幌市内82カ所の定点医療機関からの週報、月報による集計のため、必ずしも発生の全数ではない。