札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5上

第九編 大都市への成長

第七章 高度成長期の市民生活と社会運動の展開

第五節 高度経済成長期の市民生活

一 変わる市民生活・衣食住

 三十年代半ばから大量消費と言われる時代に入ったが、生活物資の大半を本州から購入する事情や、北国の特殊性から暖房費や被服費、住宅建築費も割高になり、市民はおのずと消費生活に不利な条件を背負っていた。家計費の支出は高くなり、実質生活水準は本州に比べて低い状況にあった。化学合成繊維や魚肉ソーセージが急速に普及し、コールドパーマによる頭髪脱毛事故や、森永ヒ素ミルクによる乳幼児死亡事故なども発生した。
 身近かな消費生活に潜む危険性や不合理性が顕在化するなかで、三十六年十一月三十日、生産性北海道地方本部を母体に札幌在住者を中心とする北海道消費者協会(以下、道協会と略す)が発足した。道協会は、「本州様式の暖地住宅に住み、工夫もせずに暖房費を増大させ、食生活では本州産の材料を使って本州様式の食習慣に執着するなど不合理な後進性」(設立趣意書)を消費者自身が認識したうえで、組織として研究・教育活動を行い合理的な消費生活に転換することが目的であった。草創期は経営者・労働者・消費者の三者の組織により、北海道の「本州依存型経済情勢の改善」など、経済安定に寄与することも目的とした(北海道消費者協会 十年の歩み)。①消費者教育(北海道消費生活コンサルタントの養成と地域リーダーの養成)、②組織活動(講演・講習・講座および消費者大会の開催)、③相談活動(消費者相談窓口の設置)、④情報活動(調査・研究)に取り組み、当面は消費者教育と組織の拡大に比重が置かれ、札幌市民は道協会に属し活動した。道協会は札幌市婦人団体連絡協議会の消費物資研究部とも連携し、計量運動活動にも取り組み、三十八年には、市内を五地区に分け、スーパーマーケット小売市場、商店から道産袋詰め食品三二〇点を買い求め、量目調査を行った。その結果、商品の中身が表示の半分しかない場合や二割も少ないなど、多数の量目不足が見つかり、成績の悪いメーカーには改善を申し入れた。量目調査は、四十一年には燃料のカマス売り石炭にもおよび、数量、単価、品質、金額を明記した納品書の添付を小口販売業者に申し入れたり、消費者と業者との座談会を開催した。
 札幌市でも、三十九年に消費経済課を設置し、十一月二日に地方自治体で初の「消費者相談室」を開設した。同相談室は市が道協会に一切の事業を委託し、相談員は道協会所属の消費生活コンサルタント六人が担当した。四十三年になると、国政レベルで自民・社会・民社・公明の議員提案により、「消費者保護基本法」が制定された。同法は、「消費者の利益の擁護および増進に関して」国・地方公共団体および業者、消費者の四者が果たす役割と、施策の基本事項を定め、国の補助によって北海道消費者センターが設置された。
 四十四年四月十六日、道協会の社団法人化に伴い札幌市にも単位協会の設立要求が高まり、市内各グループや消費生活コンサルタントが集まって札幌消費者協会を設立した。「不当値上げなどに泣き寝入りしない、強く賢い消費者になるために団結しましょう」(会長・後藤まさ)と会員六〇〇人により、事業として消費者相談、試買検査、消費者大会、生活展の開催などを計画した。表27のように札幌の消費者物価は野菜、魚介の生鮮品や、さらに家賃や地代が高騰していた。広報『消費者さっぽろ』を創刊し、四十六年十一月には、市から移動生活指導車「ゆたか号」の業務委託を受け、一〇二地区を巡回した。チクロ入り食品不買運動に取り組み、灯油や自由化された消費者米価(昭47・4・1)、化粧品などの価格・品質を調査した。
表-27 消費者物価指数(各年平均)

項目


年次
総合食料費住居費雑費
食料生鮮
魚介
野菜住居家賃
地代
雑費教育教養
娯楽
昭35100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0
 36105.2104.8110.0128.0106.1109.2105.6110.2106.9
 37111.1112.4115.5156.4110.5114.6117.7113.0114.0
 38116.8120.6126.3144.3114.9119.4119.4129.8124.0
 39122.8126.2140.6144.2123.0144.1127.1148.6132.8
 40132.5139.8179.7179.1130.2162.7136.1164.7143.6
昭40100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0
 41105.3104.1102.495.7104.7108.4107.7108.8111.1
 42109.2107.0102.1112.6107.3112.8114.2115.1119.2
 43114.5112.7112.4104.8111.8118.2120.3120.3126.7
 44119.7120.0135.4114.8114.9123.9125.8125.7136.6
 45128.2129.1157.9145.2121.7130.2133.7135.1144.3
昭45100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0
 46106.2105.4119.196.2106.7106.6105.7102.5110.4
 47110.4108.8116.495.5110.4112.8110.9110.2117.2
『札幌市統計書』(昭40・46・51年)より作成。
昭和35・40・45年をそれぞれ100とした。

 同じように消費者の立場から北海道価格問題に取り組み、物価値上げ反対運動と商品学習を結んだ運動を展開したのが、札幌市民生協である。北大生協の支援で四十年前後から活動を始めた。北大生協は、北大教職員の住宅地であった大学村(北24~26東3)で三十三年から外売活動を開始し、三十六年には大学村に店舗を開設して、地域生協づくりの土台を築いていたが、「あらゆる街に、自覚組織された消費者集団の拡大」をめざす地域生協設立方針にもとづいて、四十年に札幌市民生活協同組合が誕生した。「札幌市民の合理的な生活と生活水準の向上をはかり、物価値上げなどの生活圧迫に対して生活を守ること」、「消費者の権利をかかげ、組合員の教育活動を」行うことを目指す、市民・消費者型生協であった(北海道生協運動史 北海道生協創立30周年記念誌)。