第九編 大都市への成長
第五章 高度成長期の産業発展
第一節 工業化の進展
三 工場立地と工業団地の形成
昭和三十年から三十九年までの一〇年間に新規に立地した従業員三〇人以上の工場は、札幌市五二、手稲町二〇、現札幌市域合わせて七七であった。札樽経済協議会は、社団法人北海道産業調査協会にこれらの新規立地工場の調査を委嘱し、これが『札樽工業開発に関する基礎資料(Ⅰ)』として四十年七月にまとめられた。現札幌市域(以下札幌と書く)に新規に立地した工場は、食料品一九、自動車整備八、紙・パルプ七、金属七、出版・印刷六、窯業六、その他一八であった。従業員規模別では、三〇人~四九人が一八、五〇人~九九人が二三、一〇〇人以上が二三である。出荷額規模別では一億円以上三億円未満が二九と最多で、次いで五〇〇〇万円以上一億円未満が一七となっている。必ずしも中小零細工場が多いわけではないことは注目に値する。なお、これらの工場は本社が札樽地区(札幌市、小樽市、江別市、手稲町、石狩町)にあるもの五〇、その他道内にあるもの三、道外にあるもの一六であった。道外企業が二〇・八パーセントを占めているのはこの時期の新しい動向を示している。
さて、札樽地区に立地した理由について、新規立地と移転立地に分けて質問されている(複数回答あり)。新規立地四六のうち「新たに販路拡張(創設)」をあげるものが最多で三五、次いで「現地生産を行うため」が一三、「新製品開発するため」が五となっている。一方、移転立地二八では「事業の拡張に伴い更に広い用地が必要」が最多で二四、次いで「新たに販路拡張」が五、「都市の発展に伴い転出」が四(ただし札幌市のみ)となっている。すなわち札幌あるいは札樽地区という大市場を求める傾向と、事業の拡張にともない広い用地を求める傾向が明らかになった。この調査報告書は、「札幌市の消費需要が大きな立地誘因となっている」と指摘している(札樽工業開発に関する基礎資料(Ⅰ))。 さて、昭和三十九年に通産省企業局工業立地指導室と北海道庁が工場適地調査を行っている。表7は、札幌における立地工場の一覧である。地区別に立地工場が判明する貴重な資料である。工場立地が多いのは琴似町発寒、琴似町八軒・二十四軒、丘珠町、白石町本通、白石町横町(現在の東札幌)、手稲町東(旧手稲東、現在の西区西町)、同宮沢(現在の西区宮の沢)あたりである。札幌の伝統的な工場地帯である苗穂地区や札幌中心部の条丁目施行地域は皆無であり、北は丘珠、東苗穂、雁来まで、東は厚別、平岡、清田まで、西は稲穂、金山まで郊外に向かって工場が広がっていることがわかる。
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