札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第5巻 通史5上

第九編 大都市への成長

第二章 札幌市の財政政策

第二節 高度経済成長期の財政政策

二 都市計画事業と市財政

 昭和四十年から、先の「十年計画」を一部修正した「道央新産業都市における札幌市建設六年計画」が発足する。同計画は、三十七年頃から始まる炭鉱離職者の市内への流入による急激な人口増、そして三十九年四月の新産業都市指定という二つの新情勢を前提として、軽工業、鉄鋼加工業、輸送機械工業等の企業集中を視野に入れつつ、札幌市がこれまで蓄積してきた都市機能を一層高度化するというものである。
 同計画の全容は表13のとおりである。総額三三五〇億円の総事業費のうち、市の実施する事業と経費は、(一)用地造成及び住宅建設二四七億円(市実施総事業費の二五パーセント)、(二)上下水道の整備二二五億円(二二パーセント)、(三)道路等輸送施設の整備二二〇億円(二二パーセント)、(四)文教施設整備九八億円(一〇パーセント)、(五)産業振興事業七四億円(七パーセント)、(六)環境衛生・医療及び社会福祉施設整備二三億円(二パーセント)、(七)公園及び観光施設整備二〇億円(二パーセント)、(八)市庁舎その他九八億円(一〇パーセント)で、合計一〇〇四億円である。
表-13 建設6年計画(昭和40年)の事業主体と市施行事業の財源  (単位:百万円,カッコ内は%)
 市施行事業同左事業財源国直轄事業道施行事業民間施行事業総事業費
一般財源国・道支出金地方債その他
(1)用地造成及び住宅建設24,710 (24.6)3,8645,2044,34011,3021,5301,100142,468169,808
(2)上下水道整備22,474 (22.4)4,6823,21314,0085718,60077050032,344
(3)道路等輸送施設整備22,038 (21.9)4,6556,5746,8783,93138,3459,42015,62585,428
(4)文教施設整備9,761 (9.7)3,4281,2284,1809258009782,65114,190
(5)産業振興事業7,365 (7.3)5861006576,0221463,72511,236
(6)環境衛生・医療・福祉施設整備2,278 (2.3)8243718282551,2983611,2565,193
(7)公園・観光施設整備1,986 (2.0)366928436851,0051243,8226,937
(8)市庁舎新築その他9,837 (9.8)4,8922,0008952,0509,837
100,449(100.0)23,29718,78232,62925,74151,57812,899170,047334,973
「道央新産業都市における札幌市建設6年計画」により作成。

 これらの割合を先の建設十年計画と比較すると、用地造成及び住宅の建設が一躍首位に躍り出ている他、上下水道の建設、道路整備を加えて三つの主要事業となり、新産業都市の建設に関連する事業が重視されていることがわかる。また産業振興費が大きく伸びていることも特徴の一つである。事業主体別の経費では、用地造成及び住宅建設事業ではとくに民間に期待する割合が大きく、道路等輸送事業では、国の直轄事業と民間事業の比率が高い。
 またその財源は、市の一般財源二三三億円(二三パーセント)、国・道支出金一八八億円(一九パーセント)、地方債三二六億円(三二パーセント)、その他二五七億円(二六パーセント)であった。そのうち一般財源は(一)の用地造成・住宅建設事業から(四)の文教施設整備までほぼ均等に割り当てられているが、国や道の支出金は道路事業と用地造成・住宅建設に手厚く配分されている。また市債は上下水道の建設に重点配分されていることがわかる。
 同計画の初年度にあたる四十年度予算は、総額二六二億四〇〇〇万円であったが、そのうち「六年計画」に対応する事業費は一〇三億円であった。「予算大綱」による当年度の重点施策は、周辺地区の宅地化に見合う都市建設と教育施設の整備、中小企業の振興、社会福祉施設の拡充などである。
 具体的事業では、土木費のうち道路橋梁費が、昨年度に続いて「道路緊急整備計画費」六億円を盛り込んだため一二億四〇〇〇万円と突出している。都市計画費も北一条街路事業費の三億三〇〇〇万円を加えて大きく伸びた。しかしこれだけの予算を投じても、当年度までの市道の舗装率七・一パーセントがわずか一パーセント上昇するにとどまった。
 教育費では、「スシ詰め」教室解消のための経費として、小学校四校の新築費(各校二四学級編成)三億三五〇〇万円、七四教室分の増改築費が予算化された。その他には市立体育館新設費二億三〇〇〇万円、児童公園一三カ所の新設費、児童会館新築費などが目立つ。また衛生、民生関係費では、下水道三五キロメートル延長、豊平峡ダムの着工に伴う浄水場の建設、保育所の増設、公営住宅の二九〇戸建設(市住宅課の調査では、この時点でも不足戸数は二万三〇〇〇戸にのぼっていた)など、新産業都市建設関係の予算も注目される。なかでも下水道の建設は当年度の重点事業であり、昨年度より五億二〇〇〇万円増の一二億六〇〇〇万円を投入して、平岸・豊平・宮の森地区に幹線延長を予定した。
 産業経済費では、不況・冷害対策としての農村振興、物価対策費と中小企業金融対策資金が増額された。後者は、七億四四〇〇万円を金融機関に預託して一五~一六億円の枠で運用するというものである(道新 昭40・1・16、1・17、2・5、3・7)。
 また当年度の予算編成では、国民健康保険税が三〇・五パーセント上昇して、国保に加入する一世帯あたりの税額は現行六七七二円が九一一八円に上昇すると試算されて注目された。これは国保条例によって、国保税と国からの補助金及び負担金でまかなわれることになっている医療費、ならびに国の負担金と市の一般会計で負担することになっている事務費のうち、医療費の七割給付に必要な不足分三〇〇〇万円と、事務費の一人あたりの不足分四〇〇円、一七万人分で六八〇〇万円、計約一億円を埋め合わせるために提案されたもので、いずれも予算議会で可決成立した(道新 昭40・3・10、3・29)。なお当年度の補正予算は、オリンピック招致費として四億二一〇〇万円、災害復旧費三億八〇〇〇万円、駐車場用地取得費六億九〇〇万円、職員給与の改定費二億五〇〇〇万円などが成立した(十一期小史)。
 「計画」第二年度にあたる四十一年度予算の新規事業は、地下鉄建設調査費、大谷地に流通センターを新設するための土地買収費六億円、交付公債一四億円の発行、ならびに旭山公園の新設であった。
 目的別歳出予算では、土木費が三三億五〇〇万円(対前年度四〇・六パーセント増―表10)にも達した。そのうち道路橋梁費で一四線を舗装し六橋を架橋することになったが、同年度で「緊急整備三カ年計画」は終了する。都市計画費は七億五〇〇〇万円が計上された。
 その他の経費としては、教育費二六億七〇〇〇万円(前年度比二五パーセント増)では、小学校三校、中学校一校の新設費がうち約半額の一三億六〇〇〇万円を占めた。また市立図書館の新設に二億一〇〇〇万円を投じた。産業経済費では、商工業と観光に力点が置かれ、商工振興費が一二億五〇〇〇万円となった。
 下水道事業費は一七億四六〇〇万円で、そのうち四四パーセントが終末処理場建設費であった。市はこの事業によって普及率を五〇パーセントにしたいとの意気込みを示した。その他、公園整備費や緑化推進費が大幅に伸びたのも同年度予算の特徴である。前者は旭山公園の新設費を含んで、総額で前年度の三倍の一億五四〇〇万円が予算化された。
 またこの年度から、「昭和四十年不況」のあおりを受けた財政難を乗り切るために、市は条例を改正して市職員の定員五二一四人を二パーセント、一〇四人削減して五〇〇〇万円の人件費を節約することになった。これによって一般会計における職員費は四十一年度以降二〇パーセントを切り、それ以後もこの水準を上回ることはなかった(表10、道新 昭41・2・4、3・1、3・5)。
 歳入では、年間五万人の人口増加によって市税で一二億円の増加(前年度の一八パーセント増)を見込んだほか、徴収を金融機関に委託し、徴税費を一四〇〇万円削減した。またアメリカ文化センターの土地売却によって財産収入が六億四〇〇〇万円に増加し(表7)、図書館新設費の一部に充当された。