札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第4巻 通史4

第八編 転換期の札幌

第七章 社会生活

第二節 社会政策の展開

一 失業者の群れと失業対策

 第一次大戦後、日本国内の各都市において失業者が増加し、失業問題が深刻さを増してきた。札幌においても関東大震災のあった大正十二年(一九二三)の十二月、南二条東一丁目の札幌市立職業紹介所(大9・4・1開設、同12・3・9認可)には朝まだ暗いうちから失業者が押すな押すなと詰めかけた。震災のために各種事業が中止となって失業したもの、雪が降らないために除雪人夫の仕事がないもの、沿海州方面の出稼ぎや沖仲仕の仕事が打切りになったもの、土木・建設工事の中止によって失業したもの、美唄炭鉱や轟炭鉱の人員整理によって失業したもの、農村破産者、それに加えて冬場稼ぎをあてにして札幌に出てきた農村出身者たちであった(北タイ 大12・12・16)。しかし、十三年の年明けから除雪人夫や鉄道建設工事、治水工事など日雇労働の仕事の紹介があったため、四月の職業紹介所は閑散とした状態になったという(北タイ 大13・4・26)。さほどまだ札幌を含めて道内では失業問題は切迫してはいなかったのだろうか。
 それに比べ東京方面では震災復興を目当てに仕事を求めて上京するものが多く、しかも日雇等を含むいわゆる自由労働者中、失業状態にあるものが増大していた。このため内務省社会局長は、震災の影響と財界の不況とが重なって失業者の生活が窮迫しているので、漫然と地方から出稼ぎに上京するものたちへ見合わせるよう通牒を出して警告するのだった(北タイ 大14・2・5)。
 大正十四年十月一日、全国一斉に国勢調査が実施されたが、全国的に失業者の増加をみたことからはじめて失業統計が調査項目に加えられた。この調査の結果、札幌市および付近を含めた地域の有業調査人口二万八六一〇人に対し失業者は九四一人で、失業率は三・二九パーセントであった。この内訳を給料生活者、一般労働者、日雇労働者の三種でみてゆくと次のようであった。
 内訳    有業者人口   失業者   失業率(%)
給料生活者 一〇七三一人  四九一人  四・五八
一般労働者 一四七六二人  三一三人  二・一二
日雇労働者  三一一六人  一三七人  四・四〇
(内閣統計局 失業統計調査速報 大14)
 以上からもわかるように、札幌の場合、有業者に対する失業率でいうならば、給料生活者と日雇労働者の方が一般労働者よりも高い失業率ということがいえる。しかも有業者人口では給料生活者の占める割合が三七・五パーセントとかなり高いことが知られる。
 昭和に入ると、財界の不況により会社、工場等の事業縮小、操業短縮、従業員等解雇が進行した。このため、北海道庁社会課では、昭和四年九月以降道内六都市および支庁における失業の実態を推計調査したところ、四年九月に約一万人だった推計失業者は、七年に入ると約二万六〇〇〇人に近い増加をみた。その詳細は表18によってみることができる。この表は、昭和戦前期を通じてもっとも不況のいちじるしかった時代の失業状況を、数字で示したものとして貴重なものであるが、そのなかで注目すべき点をあげると次のとおりである。

表-18 昭和4年~7年代の全道失業の推計数表
月別給料生活者日傭労慟者その他の労働者
有業者
推定数
失業者
推定数
失業率有業者
推定数
失業者
推定数
失業率有業者
推定数
失業者
推定数
失業率有業者
推定数
失業者
推定数
失業率
4年 9月104,816人4,694人4.3%73,625人2,547人3.2%113,696人2,394人2.1%292,137人9,635人3.3%
10
11
12
106,059
105,896
109,683
4,847
5,125
5,281
4.4
4.6
4.6
75,242
78,837
74,984
3,006
4,214
6,136
3.8
5.1
7.6
107,941
104,754
100,783
2,575
3,314
3,811
2.3
3.1
3.4
289,242
289,487
285,450
10,428
12,653
15,228
3.5
4.2
5.1
月別調査人口失業者失業率要救済者調査人囗失業者失業率要救済者調査人口失業者失業率要救済者調査人口失業者失業率要救済者
5年 1月109,7925,2264.8311人80,0246,7218.41,168人104,0684,2574.1443人293,88416,2045.51,922人
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
108,705
107,771
106,820
107,195
107,288
107,344
101,571
102,803
100,617
100,256
100,703
5,015
4,858
3,594
3,257
3,285
3,416
3,440
3,290
3,372
3,547
3,557
4.6
4.5
3.3
3.0
3.1
3.2
3.4
3.2
3.4
3.5
3.5
222
196
114




54
49
62
71
81,123
81,419
79,560
81,669
81,008
81,711
83,553
81,854
83,007
82,005
79,403
5,570
5,363
4,674
3,529
2,581
2,666
2,988
3,248
3,539
4,952
5,989
6.9
6.5
5.8
4.2
3.2
3.3
3.6
4.0
4.3
6.0
11.3
773
714
592




366
371
1,119
2,251
104,113
105,653
111,930
112,094
111,496
110,215
118,827
117,506
114,174
114,832
117,219
3,952
3,786
3,213
2,558
2,231
2,772
3,245
3,067
2,893
3,823
5,594
3.8
3.5
2.8
2.3
2.0
2.5
2.7
2.6
2.0
3.3
4.8
362
379
282




431
409
775
1,182
293,941
294,843
298,309
300,958
299,731
299,270
303,931
302,162
297,798
297,093
297,325
14,537
14,007
11,481
9,344
8,097
8,854
9,673
9,605
9,804
12,322
18,140
4.9
4.7
3.8
3.1
2.7
3.1
3.1
3.2
3.3
4.1
6.1
1,357
1,287
988




851
829
1,956
3,504
6年 1月101,0103,6603.610678,34510,77513.83,238118,2226,5445.51,969297,57720,9797.05,332
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
101,324
101,083
102,030
102,849
103,008
102,743
102,510
102,280
102,331
102,404
102,361
3,819
3,773
4,441
4,029
3,903
3,721
3,837
4,066
4,157
4,328
4,500
3.8
3.7
4.4
3.9
3.8
3.6
3.7
3.9
4.1
4.2
4.4
146
146
138
125
163
195
202
218
221
251
296
80,468
79,972
79,602
77,646
78,545
83,582
84,461
83,314
84,675
86,626
93,447
10,949
10,896
10,084
8,228
7,213
7,284
6,160
6,469
7,879
10,032
17,385
13.6
13.6
12.7
10.6
9.2
8.7
7.3
7.8
9.3
11.6
18.8
3,583
3,781
3,307
3,145
3,162
3,619
2,268
2,684
3,087
3,493
6,814
117,928
116,977
130,370
126,065
116,770
114,116
113,808
113,274
117,187
117,758
119,258
6,977
6,604
6,874
6,081
5,025
6,335
5,677
6,178
7,077
8,629
9,661
5.8
6.5
5.3
4.8
4.3
5.6
5.0
5.5
6.0
7.3
8.1
2,351
2,574
2,071
1,654
1,277
2,647
2,252
2,356
2,889
3,274
3,748
299,715
298,032
312,002
306,560
298,323
300,441
300,779
298,868
304,195
306,788
314,066
21,754
22,363
21,399
18,338
16,141
17,340
15,674
16,713
19,131
22,989
31,546
7.2
7.5
6.9
6.0
5.4
5.8
5.2
5.6
6.3
7.5
10.1
6,080
6,483
5,516
4,927
4,602
6,461
4,722
5,260
6,197
7,019
10,858

月別給料生活者日傭労働者その他の労働者
7年1月3,899人896人4,795人15,926人3,197人19,126人6,855人2,742人11,597人28,683人6,835人35,518人
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
3,930
3,868
4,016
3,961
3,867
3,914
3,887
3,862
3,960
4,218
4,086
903
894
903
921
865
916
923
921
944
1,094
1,003
4,478
4,317
4,299
4,858
4,374
4,607
4,003
4,758
4,723
5,169
5,337
15,478
13,317
13,299
10,858
9,374
10,607
10,003
9,758
10,723
12,169
12,337
3,148
7,792
2,731
2,388
2,045
2,116
1,942
1,943
2,164
2,538
2,433
18,626
16,109
16,030
13,246
11,419
12,723
11,945
11,701
12,887
14,703
14,770
9,458
8,680
7,672
7,035
6,168
7,172
6,846
6,842
7,990
8,960
8,137
2,849
2,665
2,478
2,360
1,953
2,111
2,022
2,015
2,375
2,673
1,468
12,307
11,345
10,150
9,395
8,121
9,283
8,868
8,857
10,365
11,633
9,605
28,866
25,865
24,987
21,854
19,409
21,693
20,716
20,462
22,673
25,347
24,560
6,900
6,351
6,112
5,669
4,863
5,143
4,887
4,879
5,483
6,301
4,904
35,766
32,216
31,099
27,523
24,272
26,836
25,603
25,341
28,156
31,648
29,464
北海道労働部職業安定課『北海道職業行政史』(昭24)より作成。

 一つは、失業者推定数が、調査を始めた昭和四年九月の九六三五人に対して昭和七年二月には三万五七六六人と、三・七倍の増加をみたことである。内訳としては給料生活者が四八三三人、日雇労働者が一万八六二六人、その他の労働者が一万二三〇七人となっている。この三つの数字の対比のなかで、日雇労働者の失業が多いのは北海道の特色で、土木、建設といった各種土木事業従事者が多く、事業中止や縮小などによって労働市場に排出された労働者の多かったことを示すものといえる。
 二つは、失業者数に冬季と夏季でいちじるしい変動がみられることである。これも北海道の特色である。昭和五年一月から十二月までの一年間でみると、一月から四月までと十一月から十二月までとでは一万から約二万人の失業者数に対し、五月から十月までは一万人を下回っていることが知られる。そのことは『北海道概況』昭和七年版の社会問題の項の失業状況で、
尚本道特有の失業状況として留意を要するは労働者の冬季失業である(中略)輓近経済界の不況益々深刻を極めるに伴ひ事業の縮少、休止の結果親方、雇傭主の窮乏となり或は労銀所得の減少となり又労働者に於ける失業等に因り往年の如き例に依るを得ず、為に冬季労働者の休業状況は益々深刻を極め例年の夏季労働期に比し冬季の失業労働者は殆んど倍加の情勢を示して(後略)

といみじくも述べている。
 次に具体的に北海道庁社会課が公表した札幌市ほか各市及び支庁ごとの失業者推計数を『北海タイムス』から拾ってみると表19のごとくであった。この表によってみるに、札幌の場合、昭和四年十月段階で一〇六八人の失業者が七年一月には四六八〇人と四・三倍にも増加し、かつてない深刻なまでの失業者を抱えていたことが知られる。それとともに、道内六都市を比較すると、はじめ函館市が群を抜いていたが、六年一月以降は小樽市が札幌市を上回る失業者数を示し、七年一月段階では札幌市の一・五倍の七二三八人にも増加しているのがみられる。
表-19 昭和初期 道内各市および支庁の失業者推定数表 (北海道庁社会課調査)
月別札幌函館市小樽市旭川市釧路市室蘭市支庁
昭4.10.11,068人3,280人2,620人1,773人348人168人1,171人10,428人
6. 1.1
6. 5.1
6.12.1
7. 1.1
7. 2.1
7. 4.1
7. 7.1
3,557
3,314
4,130
4,680
4,630
4,600
4,440
1,400
1,450
1,215
1,275
1,275
1,205
2,880
3,790
1,751
6,392
7,238
7,181
6,145
6,281
2,035
3,030
3,828
4,671
4,143
4,195
2,021
1,617
755
1,015
1,377
1,262
1,300
1,148
710
738
978
968
768
998
900
8,630
7,853
14,764
15,309
16,497
12,656
9,166
20,979
18,891
32,322
35,518
35,756
31,099
26,836
『北タイ』(昭4年11.13, 6年1.22, 6.5, 12.20, 7年1 .23, 2 .22, 4.25, 7.22)より作成。数字は史料のまま。

 これら失業者の失業前の職業を調査したのが、昭和五年の国勢調査によった表20である。六都市・支庁でみてゆくと、札幌市の場合、大別としては工業がもっとも多く、三四・二〇パーセントで職工や腕に特殊技能をもつ職人たちが含まれている。次に公務自由業で、二八・〇一パーセントとなっている。これは官公庁の雇、事務員に加えて官公吏そのもの、教員から軍人、鉄道、通信、電車などの従業員等が含まれている。いうなれば札幌の場合の失業は、職工と公務自由業といった職業階層にもっとも強く現われたものとみられる。また小樽・函館の場合は交通業、すなわち港に関わる運輸業といった職業階層に強く現われたのではなかろうか。
表-20 昭和5年 道内各市および支庁職業別失業者数および比率
市・支庁農業水産業鉱業工業商業交通業公務自由業家事使用人その他総数
札幌
(比率)
21人3人3人‐人25人‐人378人14人83人8人88人4人307人14人14人4人173人7人1,092人54人
2.090.262.1834.207.948.0328.011.5715.70100.00
旭川市
(比率)
151331911272363642238527915
5.441.021.0231.299.8613.2722.450.6814.63100.00
小樽市
(比率)
151121024481002477413411212308121,32140
1.180.880.7318.527.4935.3410.651.6923.51100.00
函館市
(比率)
12213565244212463131162510
0.163.460.0021.2610.2438.7420.470.635.04100.00
室蘭市
(比率)
24648464135012154
0.911.830.0029.223.6521.0020.090.0023.29100.00
釧路市
(比率)
4262952615155143
2.801.404.2020.283.5018.1810.490.7038.46100.00
支庁
(比率)
6691532799504181,05143177154228507316081,010874,679372
16.275.7010.3321.663.808.5110.651.3521.72100.00

(比率)
7271583259548191,99266465271,339211,19267104151,6651138,354495
10.003.776.4123.265.5615.3714.231.3420.09100.00
『昭和5年国勢調査報告』第4巻 府県編1 北海道(内閣統計局 昭9)より作成。