札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第4巻 通史4

第八編 転換期の札幌

第七章 社会生活

第二節 社会政策の展開

二 苦悩する下層社会

 これまで主として民間の手に委ねられていた都市貧民救済の問題は、大正中頃から急速に行政の手に移ってきた。まず、大正九年八月に内務省に社会局が設立され、翌十年一月一日には北海道庁にも社会課が設けられた。当時の札幌区では、十年中に道庁社会課の指導を受けながら翌十一年四月一日、それまで庶務課で行ってきた社会事業を独立分離させ、社会係を新設した。それと同時に、貧民対策の最初の公的制度として、札幌をはじめ道内五市(函館、小樽、旭川、室蘭、釧路)にも保導委員制度(保導委員設置規程、大11・4・23訓令第29号)が施行され(町村は対象外)、道庁より保導委員(全道で一七六人、札幌市社会事業のおいたち―以下「おいたち」と略)がはじめて嘱託配置された。
 保導委員の職務は「保導委員執務細則」によれば、「貧困ニシテ生計ヲ営ムコト難キ者ヲ保護指導スルコト」「老衰、不具、廃疾者ハ疾病ノ為生業ニ堪ヘサル者ヲ救護スルコト」「児童保護戸籍整理并衛生及風紀ノ改善ニ努ムルコト」(札幌市公報 第26号)と規定され、要は保導委員が地区ごとに「細民調査」を行い、「要保護者」の実態を把握して報告することにあった。
 札幌区最初の保導委員は、六月九日二六人に嘱託状が発送された(北タイ 大11・6・10)。表26は、最初の保導委員嘱託者であるが、職業をみると、医師、小学校長、郵便局長、神職、僧侶、社会事業家等が選ばれたことがわかる。最初、保導委員の仕事は一般には理解が薄かったとみえ、十二年四月十日の『札幌市公報』で宣伝しているのがみられる(写真8)。それによれば、細民の救護と生活向上のみならず、生活全般にわたる相談業務の印象さえ与える。
表-26 札幌区最初の保導委員嘱託者
氏名職業氏名職業
堤敬次郎
笹川為平
山口初太郎
隅土次郎
長岡長次郎
田代庄九郎
奥田良平
大瀧林之助
大西正一
井時麒一郎
上原仙吉
向井次郎
有田正雄
洗濯業
医師
小学校長
会社員
郵便局
神職
医師
木材業
小学校長
郵便局
理髪師
仲立業
育児院主事
上杉友三郎
斎藤周嶺
久田儀兵衛
栗賀信衛
岡田忠著
上原 亮
小川次郎
小池九一
福島利雄
村井為吉
松宮石丈
岩城静致
大竹敬一郎
区書記
僧侶
小学校長
薬種種苗業
小学校長
農業
農業
報恩学院長
区嘱託
小学校長
郵便局
授産場主事
郵便局
『北タイ』(大11.6.10)より作成。


写真-8 保導委員設置宣伝(札幌市公報 第9号 大12.4.10)

 こうして、行政による都市細民をはじめとする貧民救済の問題は、行政が行うべき社会問題として直視され、公的救済システムが生まれた。なお「救護法」施行後、方面委員と改称される。