札幌市中央図書館/新札幌市史デジタルアーカイブ

新札幌市史 第4巻 通史4

第八編 転換期の札幌

第一〇章 国家神道と宗教の展開

第二節 仏教と寺院

一 仏教界の推移

 大正七年十一月に第一次世界大戦は終結するが、戦後の動揺する社会に対する政策として、内務省では民力涵養運動を展開するようになる。道庁では八年八月十四日に「民力涵養に関する告諭」を出したが、これに呼応して仏教界では教化運動を推進するために北海道仏教聯合会を組織し、大正八年十月三十一日に全道の僧侶三五〇人を東本願寺別院に集めて発会式をあげた。「宣言書」では、「仏教的信念を皷吹して国民道徳の根を樹立し時代思潮を善導して風教の刷新に竭尽し、以て国家の進運に稗補する所あらんとす」と述べ(北タイ 大8・11・2)、国民教化が大きな目的とされていた。北海道仏教聯合会は仏教界における初の全道組織であったが、この後、目立った活動は行われないままに終息している。ただその後、大谷派や本願寺派の仏教青年会にて仏教民力涵養講演会が開催されたが、実際的に低調な取り組みに終わっている。
 あわせてこの時期に国家主義的な仏教運動も台頭してきている。たとえば山鼻町の日蓮正宗布教所の信徒により八年五月に創設された日蓮主義青年団、九月十四日に経王寺にて発会式が行われた大日蓮主義護国団などであり、後者は「宣言書」によると、
吾人日蓮主義者は建国の思想と聖祖の本懐とを旨として確固たる信念の上より鞏固にして統一ある思想を把持し、我国体の神秘を闡明にして建国の事実と理想とを周知せしめ国体観念を培養するに於て陋固と転併の両失を去り、以て中道円妙の思想を発達せしめ無限向上力の源泉、奮闘努力の超越的大精神を開顕し我国文明の精華を発揮し、異邦文化の取捨を誤る事なく、自守的信念を抱持し国家観念を旺盛ならしめ法華一乗の真意を正解し、東西文明の統一を念とし道法的世界統一の実現に資す。

としているが、前半部で「皇宗の稜威を戴き我建国の大理想を体し世界永遠の平和と安寧、幸福を齎すは之れ我大日本帝国の使命なり」と述べているように、大日本帝国の国体観念を日蓮主義によって止揚し思想動揺の危機克服を目的とする超国家主義的な仏教団体であった。
 大正十四年になると「作興詔書」の普及をめざして各宗派では、国民精神作興の講演会などをそろって開くようになるが、本願寺派では真宗自彊会札幌支部を設立して講習会を開催し、勤倹週間に合わせて講演会、路傍伝道を行い、昭和四年九月二十三日には民風作興大講演会を開催するなど、特に熱心な取り組みをみせていた。この時期に仏教は政府の主導もあって国体観念に添った教化団体としての役割・性格を強めていき、明治期に有していた啓蒙・修養主義を主体とした市民仏教的な性格を稀薄化させていくのである。