第八編 転換期の札幌
第九章 大衆文化・モダニズム・文化統制
第四節 文化の諸相
三 出版・マスコミ
(一)出版、印刷
出版界の興隆の影には、印刷技術の発達があった。特に地の利を得ている札幌は「新しい技術や自家用の自動鋳造機を入れたりして、地方町村の郷土史などをはじめ、相当に手広く全道を手におさめてたくましい活躍」をしていた(北海道印刷のあゆみ)。開道五十年記念北海道博覧会や国産振興博覧会を契機に、郷土史の刊行が増加したことは前述した。印刷技術の発達は地元での印刷を可能にしたが、『北見郷土史話』(網走発行)、『釧路郷土史考』(釧路発行)等は札幌で印刷が行われている(北海道出版小史)。また、郷土史の他に記念絵葉書や写真帳の刊行も増加した。印刷業者は写真印刷や色刷り印刷の必要に迫られ、色刷輪転機など新しい印刷機械を導入していった。
工場数自体にはあまり変化は見られないが(表13)、新機械の導入による技術の向上、製本業者の増加(市史第三巻では二社)など、出版社の出現と相俟って出版界は確実に興隆していった。しかし、戦時下のあらゆる統制は印刷業界にも及んだ。昭和十六年十一月、日本印刷文化協会北海道支部が設立した。これはその後、十九年の企業整備により解散し、新たに北海道印刷業統制組合が生まれた。
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