札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5上

第九編 大都市への成長

第七章 高度成長期の市民生活と社会運動の展開

第五節 高度経済成長期の市民生活

一 変わる市民生活・衣食住

 昭和三十一年(一九五六)十二月、大通西一丁目広場に地上一四七・二メートルのテレビ塔が完成し、同月二十二日にNHK札幌放送局が開局、本放送を開始した(道新 昭31・12・22)のに続き、翌三十二年四月一日にはHBC(北海道)放送局のテレビ本放送も開始され、テレビ時代を迎えた。「テレビ」が象徴するように、三十二年になると札幌市民世帯の実収入や消費生活も戦前(昭9~11)の水準を回復し(表24)、「もはや『戦後』ではない」(経済白書 昭31)と言われるようになった。市内の全世帯平均家計支出をみると(表24)、二十二年に食料費(エンゲル係数)が支出の約六割を占めていたが、一〇年後の三十二年には四割に下がり、食べることだけに精一杯の時代は終わった。代わって子どもの教育費や新聞・映画などの文化費、その他の消費を含んだ雑費が次第に比重を増し始めた。
表-24 全世帯家計支出の推移

項目

世帯人員
(人)
支出総額
(円)
総額率
(%)
食料費率
(エンゲル係数)
光熱費率
(%)
住居費率
(%)
被服費率
(%)
雑費率
(%)
昭9-1181円51100.042.57.314.812.922.6
224.704,684100.058.46.04.812.118.7
254.7911,980100.053.17.74.914.321.1
305.1329,584100.044.66.98.512.527.5
324.8331,480100.041.57.58.211.531.3
354.5637,474100.038.58.79.812.031.0
404.1655,919100.036.66.010.511.835.0
433.8868,988100.034.45.111.411.437.7
『札幌市統計書』(昭32・36・41・46)より作成。
1.総理府統計局家計調査報告による。
2.昭和9-11年の調査は借家世帯のみを対象とする。

 一方、勤労者一世帯平均実収入(一カ月平均)では、三十年(三万六〇三三円)の一時期、東京(三万四八四五円)を上回り、全国二八都市(平均=二万九一六九円)の中で第一位となった(統計月報 昭31・6)。しかし、世帯主の収入(二万八五八三円)は東京(二万八九一〇円)に次ぐ第二位であり、札幌は一世帯当たりの有業者(一・六一人)が東京(一・四六人)や全都市平均(一・四五人)に比べて多いため、家族の収入分(内職やパートタイム=二割)を合わせたり、石炭手当(寒冷地手当)の支給も世帯の収入を引き上げていた(同前)。全国上位とは言っても、三十二年に札幌市商工会議所が市内二五小学校児童の家庭を調査した「札幌市民の生活水準実態調査」(回答・四四八四世帯)では、「貯金は全くなし」が二六パーセントあり、「毎日の生活は非常に苦しい」と答えたのは自家営業者が二・八パーセントと少なく、一般労働者は約二〇パーセントが苦しいと答えている。例えば、テレビは一四型一台正価七万四八〇〇円で、これは勤労者世帯二カ月分の実収入に相当し、自家営業者が五世帯に一台の所有に比べて、一般労働者は五〇世帯に一台であり、多くの市民にとってはテレビは高嶺の花(たかねのはな)であり、「まだまだ苦しい生活」が実態であった(札幌市民の生活実態調査 昭32)。ところが三十五年十二月になると、同じく札幌商工会議所による「札幌市民の生活水準実態調査」(市内二九小学校児童の家庭対象、回答・七二五〇)にも変化を裏付ける結果が現れた。生活については「普通と思う」が約五〇パーセントから約五七パーセントに増え、生活水準指標とする家具・文化用品の所有状況は三年前の調査と比較すると次のように増えていた(ただし、かっこ内は昭和32年、単位パーセント)。電気釜二六・五(二〇・五)、電気掃除機一一・六(六・五)、電気洗濯機三四・八(三二・八)、テレビ四二・〇(二〇・七)で、テレビは三年間で二倍に急増した(道新 昭35・12・6)。
 池田内閣による「所得倍増」計画が打ち出された三十五年の札幌市勤労者世帯の実収入(ボーナス含む12カ月平均値)は四万八〇〇〇円で(表25)、実収入から実支出(食費・住居費・被服費・光熱費・雑費)を差し引いた差額・「黒字」も六〇〇〇円であったが、六年後の四十一年に実収入は約一・六倍の七万円台に上昇し、一〇年後の四十五年には一一万五〇〇〇円と約二倍になり、さらに札幌冬季五輪開催年の四十七年には約三倍近くになるというかつてない右肩上がりの伸びとなった。しかしその背景には全国を上回る長時間労働の実態があり、四十三年の場合(常用労働者・一人平均一カ月)、出勤日数で〇・六日、総実労働時間で七・五時間、そのうち所定内労働時間が七・一時間、所定外労働時間が〇・四時間も全国平均より多く働き、なかでも建設業が顕著であった(道民生活白書 昭44)。「黒字」の使い道は依然として借金返済・貯金・月賦買掛金支払い・保険掛金支払いであったが、「モーレツ社員」(昭40年)の言葉に代表される長時間労働と勤勉によって、「生活の余裕」とまではいかなくとも生活水準は着実に向上していった。しかし一方で、実質賃金を目減りさせる物価高騰の波も押し寄せていた。
表-25 勤労者世帯の月平均実収入

項目


世帯人員実収入実収入の
倍率
35年=1.00
   円世帯主
収入率%
昭295.2233,70779.40.70
 304.9536,03379.30.74
 314.5735,12281.80.73
 324.5236,66281.90.76
 334.5638,42080.00.80
 354.3748,06583.51.00
 374.1653,36082.61.11
 393.9770,63776.31.47
 414.0474,62383.51.55
 433.7685,89383.01.79
 453.66114,98879.22.39
 473.62143,03683.52.98
『札幌市統計書』(昭32・36・41・46・48)より作成。
1.現品収入は含まない。
2.総理府統計局家計調査報告による。