札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5上

第九編 大都市への成長

第四章 戦後改革と経済

第二節 戦後金融改革と札幌の金融

一 金融の再建整備と発展

 第二次世界大戦は昭和二十年(一九四五)八月十五日、太平洋戦争における日本の敗戦によってようやく終了したが、インフレーションが昻進するなど経済は混乱を極めた。金融面でも、預金の引き出し・貸出の急増から一転して金融機関の窓口に行列ができるほど預金者が殺到するなど大きく混乱し、当時の政策に翻弄(ほんろう)される姿が札幌市においても見られた。
 すなわち札幌市銀行協会加盟銀行の二十年十二月二十五日現在の預貸状況をみると、預金総額は六億八三五七万円で、これは同年九月十五日と比べて五一一五万円の「著減」、また貸出総額は五億六一四七万円で、これは同じく九月十五日と比べて一億一七三九万円の「著増」を示すものであった。そこで当時の新聞は、「逃げる銀行預金」という見出しで、「最近金融機関より融資された資金が思惑乃至買溜資金として流用されインフレ亢進に拍車をかけてゐる」として札幌市中銀行が貸出自粛を実行するに至ったことを伝えている(道新 昭21・1・10)。
 ところが二カ月も経たないうちに一転して預金者が殺到している様子を、新聞は「窓口混乱 旧円携え預入者殺到」と題して、次のように報道している。
旧券無効の日を明日に控えて札幌郵便局の窓口は預入を急ぐ行列で漸く賑はひ郵貯不振を嘆いた係員が厖大な札束勘定に汗だくとなってゐる、風呂敷に入れて背負って来たのもをれば、ここ数年日の目を見なかった明治時代の紙幣が沢山現はれ、さながらお札のオンパレード、今年に入って非常措置発表まで一日四万乃至六万円程度の預入額(本局のみ)が二十五日からなんと一躍三百十七万、二十七日三十二万三千七百円、二十八日は四十七万一千七百九十七円二十二銭、一日は俄然八十八万五千円とハネ上って巷に潜在した浮動購買力吸収の効果を挙げた。
(道新 昭21・3・2)

 もちろん、このような急転換はこの間に公布施行された「金融緊急措置令」、「日本銀行券預入令」などによるものであることは言うまでもないが、インフレ防止総合対策の一環とはいえ、預金封鎖、新円切り替えという政策に翻弄される国民の姿が垣間みえるのである。
 具体的な金融指標として、札幌市内の預貸状況と手形交換高についてみることにしよう。まず表8は、二十年から二十五年までの札幌銀行協会加盟銀行の預貸状況を示したものである。
表-8 札幌市内全国銀行預金状況
(単位:千万円)
預金貸付金預貸率(%)
昭20676191.0
 2114210070.4
 2236219353.3
 2389649955.7
 241,44895165.7
 251,8191,37075.3
『札幌市のいきおい 昭和28年版』より作成。
数値は,各年末ごととなっている。

 預貸率は、二十年の九一・〇パーセントから二十一年には七〇・四パーセントへと下がっているが、これは、上にみた事情を反映しているものということができよう。預貸率はそれ以降、二十二年の五三・三パーセントを底に増勢に転じ、二十五年の七五・三パーセントへと推移した。また、この間、預金は六億七〇〇〇万円から一八一億九〇〇〇万円へと二七・一倍、貸付金は六億一〇〇〇万円から一三七億円へと二二・五倍、それぞれ増加をみているが、昭和九~十一年平均を一とする指数で二十年の三・五が二十五年は二四六・八となる(本邦経済統計 昭41版)、すなわち約七〇倍に及ぶ急激なインフレを考慮に入れねばならないであろう。
 次にこの間の手形交換高を表9でみることにしよう。インフレの影響を受けて、金額では二十年の約二一億円から二十五年の一九一四億円へと激増(約九一倍)しているが、経済活動の実態をより正確に反映していると思われる枚数でみても、約二二万枚から八五万枚へと増勢の一途をたどった。これは、『新札幌市史』第四巻通史四でもみたように、すでに戦前において道内での経済的地位および金融的地位を不動のものにしていた札幌市の、戦後におけるさらなる発展をあとづけるものといえよう。
表-9 札幌手形交換高
交換高不渡り
枚数金額
(百万円)
1枚当り
金額(円)
金額
 (万円)
不渡り率
  (%)
昭20222,0262,0559,256290.014
 21440,4817,24316,443260.004
 22542,36826,38248,6421350.005
 23554,96873,152131,8133570.005
 24730,893141,524193,6321,1990.008
 25846,942191,357225,9391,6990.009
 261,091,134264,305242,2306980.003
 271,294,054345,375266,8948320.002
 281,572,017400,445254,73322,6240.056
 291,616,627419,567259,53215,6390.037
 301,673,096434,368259,6199,3700.022
『札幌市統計書』
札幌手形交換所における年中の数字。

 ではこのような金融経済状況の中で、明治以来の特殊金融機関として北海道の金融を担ってきた北海道拓殖銀行(拓銀)や太平洋戦争中の国策に基づき旧来の四無尽会社が合併して創設された北洋無尽株式会社あるいは新たに創設された政府系金融機関や他の銀行等はどうであったか、次にみることにしよう。