札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5上

第九編 大都市への成長

第五章 高度成長期の産業発展

第八節 農業

一 高度成長期の農業(農業振興策)

 農業基盤整備を進めるための事業としては、①土地基盤整備事業、②近代化施設整備事業、③農村生活環境整備事業があるが、このうち、①土地基盤整備事業は土地生産性を高めることを、②近代化施設整備事業は労働生産性を高めることを目的にしていた。①と③をかつては農業基盤整備事業と呼び、最近では農業農村整備事業と称しているが、これらは国営、道営および団体営による本来の土地改良事業として行われてきた。また、近代化施設整備事業は、農業構造改善事業などの一部として実施されてきた。しかし、札幌市においては、国営や道営による大規模な土地改良事業はほとんど実施されたことがなく、農業構造改善事業などにも無縁であった。その理由は既述したが、それだけに農業基盤整備に対する札幌市独自の取組みが大事になった。
 第一に、土地基盤整備事業について。農道等新設改良費補助は、従来行われてきた小規模土地改良事業が昭和三十七年に名称を変更したものであり、土地基盤の整備を促進し、生産性の向上に寄与すべく、国や道の補助対象とはなり得ない小規模な事業でありながら、なおかつ公共性の高い農道、農道橋、用排水路、水門などかんがい施設、暗渠排水などに対する補助事業であった。
 安春川地区国営直轄明渠排水事業は、札幌市新琴似町および屯田町、ならびに石狩町の一部を受益地域として、二〇一四ヘクタールの農耕地の排水の整備を図るために計画され、昭和三十六年に着工した。その後、新琴似町において農地の転用が急速に進行したことから、本事業の継続実施に問題が生じたが、当初計画を縮少すること、および札幌市が費用の一部を負担することで継続される事になり、四十三年三月に竣工した。
 小規模草地改良事業補助は、国や道の補助を受け、飼料基盤の整備を図るべく、原野および荒廃草地に対して抜根、起土、整地、土壌改良、播種、施肥、牧草導入などを実施した。
 以上に述べた他に屯田用水路塵芥処理事業、四号用水路施設維持管理事業、災害復旧事業などが実施された。表58は、この時期に行われた主な事業についての概要であるが、安春川国営直轄明渠排水事業については、国営事業のためか、事業費などの記載がない(以上について、事務概況を参照)。
表-58 土地改良事業の概要(単位:千円)
年度農道新設改良費補助屯田用水路塵芥処理補助四号用水施設維持管理補助小規模草地改良事業補助
事業費補助金事業費補助金事業費補助金事業費補助金
昭3283
 33100
 34203
 356,6081,998
 364,0112,000
 376,2033,0004,8362,418
 3810,0266,0009,4444,722
 3911,6266,00011,0605,530
 4010,8727,00011,0605,530
 4114,0348,000314157960867
 4215,8739,054388194766673
 4319,94310,000223755662
 44250848
 4510,000289
 4610,000289
『札幌市事務概況』各年による。

 ところで、これまでにとり上げた土地基盤整備事業の他に、土地改良区や農業協同組合が事業主体となって、道営や団体営による暗渠排水、客土、耕土改良、耕土培養などが以前の時期から継続されてきた。表59は、三十七年現在における、これら事業の進捗状況を示したものであり、これによれば、暗渠排水、客土、耕土改良、耕土培養の進捗率は各々、四五パーセント、四八パーセント、五八パーセント、五九パーセントであった。さらに、四十三年現在のデータをみると進捗率は各々、六二パーセント、七五パーセント、六四パーセント、七四パーセントまでアップした。(札幌市の農業昭44)。
表-59 土地改良事業の進捗状況(単位:町)
 暗渠排水客土耕土改良耕土培養
施行済
面積
要施行
面積
施行済
面積
要施行
面積
施行済
面積
要施行
面積
施行済
面積
要施行
面積
旧市内116210306962292420262
白石785601438594287571736523
北札幌6107821727521,3009071,510780
篠路7201,328922910745499731508
琴似581996863503419496689665
豊平940590280901,5001,200450365
手稲
3,7524,5072,7052,9184,3134,0654,5363,103
『札幌市の農業』(昭37)による。昭和37年4月現在の数値である。なお,旧市内には藻岩地区を,白石には厚別地区を,琴似には新琴似地区を含む。

 なお、これらの土地基盤整備事業の担い手であった土地改良区については、表60によって概要を示すにとどめたい。
表-60 土地改良区の概要
名称組合員数所在地設立年月解散年月備考
札 篠  土地改良区168札幌市東苗穂町昭28. 8. 7昭49.11. 7
屯田     〃240 〃 屯田町 26. 7. 1 55. 7.11篠路兵村土功組合を改組
篠路拓北   〃103 〃 篠路町篠路 26.11. 1 50.11. 4拓北土功組合を改組
札幌市第一  〃69 〃 厚別町小野幌 26. 9.20 47.11.25白石第一土功組合を改組
手稲村    〃札幌郡手稲町 29. 3. 8 46. 3. 1
『札幌市の農業』(昭37・38),『手稲町誌 下』(昭43),(社)農業土木学会『石狩川水系農業水利誌』(平7)による。

 第二に、近代化施設整備事業について。後述するように、園芸農業および畜産振興に関わる各種の事業を通じて、農業用機械の導入や集荷・貯蔵施設などの設置が図られ、また、そのような動向に触発されながら、札幌市の農業において近代化施設整備事業が進んだ。ここでは、農業用機械の普及に限ってとり上げることにする。
 札幌市においては、既に昭和二十年後半に動力耕うん機や農用トラクターの導入が始まった。いくつかの町村勢要覧によれば、たとえ台数は一ケタであるとはいえ、それらが使用されていたことを確認することが出来る(昭25琴似町勢要覧、昭30石狩支庁管内要覧、昭33豊平町勢要覧)。
 表61によれば、その後は昭和三十年代を通じて農耕馬時代から動力耕うん機時代へ、さらにはトラクター時代へと急速に移行したようにみえる。四十年には、動力噴霧機や農用トラックも普及が進んでいた。豊平町のデータでみても、三十年に二七台(動力耕うん機二五台、トラクター二台)であったものが、三十五年には二二六台(各々二一四台、一二台)にまで急増した(豊平町史補遺)。
表-61 主要な農業用機械の所有状況の推移
年度動力耕うん機・
農用トラクター
動力噴霧機動力散粉機農用トラック
戸数台数戸数台数戸数台数戸数台数
昭351,2181,248488151808
 372,303676378
 403,7413,8379669715225361,8291,867
 433,3704,406
 443,4064,751
 463,0124,849
 472,8524,489
 482,9174,519
 494,121
 502,8574,8331,1821,203506507
『札幌市の農業』各年,『札幌市統計書』各年による。

 そして、このように動力耕うん機やトラクター、さらに農用トラックが急速に普及する過程は、そのまま馬耕が急速に駆逐される過程でもあった。このことは以下に示す馬の飼養頭数の急速な減少にあらわれている(表79参照)。
昭和二十五年 五九六二頭
  三十年  五五四一頭
  三十五年 四一〇六頭
  四十年  一四二三頭